パワーメーターとは
レースやトレーニングのマストアイテムともいえるのが「パワーメーター」。最近は値段も落ち着いてきて、購入を考えている方も多いでしょう。そんなパワーメーターについて、詳しく説明していきます。
そもそも「パワー」ってなんだ?
「パワー」とは、自転車を走らせるための動力のことで、「ペダルを踏む力」「ペダルを回す速さ」によって決まります。
大きなパワーなら、速く走ったり、ガンガン上ったりできます。逆にゆっくり走ったり下り坂なら小さなパワーで進むことができます。
一般的に自転車ではパワーは『ワット(W)』という単位で表します。ヘアドライヤーなどの家電で「1000W」と表示されているものと同じです。車で使われる「馬力(PS)」でいうと1馬力=735ワット。これは一般的な男性ライダーが、数秒間出すことができるパワーです。
ライダーが自転車を漕ぐときの出力(パワー)を計測
パワーメーターは、ライダーが自転車を漕ぐときの出力(パワー)を計測するもの。自分のパフォーマンスを客観的に見ることができるのが特徴です。
スピードメーターの場合、「平均30km/hで走ったよ」といっても、下りか上りか、向かい風か追い風か、はたまた信号ストップが多かったのか、で変わってきますよね。パワーメーターなら「平均200Wで走ったよ」といえば走るコースや状況に関係なく200Wのパフォーマンスなんです。
パワーメーターを使うメリット
パワーメーターなら自分のパフォーマンスを客観的に把握することで、効果的にトレーニングを行うことができます。
レースやロングライド、ヒルクライムでは、ペーシング(ペース配分)に使うことで、より速く、より楽に走れることも。またZwift(ズイフト)などのバーチャルライドでも、仮想パワー(ZPOWER)よりもパワーメーターを使ったほうが、よりリアルなバーチャルライドを楽しめます。
普段のアクティビティでパワーを計測できるのは自転車だけ
特殊な装置や実験室を使わないで、普通にアクティビティをやりながらパワーを計測できるのは自転車だけ。ランニングを含む陸上競技や、水泳、スケートなど他のスポーツでも、パワーを計測できるスポーツはありません。すごいと思いませんか?
ペダリングのクセがわかる機種も
パワーメーターの中には、左右の脚のパワーバランスや、ペダリングのトルク分布など、ペダリングのクセがわかる機種もあります。これらのデータをうまく活かせば、ペダリングスキルを向上させ、より効率的なペダリングを身につけることも可能ですよ。
パワーメーターの注意点は?
パワーメーターを導入する際は、いくつか注意しておきたい点があります。
購入と組みつけは専門のショップで
パワーメーターは精密機器なので、正しく取り付ける必要があります。間違った取り付けは、パワーを正しく測れなかったり、最悪パワーメーターを壊してしまうことも。
それなりに高価なものなので、修理や保証のアフターサービスも大事です。パワーメーターを取り扱っている専門ショップでの購入&組みつけが安心です。
サイコンが必要
パワーメーターには、計測したパワーを表示してログを採るためのサイコンが必要。
パワーメーターとセットになっているサイコンなら特に注意する点はありませんが、今使っているサイコンを使う場合や、別にサイコンを購入する場合は、通信方式や表示できる内容に差があることもあるので、しっかりと対応を確認しておきましょう。
充電式か電池式か
パワーメーターの電源には、充電式のものと電池式のものがあります。
充電式は電池を交換する必要がないので便利ですが、ライド中にバッテリーが切れたら万事休す。電池式なら交換すればいいのですが、交換は結構細かいネジを外したりするのでちょっと面倒かも。
パワーメーターの種類
パワーメーターには取り付け場所によって、種類があります。タイプ別にそれぞれの特徴をご説明します。
クランク型
クランクアームに取り付けたセンサーで計測するタイプのパワーメーターで、最もポピュラーなタイプといえるでしょう。
左右両側で測定するタイプと片側(大抵は左側)で測定するタイプがあり、価格も比較的リーズナブル。バイクによっては、センサー部分がフレームと干渉してしまい、取り付けできないこともあるので、導入前にしっかり確認しましょう。
ペダル型
ペダルの軸にセンサーが組み込まれていて、そこにかかる力を計測するタイプのパワーメーター。ペダル軸への力のかかり方が複雑なため、正確にパワーを検出するのが難しかったのですが、技術開発により安定した計測ができるようになったものです。
左右それぞれのパワーが計測できるほか、ペダリングのどの部分に力がかかっているかなどペダリングの「くせ」を解析する機能が備わったものもあります。一方、転倒したときに衝撃を受けやすく壊れることもあるため、取り扱いには注意が必要です。
スパイダー型
クランク軸とチェーンリングをつなぐ部分(スパイダ―といいます)にかかる力を計測するタイプのパワーメーターがスパイダー型です。
スパイダー型のメリットは、かかる力の方向がペダリングに影響されにくく、安定したパワー測定ができること。一方で比較的価格が高く、大抵の場合クランクアームごと交換する必要があるため、さらに高くつくことが難点です。
ハブ型
最初に実用化されたパワーメーターがハブ型。リヤホイールのハブ内部で、スプロケット軸とフランジ(スポークを接続する部分)の間にかかる力を計測することでパワーを測定する方式です。
現在でも最も精度の高い計測方式と言われていて、他のタイプのパワーメーターの精度を評価するときに、このハブ型を基準とすることもあります。ホイールごと交換すれば、複数のバイクでパワー計測ができるのもメリット。
ポッド型・他
