「ロングライド」の世界は楽しい
自転車の楽しみ方は様々ありますが、長距離を走行する「ロングライド」もその1つです。
自分の力で遠くへ行く感覚は、大きな達成感となります。また、道中の文化や自然の変化を、ひと筆書きの様に肌で感じられるのもロングライドの魅力でしょう。
私はそんなロングライドに魅せられ、家の近くから徐々に距離を伸ばしていきました。気が付けば自宅から全国各地まで走り、時には1日500km以上を走ったり、北海道一周2,400kmを8日で走ったり…と、数えきれないロングライドをしてきました。
そこまでの長距離は走らずとも、ロードバイクを購入した方には、100kmにチャレンジしたくなる方もきっといらっしゃるでしょう。
そんな「はじめて自転車で100km走る方」へ向けて、私の今までの経験を踏まえ、いくつかの基礎的なコツをご紹介します。準備編から実践編まで順を追ってご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
準備①走りやすいコースを設定しよう
まずは準備編として、コースの設定から。「100km」という距離は同じでも、どんな100kmを走るのかで、その難易度は大きく異なります。
最初の100kmにチャレンジするなら、なるべく走りやすいコース設定がおすすめですよ。
「獲得標高」から難易度をカクニン!
自転車用語の「獲得標高」とは、登った標高の合計のこと。例えば標高が100mの坂を5回登れば、獲得標高は500mとなります。1回のライドで距離を延ばすなら、獲得標高は少ない方(登りが少なく平坦な道)が楽です。
獲得標高をチェックするには、「RWGPS」というサイトがおすすめ。グーグルマップの地図上にルートを引くだけで、距離や獲得標高の計算をしてくれます。
あくまで目安ですが、おすすめは100kmのうち、獲得標高は500m前後のコース。ほぼ平坦ながら、多少の登りも含むコースレイアウトです。登りが多すぎて疲れることがなく、逆に平坦だけで集中力が切れたり身体が凝り固まったりすることもないため、初心者の方でも走りやすいでしょう。
休憩ポイントと輪行可能な駅をチェック!
初めて100kmを走るとなると、何度か休憩をはさむはず。その休憩をどこでするのか、おおよその目星をつけておくとよいでしょう。
休憩ポイントの間隔は、20km程度がおすすめです。次の休憩まで1時間半くらいで走れるはずですので、集中力が途切れにくくなります。
休憩ポイントとしておすすめなのは、コンビニなどの買い物と食事ができるスポットと、展望台などの景色の良いところ。
コンビニは食事からおやつ休憩などまで幅広く利用できますし、景色の良い場所は気分が晴れやかになるため、気持ちのリセットに持ってこいです。
また、もし走りきるのが困難になった場合のために、輪行できる駅があるかもチェックしておくと安心ですね。
ロングライドでは、体調の変化のほか、天候の悪化やメカトラブルなど、様々な問題が起こりえます。そんな時でも、電車で家に帰れるのは大きなメリットです。
交通量の多い道は走りにくいため道路の選定が難しいですが、自宅からの沿線沿いを走るという方法もありますよ。
▼▼輪行に関する記事はこちら▼▼
準備②必要な装備を考えよう
近所を走るだけでは必要なかった装備も、ロングライドでは必要となるかも知れません。ここでは、100kmを走るなら最低限持っておきたい装備を、簡単にご紹介していきます。
ウェアは気温の変化に対応できるように
ロングライドでは長時間走行するため、走行中の気温も当然変化します。朝出発したときは丁度よくても、昼間には暑くなり、夕方には汗が冷えて寒くなるかも知れません。
そんな気温の変化に対応できるよう、
・薄手のウィンドブレーカーやレインジャケット
・汗冷えを防ぐインナーウェア
を用意しておくのがおすすめです。
高機能で薄手のウェアを重ね着して、気温が変化しても快適に走り続けられる様にしておくのがポイントです。
どんなウェアがおすすめかについて、詳しくはこちらの記事でご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。
▼▼インナーウェアの記事はこちら▼▼
また気温の変化だけではなく、突然の雨など天候の変化にも対応したいですね。軽量なレインジャケットを1枚持っておくだけで、安心してライドに臨めるでしょう。
▼▼レインジャケットの記事はこちら▼▼
携帯工具でメカトラブルに備える
100kmを走るなら、途中でパンクなどのメカトラブルに遭遇するリスクも高くなります。最低限持っておきたい携帯工具は
・パンク修理キット
・予備のチューブ
・タイヤレバー
・携帯ポンプ or CO2ボンベ
・マルチツール(六角レンチなど)
・タイヤブート
などです。持ち運ぶだけでなく、きちんと使えるか出発前に試しておきましょう。いざという時に規格が適合しないことが判明したり、使い方が分からなかったりしては、本末転倒です。
▼▼パンク修理の記事はこちら▼▼
バッテリーと、現金を持っておこう
ロングライドでは、途中で道を調べたり、ログをとったりと、スマホのバッテリーを意外と消費します。また、帰りが遅くなり、途中でライトの充電が必要となるかも知れません。
途中でバッテリー切れとなっては、トラブルの際に助けを呼ぶこともできませんので、容量に余裕のあるモバイルバッテリーを持っておきましょう。
また、途中で自動販売機や個人商店などを利用するかも知れません。キャッシュレスが手軽ではありますが、現金があるとトラブルの際何かと重宝しますので、ちょっと多めの現金もお忘れなく。
実践①ペース配分に要注意!
