走りが変わるマウンテンバイクのサスペンション
マウンテンバイクに装備されるサスペンション。サスペンションは伸び縮みしてショックを吸収するパーツです。
サスペンションがあれば、山道や荒れた道でも、身体への衝撃が減り、乗り心地が良くなって、疲れにくいなどのメリットがあります。また道に凹凸があっても、タイヤが跳ねずにグリップが良くなり走行が安定するなどの効果がありますよ。
サスペンションには種類があります!
サスペンションには、ショックを吸収する仕組みで、大きく分けて2種類あります。
「エア式」と「コイル式」
サスペンションには空気圧を使うエア式とバネを使うコイル式があります。
【エア式】
自動車でも使われる「エアサス」は、空気の圧力でショックを吸収します。中級グレード以上にモデルに装備されることが多く、サスペンション本体は5万円から、完成車は10万円からの価格帯に多く見られます。
【コイル式】
初心者向けのエントリーモデルなどに多く装備される「コイル式」は、金属のバネがショックを吸収する構造です。本体は5万円以下、完成車は10万円以下がメインになります。激しい衝撃が苦手なエアに代わり、ダウンヒルバイクのリアサスにも採用されています。
以上のように、価格でサスペンションの種類が変わることが多いですが、場合によっては頑丈なコイル式が適している場合もあります。
乗るスタイルで、沈む深さ(ストローク量)が変わります
構造は同じでも素材や設計で用途が変わり、適切な沈む量(トラベル)も変わってきます。以下、目安をまとめました。
カテゴリ | 重量 | トラベル量 | |
街乗り | 2.0Kg前後 | 60~100mm | |
XC | 1.3~2.0Kg | 80~120mm | |
トレイル | 1.8~2.5Kg | 120~160mm | |
エンデューロ | 2.5~3.0Kg | 160~180mm | |
ダウンヒル | 2.5~3.0Kg | 180~200mm |
使いたいフィールドを考えて選ぶと良いですね。
より便利にサスペンションを使う機能
サスペンションには、走行シーンや乗り方に合わせて快適に使う機能があるので、チェックしましょう。
伸縮を止める「ロックアウト」
サスペンションを固定する機能の「ロックアウト」。坂道や舗装路など、ペダルを回して速く走りたい時、サスペンション機能をオフにすれば、スピードが出やすくなります。
沈む量を微調整する「プリロード調整」
リバウンド調整とも言いますが、サスペンションは乗る人の体重に合わせて沈み込み量を決める「サグ設定」。その沈み込み量を微調整するために、固さを調節するのがプリロードです。
高価なサスペンションは何が違う?
では、高価なマウンテンバイクにはどのようなサスペンションが装備されているのでしょうか。
山を駆け巡るクロスカントリーモデルでは、価格が高くなると軽量になります。一方、坂を駆け下りるダウンヒルでは、軽量さより、耐久性が重視されます。
このように、使い方(カテゴリ)によって重視される性能が違うため、一概に「●●が良いから、価格が高くなる」とは言えない、奥が深いパーツがサスペンションです。
ハードテイルとフルサス、どうしたらいい?
また、サスペンションが付いたマウンテンバイクは、ハードテイルとフルサスがあり、どちらがいいのか迷うところです。結論を言ってしまうと、使い方や走るフィールドによって変わるので、楽しみ方によって選びましょう。
前輪のみサスペンションの「ハードテイル」
ハードテイルは、車体を軽量にしやすく、マニュアル感のある操作性が特徴です。街乗りやクロスカントリー、トレイルライドに適しています。
前後にサスペンションの「フルサス」
フルサスの車重はリアのサスペンションが更に装備されるので、重くなりますが、衝撃吸収能力にアップし、操作性があがります。トレイルやダウンヒルなど、ハードな道があるフィールドに適しています。
メンテナンスって大変?
サスペンションはメンテナンスが必要になってきますが、セッティングやメンテナンスを自分で行えると、マウンテンバイクの楽しみが広がりますよ。
最初に必要なセッティング
サスペンションは体重でセッティングが変わります。マニュアルにも記載されている自分の体重に合ったエア圧を、サスペンション専用のポンプで入れます。
また同時に「サグ設定」という自分が乗ったときに沈み込む深さを調整します。サグ設定は一般的にトラベル量の10~20%なので、乗りながらプリロードを調整して合わせましょう。
最後に乗って、自分のフィーリングに合うポジションを見つけます。何度か設定をして、自分のベストな調整を見つけると、よりマウンテンバイクに愛着がわいて、より楽しくなりますよ!
