奈良のサイクリングロードの特徴
人口のおよそ8割以上が大和平野に集中している奈良。奈良における寺社仏閣の多くはこの大和平野に集中しています。
そんな奈良には、南北を貫くような形で3つのサイクリングロードが整備されています。うまく利用すれば奈良の文化財や、大和平野ののんびりとした雰囲気を楽しむことができるでしょう。それぞれの自転車道もさほど離れていないので、行きたい場所をもとに自分だけのコースを組み立てることも可能。ただし、どのサイクリングロードも比較的長く、一番長いものではおよそ30kmにも達します。そのため、コースのすべてを走る場合はスポーツバイクの利用が必須です。
全31ルートの自転車道「ならクル」
一方、奈良県では自転車による周遊観光を促すことを目的として、総距離約600kmもの長さを誇るサイクリングマップ「ならクル」を作成しています。このうち、大和平野内に引かれた17種類の幹線ルートは初心者向きで走りやすいのが特徴。補助幹線ルートと組み合わせれば、複数のルートをまたぎながら好きな観光名所をまわることもできます。
また、ならクルでは大和高原を中心に14種類の高原ルートも用意されています。中・上級者向けの高低差があるコースが多いものの、文化財だけではない奈良の自然豊かな魅力を楽しむことができます。
奈良のおすすめサイクリングロード4選
奈良自転車道
近鉄奈良駅から出発し、奈良市および大和郡山市を抜けて法隆寺へ向かう、全長約22kmのサイクリングロードです。文化財にあふれる古都奈良の雰囲気をもっとも満喫できるコースと言えるでしょう。
自転車道は町中を縫うようにして進んでいくと、ところどころに標識や案内図が設置されているので、そう迷うことはありません。ただし、歩道と一体化しているような場所も多いので、必ず歩行者優先で走るようにしましょう。
●平城宮跡
約8kmの地点では世界遺産にも登録されている平城宮跡があり、奈良自転車道はこの平城宮跡を一部貫くようにして続いています。平城宮跡は広大な公園で、敷地内にある朱雀門広場は平城宮を含めた奈良の歴史を紹介する施設となっており、レストランのほか、サイクルステーションも設置されています。
ゴールとなる法隆寺は1年を通じて多くの観光客でにぎわう古刹のひとつ。到着後は自転車を停めて、敷地内をゆっくり探索するのも良いでしょう。また、すぐ近くにある和カフェ「布穀薗」では4種類のランチが楽しめるほか、抹茶を使ったシフォンケーキを楽しめるのがポイント。夏にはかき氷も用意しているので、サイクリングでほてった体を、ここで涼んでから次の行動を決めるのもおすすめです。
●布穀薗
飛鳥葛城自転車道
JR関西本線大和小泉駅の近く、富雄川と県道9号が交差する小さな橋を起点として、明日香村の石舞台古墳まで続く全長約30kmのサイクリングロードです。前半は富雄川および葛城川沿いをのんびりと走り、途中、大和高田バイパスに沿って西へ向かいながら、だんだんと石舞台古墳のある森へ向かっていきます。
川沿いでは信号や自転車止めのように走行をさえぎるものがほとんどなく、今回ご紹介するなかではもっともサイクリングロードらしいコースです。その反面、道路を渡る際には車に気を付ける必要があります。また、往復すると60kmもの距離になるので、ときおり自転車道を離れてコンビニなどで補給しながら進むのが良いでしょう。
大和高田バイパス沿いでは、おもに歩道を進むことになります。歩道を走るときは必ず徐行し、歩行者優先で走るようにしましょう。また、道がやや複雑なところもあるので、できればスマートフォンなどにルートを入れておくのがおすすめです。
●明日香村の石舞台古墳
明日香村へ入るとそれまでの景色が一変し、木々にあふれた道を進んでいくこととなります。こんなところまで自転車道を続いているのかと不安になるかもしれませんが、臆せずにどんどん進んでいきましょう。ふと景色がひらけたその先に、石舞台古墳が姿を現します。国内でも最大級の石室を持つ古墳の姿に圧倒されてみてください。
