バイクパッキングって何!?
昨今、アウトドアを楽しむロードバイクやグラベルロードなどが、発売されるようになり、良く耳にする「バイクパッキング」という言葉。ですが、具体的に「バイクパッキング」は何をすることなの? と思う人も多いのではないでしょうか。
いきなりですが、結論からお伝えしましょう。バイクパッキングは、自由な自転車旅のカタチの1つということを。
バッグの取り付け方のスタイル
従来のツーリングなどと呼ばれる荷物を積んだロードバイクなどの旅などでは、リアキャリアにパニアバッグと呼ばれるバッグを取り付けるのが一般的なスタイルでした。このパニアバッグを前輪にも取り付ければ、かなりの積載量になるため、どこへでも何でも荷物を詰めるのが大きな特長です。
しかし、パニアバッグの場合、車幅が広がり左右に振られることや、走行性能が落ちてしまう点が、デメリットでした。対して、バイクに直接バッグを取り付ける積載方式を一般的にバイクパッキングと呼びます。
フレームに直接取り付けるサドルバッグやフレームバッグであれば、走行性能が維持できるので、長距離ライドも快適になります。さらに荷物が自転車の中心軸に集まっているため、未舗装路でも揺れを抑えられ、バイクコントロールしやすいというメリットも。
積載量はパニアバッグより落ちるものの、昨今ではUL(ウルトラライト)ギアも増えているため、組み合わせ次第でスマートなキャンプツーリングも可能です。
諸説ありますが、ここでは……
『バイクパッキング=自転車に直接取り付けるバッグを駆使した積載方法』
のように定義したいと思います。
パニアバッグを使ったスタイルとの違い
とはいえ、大容量のパニアスタイルもスマートのバイクパッキングもそれぞれ魅力で溢れているのもまた事実。自転車を使った旅人の先人たちは、どのようにスタイルを選んでいるのでしょうか?
世界中でコーヒーを振る舞いながら旅を続ける自転車冒険家の西川昌徳さん曰く、
●パニアスタイル:好きなもの・やりたいことを全部詰め込んだ豊かな旅。
●バイクパッキング:限られた積載量の中で何を持っていき、何を置いていくか頭を使うストイックな旅。
というようにおっしゃっています。
他にも、バイクパッキング関連の書籍やエッセイ、雑誌を読むと、旅人の数だけ定義があることがわかります。
パニアスタイル、バイクパッキングどちらも個性があり、「バイクパッキングの方が新しいから良い」という考え方ではありません。
ちなみに筆者は、
●パニアスタイル:出先で凝った料理を作りたいとき。頭を使うのが面倒くさくなったとき(適当なパッキングでも全部詰めるため)。
●バイクパッキング:夏場。最低限寝られれば良いとき。
と、いかにも現実主義的な考え方です。
バイクパッキングに合う自転車
バイクパッキングに「この自転車であるべき!」という定義はありません。自転車にバッグを直接取り付けるため、どんな車種であってもバイクパッキングをするのは可能です。旅のスタイルや目的によって、ぴったりの自転車を選びましょう。
ロードバイクでファストライド
日本のサイクルシーンで主流のロードバイク。多くのロードバイクにはダボ穴(キャリアを取り付けるための穴)が無く、長距離のツーリングを諦めていた方も多いことでしょう。
しかしバイクパッキングのサドルバッグやフレームバッグなら、泊まりでのツーリングも可能。加えて他のスポーツバイクと比べて走行性能はピカイチなので、長距離を短時間で走りきるファストライドも楽しめます。
海外では主流のMTB
80年代に日本でも大流行したマウンテンバイクですが、海外でのバイクパッキングでは現在でも主流だといいます。その名の通り未舗装路をメインで攻めたいときに最適な自転車で、旅程の半分以上が未舗装路の場合に選択するとより快適でしょう。
▼▼マウンテンバイクの詳しい記事はこちら▼▼
グイグイ来てるぞ、グラベルロード
2018年から2019年にかけて、日本のサイクリングシーンで盛り上がりを見せているのが、グラベルロードバイクという車種です。
グラベル(砂利)という名前の通り、未舗装路でも走ることができるドロップハンドルの自転車で、各タイプによって特徴は異なりますが共通するのが、
・オフロードに適した幅広いハの字のドロップハンドル
・走行安定性を重視したフレーム設計
・ディスクブレーキ
・700Cホイールで、32~42mmの太目のタイヤ
・多くのダボ穴があり、荷物積載の拡張性が高い
等が挙げられます。舗装路も未舗装路も安定して走行でき、スマートに大容量の荷物が積載できることが最大の魅力でしょう。世界的には主流となりつつある車種で、今後日本でも拡がりそうです。
次世代の遊び方eバイクパッキング!