必要なメンテナンスは?
マウンテンバイクでオフロードを走れば、泥やほこりなどが飛び散るので、使用後はサスペンションまわりの汚れに気をつけたいですね。
特にインナーチューブは汚れ・傷があるとサスペンションの動きが悪くなるので、汚れを落とし、薄く油膜がつく程度に注油しましょう。
サスペンションは後からカスタムは可能?
サスペンションは、後からでも交換しグレードアップすることで走りを変えられるパーツです。
サスペンションを交換するときは?
マウンテンバイクのカスタマイズのひとつとして、サスペンション交換があります。
サスペンションはフレーム設計に合わせて、トラベル量も考慮されているので、フレームに合うスペックのモデルから選びましょう。
サスペンション交換で注意したいのは、マウンテンバイクのヘッドチューブ形状・コラム径です。サイズが合わないと、取付けができません。
ホイール、ブレーキ形状もサスペンションが対応しているか、確認しましょう。
サスペンション交換はショップに相談し、取付けもショップで作業してもらう事をおすすめします。
サスペンションにも様々なメーカーがありますよ
マウンテンバイクのサスペンションを作る、代表的なメーカーをご紹介します。
ROCKSHOX(ロックショックス)
現在はSRAM傘下にあるROCKSHOXは、自転車専門のサスペンションメーカーとして90年代のマウンテンバイクブームを牽引してきました。クロスカントリー用のSID、ダウンヒル用のBOXXERなどワールドチャンピオンを獲得した名機を開発しています。
FOX Racingshox(フォックスレーシングショックス)
元は自転車用サスペンションだけではなく、自動車・オートバイなどのオフロード用サスペンションの開発を行っていた会社から、自転車部門が独立した「FOX」。RaceFaceやEASTONを傘下におさめ、トータルでコンポーネントを展開しています。
SR SUNTOUR(エスアールサンツアー)
国内でスポーツバイクのコンポーネントを展開していたメーカーで、現在は資本が海外に移った「SR SUNTOUR」。マグネシウムを使用した高性能なサスペンションは、ホビーレーサーからプロレーサーまで幅広く使用されています。
MARZOCCHI(マルゾッキ)
自転車・オートバイのサスペンションを作るイタリアのメーカーです。ラフな使用にも耐え、シンプルな構造のサスペンションは山で遊ぶマウンテンバイクには、うってつけです。
MAGURA(マグラ)
油圧機器を得意とするドイツのメーカーで、自転車・オートバイ部品を製造しています。スポーツバイクでは油圧ブレーキの名門として、ディスクブレーキが一般的になる以前から愛用者が多く、エア・オイルを利用するサスペンションも高い評価を得ています。
サスペンションのデメリットも理解しておこう
サスペンションはマウンテンバイクに不可欠なパーツですが、マイナスなポイントも理解しておきましょう。
車重が重くなる
サスペンションはたくさんの部品で構成されるため、リジッドフォークと比べてしまうと重くなります。
しかし、悪路を走ると重量よりも衝撃を吸収する方のメリットが大きいため、マウンテンバイクは重さよりもサスペンションの有無の方が重要になります。
ペダルを回す力も吸収するので効率が悪い
衝撃を吸収するので、ペダルを漕いだときも沈み込んでしまい、ペダルを踏む力も吸収してしまいます。
そのため、サスペンションを固定するロックアウトや、路面の衝撃を吸収しペダルを踏む力には反応しない機能を持つモデルもあります。
メンテナンスが大変、ランニングコストがかかる
普段のメンテナンスではエア圧やサグの調整、本体の汚れに注意するなどの作業があります。
定期的なオーバーホールも推奨されるので、ショップでの作業や消耗部品の交換などでランニングコストも、かかってきたりします。
サスペンションでマウンテンバイクは楽しくなる!
サスペンションはマウンテンバイクを安定させ、ライディングを快適にします。それだけではなく、サスペンションの挙動を楽しんだり、サスペンションならではの走り方をしたりと、ライディングの楽しみも倍増しますよ!