石舞台古墳のすぐ近くにある「珈琲さんぽ」では、数量限定の海難鶏飯(ハイナンチキンライス)がおすすめです。長い距離のサイクリングのごほうびに、美味しいランチによるカロリー補給をぜひどうぞ。
●「珈琲さんぽ」の海難鶏飯
大和中央自転車道
近鉄橿原線ファミリー公園前駅のすぐ近くを流れる大和川沿いを起点として、橿原神宮前駅まで続く約17kmのサイクリングロードです。すぐに飛鳥川と合流し、そのまま川沿いをのんびりと走るコースになっています。コース中の方向転換も少なく、紹介するサイクリングコースでは一番走りやすいといえるでしょう。なお、最初に農地のど真ん中を結ぶ道を進んでいくので、バランスを崩して畑や田んぼに落ちないように注意してください。
●多坐弥志理都比古神社
ちょうど11kmの地点でサイクリングロードを少し東に外れると、多坐弥志理都比古神社(おおにますみしりつひこじんじゃ)と呼ばれる神社があります。神武天皇やその皇子のほか、『古事記』を編纂した太安万侶が祀られており、歴史好きには一見の価値があるでしょう。また、立派な造りの社殿が特徴的で、文化財マニアの人には隠れたスポットといえるかもしれません。
終点の橿原神宮は、皇族をはじめ多くの参拝者が訪れる神社のひとつです。とにかく広大である一方、境内への自転車の進入は禁止されていますので、注意しましょう。先に紹介した多坐弥志理都比古神社とあわせて、新しい時代の訪れとともに日本のはじまりを感じてみるのもおすすめです。
曽爾高原ルート(ならクルT-14)
多くの文化財が目を引く一方、高原や山地に景勝地が多いのも奈良の魅力。自転車で行けば他では味わえない充実感を得ることができます。そこで、自然を求める人にうってつけのルートを最後に紹介しましょう。
ならクルのひとつに、曽爾高原へと続くルートがあります。県道28号吉野室生寺針線の途中から曽爾村方面へ上っていく、全長約26kmのルートです。起点の最寄り駅は近鉄大阪線棒原駅、もしくは室生寺大野駅になります。起点まで辿り着くのもなかなか大変なルートなので、自信がない場合は最寄り駅までの輪行も検討しましょう。ルート上には補給ポイントがあまりなく、奥へ進むにつれて戻るのが大変になるため、必ず補給食を準備してください。
●御杖村付近
栂坂峠までは上り基調の道が続き、その後、御杖村との境界付近までゆるやかな下りをこなしたあと、曽爾高原までの約18kmをふたたびゆるやかに上っていきます。高原手前の坂は特に斜度がきつく、シーズンによっては車が道を塞いでいるので、危険を感じた場合は無理せずに自転車を押していきましょう。
慣れていないとアクセスが困難な場所ですが、一面のすすきが広がる高原地帯は圧巻のひと言。これまで上ってきた疲れも吹き飛びます。自転車と一緒に入ることができるので、愛車とともに達成感を写真におさめるのもおすすめです。
曽爾高原で景色を堪能したあとは、ルート近くにある「カフェねころん」を訪れてみてはどうでしょうか。まったりとした空気が流れる古民家風の造りとなっており、エスニックなそうめんや肉味噌玄米ご飯がいただけるなど、ランチスポットとしておすすめです。
名所が多いからこそ自転車での移動がおすすめ
観光地と自転車道の両方を楽しめるのは、奈良ならではの魅力といえるでしょう。奈良市内の中心部にまで自転車道がつながっているので、ストレスなく名刹をまわることができます。狭い範囲だけをまわるのであれば、手ぶらで行ってレンタルサイクルを借りるのもおすすめです。
もちろん、中・上級者にとっては奈良に広がる自然豊かな高原や山地、そしてヒルクライムコースとして名高い大台ヶ原の存在も見逃せないのではないでしょうか。ある程度の地域までは電車でアクセスすることもできるため、無理のない範囲で輪行を駆使しながら挑戦してみてください。