海外で、かなりメジャーとなってきているeバイク(電動スポーツバイク)。荷物の重さや坂道であっても、電動アシストで楽々進め、年齢差、体力差や男性・女性関係なく、誰とでも気兼ねなくツーリングできます。
今後eバイクを用いた遊び方は国内でも広がり、大きな盛り上がりを見せていきそうです。
それでは、バイクパッキングの具体的な装備方法などをご紹介していきます。
バイクパッキングの基本装備
メインとなるバッグやウェアの基礎的な選び方や考え方をみていきましょう。
バッグ類の選び方と注意点
バイクパッキングの要となるのが各種のバックです。シートポストとサドルの裏側に固定するサドルバッグ、トップチューブやハンドルに設置するフレームバッグ、フロントフォークにマウントを付けて設置するフロントパニアなど種類は多岐にわたります。
<サドルバッグ>
バイクパッキングを象徴するアイテム「サドルバッグ」。15リットル程度の大容量サイズもあり、頼もしいバッグですが、重量物を入れてしまうとバッグ本体がずり落ち、タイヤと干渉してしまうためパッキングにはコツが必要です。またサドルバッグは外国仕様のサイズも多く、小さなフレームを使用する女性や小柄な体型のサイクリストは購入時に注意が必要です。
ちなみに筆者も、フレームサイズ48のロードバイク用に、某メーカーの15リットルタイプのサドルバッグを取り付けたところ、バッグ底面ががっつりタイヤと干渉してしまいました。同じ容量であってもメーカーによってサイズ感や作りが異なるため、自身のフレームに合うサドルバッグを選ぶようにしましょう。
<フレームバッグ>
ハンドルバッグやトップチューブにぶら下げるタイプのバッグなど、フレームバッグはそれぞれの用途に合わせて揃えましょう。正解はなく、それぞれ旅のスタイルや持って行くものに合わせて、好みのものを収集する、という楽しみもあります。
<フロントパニア>
多くのグラベルバイクにはフロントフォークにダボ穴が付いています。そこにマウントを付けて、フロントパニアバッグを装着することも可能です。このバッグは前加重となり、取り出しづらいバッグのため、できるだけ軽量かつ使用頻度の低いものを入れるようにしましょう。
テントやシュラフ、衣類などの収納に適しているため、特にキャンプツーリングではフロントパニアが大活躍します。
シューズ
ロードバイクでのツーリングとは異なり、歩行シーンも多く想定されるためシューズも一工夫必要です。コースにもよりますが、場合によってはビンディングがついていないトレッキングシューズでも良く、夏場で川辺にも降りるようならば水陸両用のシューズでも良いでしょう。
もしビンディングタイプを使いたい場合、シマノのSPDのように歩きやすさも兼ね備えたシューズがおすすめです。またライド用と歩行用でシューズを2種類持つユーザーもおり、方法は人それぞれです。
ウェア
衣類にも特に専用ウェアがないため、各個人で工夫して着用するスタイルが多いようです。主流なのが登山やハイキングなど、アウトドアでよく着られている吸汗速乾タイプのウェアと、ツーリング向けのレーシングパンツです。自転車の装備と旅のスタイル、自身の好みによって快適なスタイルを探してみましょう。
ギアは何を持っていく?
