「サイクルトレイン」とは
「サイクルトレイン」は自転車を解体することなくそのまま持ち込める鉄道のこと。”そのまま”という点で、解体して専用袋につめて持ち込む”輪行”とは異なります。
「サイクルトレイン」は日本でも増えつつありますが、ヨーロッパでは日常に溶け込んでいる風景。例えばドイツでは、老若男女がホームに自転車を携え乗車する風景はあたりまえになっているとのこと。すごいですよね。
「サイクルトレイン」は、どう使われている?
「サイクルトレイン」が走る日本の鉄道は、都会を走る路線から、1日に数本しかない地方のローカル線まで、さまざまです。全車両が自転車専用というのはまれで、一部の車両が自転車を持ち込めるというタイプが多いようです。
それぞれの路線の特徴を生かして、
- ●ママチャリを乗せられる!普段のお買い物に使える
- ●遠方まで出かけても、帰りは電車でかえってこれる
- ●ビワイチ(琵琶湖一周)のような、遠距離コースをショートカットできる
など、自転車の使い方、楽しみ方が増えるのがサイクルトレインです。
「サイクルトレイン」の魅力を深堀り!
ここからは、「サイクルトレイン」の魅力について、さらに深くご紹介していきます。
自転車を、そのまま載せられる
「サイクルトレイン」の最大の魅力と言って良いのは、自転車をそのまま載せられること!
通常、輪行で自転車を駅で解体する場合は、時間に余裕を持って駅に到着する必要があったり、慣れていないと意外と手間がかかる作業。その手間がなくなるのは、大きいですよね。
乗っている間、カラダを休められる
「サイクルトレイン」に乗っている間は、当たり前ですが、自転車をこがなくて良いのです。それまで、長距離走ってきたカラダの疲れも、乗車時間のあいだ、ゆっくりと休ませることができますよね。
ショートカット&スキップなど、さまざまな活用方法
坂の登り・下りが苦手という方は、「サイクルトレイン」に乗車することで、山岳区間だけショートカットするなど、好きなエリアだけ選んで走るということもできますよ。
または天気予報を確認し、雨がふりそうな時間帯だけ、移動時間にして有効活用というのもよいでしょう。
自転車だけでなく、鉄道からの景色も別視点で楽しめる
自転車からの景色と鉄道からの景色は全然異なります。沼地や湿原を埋め立てて、線路を敷いている場所があったりします。(写真:釧網線/実証実験中、2023年〜運行開始予定)
また、海岸線ギリギリを走ったり、山岳地帯をぬって走る路線などもあり、鉄道ならではの景色を、愛車と一緒に楽しむことができますね。
「サイクルトレイン」乗車前に確認すべき5つのポイント
ここからは、「サイクルトレイン」乗車前に確認しておきたいことを5つまとめてみました。ひとつひとつ見ていきましょう。
路線全部ではなく、対象区間が決まっている場合もあるので注意
「サイクルトレイン」と言っても、自転車を持ち込みできる駅が決まっている場合も。各鉄道会社の公式ホームページで、事前にチェックしておきましょう。
例えば、近江鉄道(滋賀県)の「サイクルトレイン」の場合、自転車持込OKの駅とそうでない駅があるので、注意が必要です。
”自転車の持込をご遠慮いただいております”と書いてある駅は、乗降者数が多かったり、自転車の持ち込みができない駅の構造になっていたりします。
支払方法の確認
サイクルトレインは、交通系ICカードが使えないこともあり、またローカル路線では、クレジットカードが使える駅が少なかったりします。
そんな時でも困らないように、ある程度の現金も準備しておきましょう。
最近では、当日混乱しないように、事前決済に対応している路線も増えてきました。自転車を運びながらのやり取りは、大変なので助かりますよね。
【例】
西鉄天神大牟田線「サイクルトレイン」の場合、LINEで事前決済&きっぷ発行
持込料の確認
サイクルトレインは、運賃とは別で持込料がかかる場合があります。事前にチェックしておきましょう。
サイクルトレインは毎日運行していない可能性も
サイクルトレインの実施日・実施時間は、平日の昼間や土日祝日などの利用の少ない日・時間帯に限定されている場合が多く、期間限定の場合もあるので注意が必要です。
通常ダイヤの路線に乗れるのなら本数はあるかもしれませんが、ローカルな限定列車ともなると、本数が少ないので、気をつけましょう!
日本全国のサイクルトレイン一覧
ここからは、日本各地で走る「サイクルトレイン」を13つご紹介。北から順番に見ていきましょう。
東北
<阿武隈急行/福島県>
●平日
下り・福島駅10:00発、梁川行き〜梁川駅15:48発 までの16本
上り・富野駅10:01発、福島行き〜槻木駅15:43発 までの16本●休日および土曜日
上下線とも終日※持込料は無料、すべての駅で乗降車できます。(JR槻木駅構内は専用の袋に収納願います。)
東北地方で2番目に長い「阿武隈川」沿いを走る阿武隈急行線。
東日本大震災で甚大な被害を受け、その後も台風など度重なる災害で一時不通となることがありましたが、令和4年時点では、全線運転再開しております。どこか懐かしい、レトロカラーのラッピングは郷愁をそそられることまちがいなし!
