自転車の本場“イタリア”
イタリアといえば、PINARELLO(ピナレロ)やCINELLI(チネリ)などお洒落な自転車メーカーが多く、日本人でもイタリアブランドが大好きな人も多いのではないでしょうか。イタリアは、自転車メーカーが多くあるだけではなく、イタリア流の自転車の楽しみ方も様々です。
まずはイタリアに住んでいる人がどんな自転車に乗って、どんな楽しみ方をしているか、ご紹介していきましょう。
イタリア人はやっぱりイタリアブランド??
ではご当地イタリアでは、実際にイタリアンブランドに乗っているのか?と言うと、スイスやドイツのメーカーも見かけますが、圧倒的に多いのはやはり「イタリアンブランド」。
しかし、イタリアの自転車は価格が高いモデルも多く、乗っているのは30代などある程度の年齢以上の人。またスポーツにしても、カップルで楽しむことが多いお国柄なので、男性ばかりでなく女性も、同じブランドで揃えたりしているところも日本と違う点かなと思います。イタリアでは、日本に比べると、いわゆるデートスポットが少ないので、自転車でデートする人もいます。
また、若い人はイタリアの大衆向けのスポーツブランドの少しリーズナブルな自転車に乗ったり、アンティーク自転車に乗っている人もいます。アンティークというのは、例えばおじいちゃんや親戚が乗っていた“ビアンキ”が回ってきたなんて話を聞くことも。イタリアンメイドの自転車は、丈夫で長持ち。それをメンテナンスしたり、部品交換したりして、大事に使うわけです。
元々イタリア人は、外に出て日光にあたるのが大好きなので、その両方を兼ねたスポーツである自転車は、生活に浸透していると言えるかもしれません。
イタリアはマウンテンバイクが人気
イタリアでスポーツバイクを楽しむ人の割合は、ロードバイクが6割、マウンテンバイクが4割ぐらいでしょうか。ロードバイクはよく見ますが、意外とマウンテンバイクも多いです。
また、イタリアは山が多いので、夏の間はマウンテンバイクで駆け巡ったり、ダウンヒルファンも多く、かなりの急斜面を駆け下りる人も。日本で最近ブームのキャンプツーリングをする人もいますが、数はまだまだ多くないようです。
イタリアでのサイクリングの特徴
イタリア人は自転車愛好家が多いのですが、それには理由があるのかもしれません。
国内18,000kmにおよぶ自転車専用道路がある
イタリア国内には、18,000kmという広大な自転車専用道路があります。場所としては山岳部や、湖や川沿いや海沿いなどが風光明媚なところが多いのですが、有名観光スポットまで自転車専用道路が作られていることもあります。
イタリアは、ドイツやスイス、オーストリアなどからのツーリストも多く、そのような自転車先進国と呼ばれる国の人々を誘致する目的もあり、専用道路はさらに広がる傾向にあります。
また道路は公道と平行して作られた所もありますが、ほとんどは自転車と歩行者のみ専用道路。そのため、小さなお子さん連れでサイクリングを楽しむこともできますし、子供の頃から安全にサイクリングを楽しむ土壌ができていると言えますね。
人気のコースはサイクリストの聖地など
特に人気のサイクリングコースというと、世界遺産である「ドロミテの山麓」、ジーロ・ディタリアなどのレースの出発やゴール地点になったり、サイクリストの聖地として有名な「マドンナ・デル・ギザッロ教会周辺」、すべての道はローマに続くという有名な言葉でも知られている「ローマのアッピア街道周辺」などです。
ドロミテとギザッロ教会周辺は、登りがきついので中級向けですが、アッピア街道はアップダウンがないですし、遺跡も見られるということで特に人気のコースです。
日曜はお店が休みなのでサイクリングが定番
基本的にイタリアでは、日曜祭日はレストランや商店、美容院などお店は閉まっています。ミラノやローマといった大都市では、日祭日も開いているお店が増えてきましたが、それでも限られたお店のみです。日本では週末に買い物やレストランに行くという人も多いと思いますが、イタリアでは選択肢があまりないという不便な点も。
そのため天気が良い日曜なら、家族や友達とのサイクリングが定番になっている人も多いのです。このような事を考えてみると、イタリアは自転車好きが増える要素がたくさんあるのかなと思います。
楽しみ方①バラエティに富むコースを走る
イタリアでは、地の利を活かしたサイクリングが可能です。どういったものがあるかをご紹介します。
美しい風景や食事を堪能できる
イタリアは、美しい山々に湖、海など自然にも恵まれていますが、ひとつひとつの街も歴史があり、独特。見どころもいっぱいです。
また食事ですが、あまり時間をかけたくないサイクリストの定番というと、パニーノ。パニーノは、パンに生ハムやチーズ、野菜などを挟んだサンドウィッチのこと。ライドの後など、ちょっと塩気が利ているパニーノは最高です!