では、いよいよ実践編。スタートしてから、いかにして100kmを完走するかのコツをご紹介していきます。
ロングライドで最も重要と言っても過言でもないのが、ペース配分です。序盤で疲れてしまっては最後まで走り切れませんし、ゆっくり過ぎても時間がかかり過ぎて逆に疲れてしまいます。
6~8時間で100kmを走り切るイメージ
初めて100kmを走る方なら、まずは6~8時間程度で走り切るイメージを持つと良いでしょう。このペースは、平坦を25km/h位で走り、休憩を何度か挟むことを想定しています。
もちろん様々な条件によって適切なペースは変わりますが、このくらいなら初心者の方にも無理が生じにくく、時間のかけ過ぎにもならないはずです。
走りだす前に、あらかじめ通過ポイントやゴールの時間を想定しておき、序盤の頑張りすぎやペースの乱れを抑えましょう。
100kmは長丁場ですので、「このペースを最後まで続けられるかな?」「こんなに時間をかけていたら、暗くなってしまうかも」といった様に、先々の状況を予想することが大切です。
道中にハプニングは付き物ですので、十分に余裕をもった計画を立て、落ち着いて距離を刻んでいきましょう。
「オーバーペース」には要注意!
初心者にありがちなミスが、序盤のオーバーペース。自分ではペースを抑えているつもりでも、後から振り返れば飛ばしすぎだった…ということも多いです。
長時間の走行は予想以上に疲労していきますので、「これなら、永遠に続けられるな」と思えるくらい、余裕を持ったスピードで走るのがコツ。
目安は、息が上がらず、会話したり歌ったりできるくらいのペースです。上り坂でも、苦しいと感じたら無理せず足をついて、写真を撮ったり景色を眺めたりして呼吸を整えましょう。
マイペースにのんびり進み続けるのが、長距離走破の秘訣です。
実践②「疲れないテクニック」を活用してみる
走行中のテクニックでも、疲労を抑えて100kmを楽に走る様々なコツがあります。ここでは、基礎的なものを3つご紹介しましょう。
変速を活用して負担を軽減!