ホイールのエアバルブや、ハンドルバーに取り付ける、いわゆるポッド型と呼ばれるタイプは、力を直接計測するタイプではなく、精度と再現性に大きな問題があります。なにやらパワー(らしきもの)が表示されてうれしい、という程度のものなので、やめておいたほうがいいでしょう。
他にもセンサーを自分でクランクに張り付けるタイプもありますが、貼り付け作業が超絶むずかしいので、おすすめしません。
おすすめパワーメーター5選
それではおすすめのパワーメータを5つご紹介しましょう。
パワータップ パワータップ G3
精度・信頼性抜群のハブ型パワーメーター
ハブ型パワーメーターの元祖といえばパワータップ。精度、信頼性とも抜群で、ガチでパワートレーニングに取り組みたいなら、おすすめのパワーメーターです。ホイールごと交換すれば複数のバイクで使えるのもメリット。ハブ単体と、ホイール組み込み済みでの販売があります。
シマノ DURA-ACE FC-R9200-P
コンポメーカーのクランク型パワーメーター
シマノもクランク型パワーメーターをリリースしています。コンポメーカーであるメリットを活かし、複雑な力のかかるクランクに片側12個のセンサーを配置し、正確にパワーを計測。ペダリングスキル向上につながるペダリングフォースベクトル(ペダルを踏む力と方向)も測定できます。またULTEGRAバージョンのFC-R8100-Pもあります。
ROTOR ROTOR INSPIDER
360°のペダリングトルク分布を測定できるスパイダー型パワーメーター
楕円チェーンリングQ-Ringsで有名なROTORがリリースする、スパイダー型パワーメーターのINSPIDER。パワー計測のほか、360°のペダリングトルク分布を測定することができます。対応するクランクがROTOR製となるため、導入の場合はクランクごと交換することになりますが、MTBやグラベルロード用ROTORクランクにも対応しているので、さまざまなジャンルで使いまわすことができます。
Stages Stages Power
コスパの高いクランク型パワーメーター
一般的にパワーメーターの精度は気温の影響を受けやすいのですが、StagesのパワーメーターはATCという気温補正機能を内蔵しているため、ヒルクライムなどでも安定したパワー測定が可能となっています。基本は左クランクのみでの測定ですが、左右測定のモデルもあります。対応クランクも豊富でなのがうれしいですね。
Garmin Garmin Rally RS200
多彩なペダリング解析機能を備えるペダル型パワーメーター
パワー計測だけでなく多彩なペダリング解析機能を備えるペダル型パワーメーターがGarmin Rally RS200です。左右両側のペダルにセンサーを内蔵し、通常のペダル交換の手順で簡単に取り付け可能。センサー部分の厚みのため、Qファクター(左右のペダルの間隔)が少し広がってしまうので注意しましょう。対応クリートはシマノSPD-SLとなっています。
パワーメーターの使い方
パワーメーターをつければ、自分がどれくらいのパワーで走っているかがわかるようになります。しかしパワーを見るだけでは、せっかくのパワーメーターがもったいない。どのようにパワーメーターを使えばいいのか、ご説明しましょう。
トレーニング、パフォーマンス向上
パワーメーターを使った数値ベースの科学的トレーニングがパワートレーニング。パワーメーターなら自分のパフォーマンスを正確に把握できるので、トレーニング計画を作成して効率的にパフォーマンス向上を図ることができます。ZwiftやSTRAVAにもトレーニングプログラムがあるので、試してみるのもいいでしょう。パワートレーニングについて本格的に勉強してみようという方はこちらの本がおすすめです。
OVERLANDER パワー・トレーニング・バイブル
パワー・トレーニングの世界的バイブルであるTRAINING AND RACING WITH A Power Meter 2ND EDITIONの日本語版
パワー・メーターを活用して自分の実力のレベルを確認する方法、適正負荷での練習方法、ピーク調整方法など、実用的な知識が満載です。「本気で速くなりたい!」と思っているロードレーサー・MTB選手・シクロクロス選手・トラック競技選手・トライアスリートにとって必読の書
レース、ヒルクライムでパワーマネジメント
レースやヒルクライムでは、自分のペースを保つためにパワーマネジメントが非常に有効です。ロードレースの場合、集団や周りのペースに合わせる必要もあるため、パワーをコントロールする場面ばかりではありませんが、ここ一番の状況では、限界パワーを見極めながらアタックすることが重要。ヒルクライムなら一定ペースを維持するため、パワーメーターをにらみながらのクライミングが有効でしょう。
また、レース後にパワーデータを振り返ることで、「あそこでもうちょっと頑張っていれば・・」と反省したり、今後のトレーニングの方針を考えることもできますよ。
エンジョイライドでもペーシングでらくらく
トレーニングやレースなどのガチ勢だけじゃなく、エンジョイライドでもパワーメーターを使ったペーシングが効果的。
例えば、「25km/hで走ろう」だと、上りか下りかで同じ25km/hでも疲れ方が全然違いますよね。でもパワーメーターを使って、「150Wで走ろう」なら身体にかかる負荷は一定なので、より長く、楽に走ることができます。
Zwiftにも
Zwiftなどのバーチャルサイクリングも、パワーメーターに対応しています。スマートトレーナーならパワーメーターを内蔵していますが、実際のライドでパワーを測ることができません。パワーメーターならバーチャルでもリアルでもパワーを測ることができますよ。
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