時間もあって、がっつり食べたいという場合は、レストランやトラットリアに行って、おすすめの料理を食べたりすることも。サイクリングロード周辺のお店にはサイクルラックが常設されていますし、場所によってはサイクリスト専用のセットメニューが用意されているところもあります。
イタリアのサイクリングは下調べも重要
イタリアには、セブンイレブンなどコンビニがありません。そのため、知らない場所にサイクリングに行く時は、しっかりとレストランやバールなど休憩や食事ができるところの下調べが重要なのです。
小さい村が続くような場所だと、レストランやバールがない、または閉まっているなんてこともよくあり、30〜40km走っても何にも食べられないというはめになることもあります。
電車や船を使ったサイクリングルートも面白い
イタリアのサイクリングは、電車や船なども使ったルートも多いです。日本でも電車などで輪行する場合、専用の輪行袋が必要ですが、イタリアでは、そういったルールもなく、そのままの状態で持ち込みができます。
またイタリアは都市部を除いてほとんどの電車は、先頭車両などに自転車用のフックがある自転車専用車がついていて、それに引っ掛けるだけです。船にも、自転車を積むことができますから、湖の反対側まで走って帰りは船でといったコースも。公共機関を手軽に使えるので、メリハリのあるコース作りが楽しめます。
パスポート持参で自転車で国境を越えるコースもあり?
イタリアは、フランス、スイス、オーストリアなどと地続き。筆者は、北イタリアに住んでいるので、スイスまでバスで行き、国境を通ってイタリアまで戻ってくるコースを走ったことがあります。風景が違う2つの国を走るルートは、美しいというだけでなく、国境で写真をとったりなど、国境がない日本ではできないことですから楽しみも2倍です。
楽しみ方②イベントやレースに参加
イタリアでは、自転車関係のイベントやレースも多く行われています。その中でも多いのが、ヴィンテージ自転車レースや試乗会です。ヴィンテージ自転車レースというと、トスカーナ地方の「L’Eroica(エロイカ)」というヴィンテージレースが有名。
エロイカはヴィンテージ自転車とレトロな服装が参加条件になっていて、未舗装路をひたすら走るというレースです。この他にも1970年とか、1950年など年代を指定して行うヴィンテージ自転車のイベントもよくあります。
自転車レースは、ミラノがあるロンバルディア州では年間1,200前後も開催されます。レースは子供用の10km程度の短いものから、300kmという長距離のレースまでいろいろ。
またジロ・ディタリーアなどでも耳にする、ジーロというのは一周、または周遊コースということで、気軽に参加できるものが多いので、友達同士で参加する人も多いです。
楽しみ方③お祭り騒ぎのレース観戦
イタリアというと、三大ルーツの1つであるジロ・ディタリアがあります。ジロ・ディタリアは、イタリア中を駆け巡るレースで、毎年5月に約3週間かけて行われます。
毎年コースが変わるので、自分が住んでいる地域を通るかどうかがまずドキドキポイントで、もし自分の住んでいる地域を通るならば、その日を心待ちにしながら各ステージを熱く見守るのです。
家族や友達とテレビを見て盛り上がるという人もいますが、やはり直接観戦しにいくのがジロ・ディタリアの醍醐味でしょう。
コースのほとんどは、観戦者と選手を遮るような、仕切りなどがないので、レース観戦の熱気を直に感じることができます。また観戦者の中には、目立つ仮装をして行く人や、選手の飲み終わった給水ボトルやサコッシュを拾うために、特別な容器を用意したりする人も。
またレースが始まる前には、レースを盛り上げる音楽とともにダンサーが通り、自転車レースというよりもまるでお祭りのような盛り上がりです。そういった盛り上がりを肌で感じるのも、レース観戦の見どころです。
▼▼ジロ・デ・イタリアの詳しい記事はこちら▼▼
イタリア観光ならシェアサイクルが便利!

イタリアでは、今シェアサイクルが人気です。シェアサイクルというのは、ステーションと呼ばれる駐輪場にて貸出や返却することができる自転車のこと。レンタルサイクルとの違いは、5分や10分といった短時間でも借りることができることと、アプリを使って借りるので、借りる時や返す時の手続きが簡単ということです。
シェアサイクルの会社によっても多少違うのですが、MoBikeなどは、ステーションはなく、一番近いシェアサイクルが置いてあるところでピックアップして、返却も好きな所で乗り捨てできるタイプもあります。下記の動画は、イタリアのではありませんが、Mobikeの使い方がわかりやすいので参考にどうぞ。
イタリアの観光で、電車を乗るほど遠くないけど、歩くには少し遠いという場所に行くのにも便利ですし、自転車から眺めるイタリアも歩きとは違った良さがあると思います。
日本にいる時に利用手続きをすませておけば、イタリア観光で自由時間がある時にすぐに使えて便利です。
一瞬一瞬を楽しむのがイタリア流
イタリアでは、楽しみ方にきまりはありません。ちょっと羽目を外しすぎかな?と思うこともしばしばありますが、それがイタリアの良さでもあります。
イタリアの普通の観光に飽きたら、もう一歩進めてサイクリングを取り入れてみるのも楽しいと思いますよ。