自転車の変速機能を使いこなすのは、実は難しいこと。不慣れなビギナーの方は特に、無意識のうちに負担の大きいギアで走り続けていることもあります。
重すぎ・軽すぎのギアは脚の疲労に直結しますので、適切なギアを選び続けることが大切です。
ポイントは、小まめに・あらかじめ変速をする癖をつける事。
登りや向かい風ではギアを軽くし、下りや追い風ではギアを重く…と、周囲の環境に合わせてギアを変えていきます。特に登り坂などでは、脚が辛くなる前にギアを軽くしておくと無理がありません。
また、信号で止まる時、停車前にギアを軽くしておくのもおすすめです。その後の発進が楽になりますので、ぜひブレーキの際に2~3枚、ギアを軽くする事を意識してみましょう。
小さな段差や路面の凹凸を避けよう
路上には、小さな段差や穴といった凹凸があります。
その衝撃は、長距離を走るうえでの天敵です。全身が少しずつ疲労するだけでなく、手やお尻の痛みに繋がることも…。
普段は気にしない様な衝撃も、身体の負担にならないように逃がしてあげると、後半の身体の疲労度合いが軽減されます。
避けられるものは避け、避けられないものは「抜重:ハンドルやサドルの荷重を抜いて、衝撃を逃がすこと」をしましょう。はじめは少し難しいかも知れませんが、慣れれば長距離を楽に走るうえで強い味方となるはずです。
乗り方を変えて「痛み」を予防しよう
初めて100kmを走るとき、多くの方が悩むのが「痛み」です。体力に余裕があっても、痛みが原因でリタイヤしてしまう例も少なくありません。
痛みが発生しやすい場所は、お尻や手といった体重を支える場所、膝や足首などの関節、腰や首といった背骨周辺です。
自転車やウェアなど道具の面から改善することも出来ますが、走行中もその痛みに気を配っておくだけで、予防や軽減をすることも可能です。具体的には、
・ストレッチを多用する
・ハンドルの持つ位置を変える
・サドルの座る位置を変える
・ダンシング(立ちこぎ)を織り交ぜる
こと。100kmを走る中で、ストレッチをしたり乗車姿勢を変えたりすることで、身体の負担を分散し軽減するのです。
一度痛くなってしまうと、少なくともゴールまで痛みを引きずってしまいますので、痛みの兆候がないか気を配って走行しましょう。
実践③食事と休憩も忘れずに
100kmを走るとなると、途中で食事や休憩をとることになります。ついつい走ることに集中してしまいがちですが、長距離のチャレンジでは「走らない時間」も大切です。
「ハンガーノック」に気を付けよう
自転車に長時間乗ると、「ハンガーノック」を引き起こすことがあります。
ハンガーノックとは、極度の低血糖状態に陥ること。長距離・長時間の運動で、体内のエネルギーが枯渇してしまった際に起こりやすいとされます。
ハンガーノックになると、倦怠感や脱力感に襲われ、自転車に乗り続けるのが困難になってしまいます。重症化すると意識を失うこともあるため、侮れません。
ハンガーノックを予防する為には、十分なカロリーを接種しておく必要があります。
あくまで1つの目安ですが、100kmを走ると2,000kcalほどを消費します。身体がガス欠状態になる前に、おにぎりやお菓子など、糖分の多いものを積極的に食べましょう。
小まめに短い休憩をとろう
食事と合わせて、5~10分程度の短い休憩も小まめにとりましょう。
休憩のコツは、まだ疲労を感じていない序盤から取り入れる事。
疲れていないのに休憩するのは不思議な気がしますが、実はそれがポイント。疲れきってから休憩しても、体力は完全に回復しませんし、その後のライドがずっと苦しくなってしまいます。
「疲れたから休む」のではなく、「疲れないように休む」のが大切です。
実践④メンタル管理も大切!前向きに走ろう
100kmを走り切るには、体力だけでなくメンタルも重要です。最後に、メンタルの維持方法についてお話していきましょう。
どんなに体力がある人でも、心が折れてしまったら長距離は走れません。私自身も、体力はまだ限界でないのに、途中で走るのを辞めた経験は何度もあります。
100kmという長丁場では、きっと途中で苦しい場面に遭遇するはず。そんな時でも、前向きに自分を励まし、前に進み続けることが大切なのです。ここでは、メンタルを保つおすすめの方法2つをご紹介しましょう。
「小さな目標」を考えておく
「小さな目標」とは、例えば
・30km地点のカフェに行きたい
・50km地点のモニュメントで写真を撮りたい
・80km地点の展望台から景色が見たい
というものです。いきなり100kmのゴールを見ると途方もなく感じてしまいますので、「そこまでなら頑張れるかも」と思える小さな目標があると良いでしょう。
本当に苦しいときは、「次の信号までは休まず頑張ろう」というくらい、短い距離の目標を立てるのも、良いかもしれませんね。
「逃げ道」があると気が楽になる
最終手段としての逃げ道を用意しておけば、自分に言い訳せずに納得いくまで頑張ることができます。
逃げ道とは、例えば
・輪行の準備をしておく
・家族や友人に、万一の時に送迎をお願いしておく
といったもの。
もちろん、本当に何かトラブルがあったときも安心ですので、もしもの際の対策はしておきましょう。
やりたい気持ちを大切に、チャレンジしてみよう!
「初めての100km」を走る方向けに、ロングライドのコツを解説してみました。
ロングライドの良いところは、失敗しても迷惑が掛からず、安全に走る限り何度でも挑戦できることです。
100kmは一筋縄ではいかない距離でもありますが、興味のある方はその気持ちを大切に、気軽にチャレンジしてみましょう。きっと新たな発見と楽しみがあるはずです。