毎回頭を悩ませながらも、楽しみでしかたないのがバイクパッキングで持って行くギアです。火器はガス? それとも固形燃料? アルコールランプ? キャンプスタイルはテント? ハンモック? タープ?……などなど、一度考えたらやめられないギア選び。
遊び方はまさに自由です。ギアを事前に選ぶの楽しみの1つ。とっておきの旅へ出かけましょう。
お湯さえ沸けば、もうバイクパッキング?
「バイクパッキング=キャンプ」と考えられがちですが、そんなことありません。人によって捉え方は異なりますが、多くのバイクパッカーが唱えるのが「お湯さえ沸かせられれば、立派なバイクパッキング」ということ。
ガスストーブや固形燃料といった火器とコッヘルさえあれば、簡単にお湯を沸かすことができます。キャンプをしなくても、いつものサイクリングロードでコーヒーを淹れたり、インスタントラーメンを食べてみたり。バイクパッキングの始めの一歩は、”温かいお湯”が握っているといえるでしょう。
キャンプするなら寝具を凝るべし
「気軽なバイクパッキングを続けていたら、いつの間にかキャンプをしたくなってしまった」うんうん、人間そんなものです。より遠くへ、知らない場所で寝泊まりをするというロマンには勝てません。
もしキャンプをするならば、しっかりとお金をかけて装備したいのが、寝具一式です。シュラフとマットはクオリティが顕著に現れるため、快適な宿泊に欠かせません。しかし、ウルトラライトに宿泊したいのがバイクパッキング。テントを張らない人も多く、自転車を支柱にタープを張ったり、木々の間にハンモックを張り寝泊まりする人も多くいます。ちなみに筆者もハンモック泊が好きなひとり。夏場であればハンモックを張り、星空を眺めながらそのまま就寝……なんて素敵なこともできてしまうんですよ。
▼▼ハンモックのおすすめ記事はこちら▼▼
パイクパッキングの達人の話を聞け!おすすめ書籍4選
バイクパッキングを始めて、さっそく未開の地へ旅に出るのなかなかハードルが高いものです。そんなときにおすすめしたいのが、達人の知恵を借りること。ショップやブログはもちろん、バイクパッキングを愛する旅人が執筆した本も、旅心をくすぐってくれますよ。
筆者のおすすめはこの4冊です。
【コラム】ウルトラライトはバッグパッカーの文化?
バイクパッキングのギアの選び方に欠かせないのが、ウルトラライト(UL)という考え方。ULが、バイクパッキングを押し進めてきたと言っても良いでしょう。
ULはもともとアメリカのバックパッカーから生まれたと言われる、いかに軽く少ない荷物で登山などを楽しむスタイル。そのためULギアは、軽量化とコンパクト化の進化を遂げてきました。
一方バイクパッキングも、積載できる荷物の量は限られるので、持ち運ぶギアの軽量化・コンパクト化が必要です。ULのギアの進化と共に、バイクパッキングがより身近なものになってきました。それ以上に「何を持って行って、何を置いていくか」という基本的な理念が同じだった、というのも両者を惹きつける理由なのかもしれませんね。
さあ行こう、まだ見ぬ旅へ
朝目が覚めて、天気が良かった。だからコーヒーを持って自転車に乗って出かけた。そんな何気ない日常をいつの間にか旅に変えているのが、バイクパッキングのいなせなところ。
日常と非日常をシームレス繋ぐバイクパッキングは、自由な旅への翼です。バイクやギア、装備選びから旅は始まっています。
——ようこそ、バイクパッキングの世界へ。
<参考文献>
●バイクパッキングBOOK軽量バッグシステムが創る新しい自転車旅 北澤肯 山と渓谷社
●ウルトラライトハイキング 土屋智哉 山と渓谷社
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