関東
<JR東日本「B.B.BASE」/東京・茨城・千葉>
●「B.B.BASE 内房」
●「B.B.BASE 鹿野山・菜久留トレイン」
●「B.B.BASE 外房」
●「B.B.BASE 佐倉・銚子」
●「B.B.BASE 佐原・鹿島」
2018年にデビューした「B.B.BASE」。
BOSO – 「房総」の各地を
BICYCLE – 「自転車」で駆け巡るための
BASE – 「基地」
を意味しています。
どの列車も東京・JR両国駅起点で1日1往復の運行、6両編成の99席はすべて予約制。持込料は無料ですが、大人840円・子ども420円の指定席券は必要となっています。運行日は土日祝日中心、上記5路線のどれかひとつが運行。
詳しくはこちらも参考にしてください
<秩父鉄道/埼玉県>

秩父鉄道
●(平日のみ)波久礼-三峰口駅間
●(土曜・休日)御花畑-三峰口駅間※ゴールデンウィーク期間中(4月27日~5月6日)・秩父夜祭開催日(12月3日)は除外
※利用可能駅は、波久礼(平日のみ)・野上(平日のみ)・長瀞(平日のみ)・親鼻(平日のみ)・皆野(平日のみ)・御花畑・武州中川・武州日野・白久・三峰口の10駅
東京から秩父方面の足がかりとして人気の秩父鉄道にも、サイクルトレインが登場!
乗降は埼玉県内限定とはなりますが、付近はレンタルサイクルが充実しておりますので、1WAYサイクリングやグルメポタリングをするのも楽しいですよ。
<いすみ鉄道/千葉県>
●全路線、終日持込OK。
※手回り券210円をご購入の上、乗車時は入口(列車後方)から持込みください。
※自転車をグループでお持込される場合は乗り切れない場合がありますので、事前にお問い合わせください。
いすみ鉄道といえば、千葉の外房地域を走るローカル線。春には菜の花が沿線を彩り、秋には穂を垂らした田んぼが美しい路線です。
全長26.8kmとかなり短い距離ですが、あえてゆったり車窓から楽しむ旅もGOODですよ。
<関東鉄道/茨城県>
終日下記時間限定、持込料は無料。
●常総線 水海道~大田郷間 9:30~14:30(ご乗車時間)
●竜ヶ崎線 全線
首都圏のベッドダウン的なエリアで活躍する、関東鉄道。
茨城西部の運行とはいえ、東京駅からは常磐線で取手駅、秋葉原駅からはつくばエクスプレスで守谷駅に1本で出られるので、意外と便利なエリア。そんな取手〜守谷からは自転車持ち込み不可で残念なのですが、その他の駅では比較的持ち込める駅も多いのでチェックしてみてくださいね。
常総平野にドドンとそびえる筑波山を至近にながめられ、迫力満点。そんな車窓からの景色は忘れられないものになるはず。
東海
<伊賀鉄道/三重県>
月〜金曜の時間限定、土日祝日の終日、持込料は無料。
※新居~比土駅間のみ
※乗車時、降車駅を運転士に申告してください
近鉄大阪線・JR関西本線とも接続のある伊賀鉄道。
三重県って”東海エリア”というイメージがありますが、じつは関西方面からもアクセス良好なんですよね。そして、三重県伊賀といえば、伊賀忍者で知られるエリアなので、ラッピングには忍者のイラストが!
そんな3両しかない「忍者列車」といわれる車両に乗れたら、とてもラッキーかも?
北陸
<北陸鉄道/石川県>
毎年3月16日〜11月30日の月〜金曜の時間限定、土日祝日の終日、持込料は無料。
●石川線サイクルトレイン 野町駅・鶴来駅
●浅野川線サイクルトレイン 北鉄金沢駅・内灘駅※これ以外の駅での乗り降りはできませんのでご注意ください。
※冬季(12月1日〜翌年3月15日)と雨天時は利用不可
石川県金沢市中心部を走るローカル線・北陸鉄道。
ローカル線とはいえ、そのど真ん中「北鉄金沢駅」から乗車できるとあり、利用価値は高め!終点の内灘駅までは全長6.8kmと短い区間ではありますが、だからこそ、ゆるめのサイクリング観光にとても向いていますよ。
近畿
<近江鉄道/滋賀県>
月〜金曜の時間限定、おおむね9:00~16:00、土日祝日の終日、持込料は無料
●本線(米原駅~貴生川駅)
●多賀線(高宮駅~多賀大社前駅)※彦根駅・八日市線(新八日市駅~近江八幡駅)の各駅はご利用いただくことができません。
琵琶湖の東側を走り、風光明媚な車窓からの景色が楽しめる近江鉄道!
ゆるキャラ「ひこにゃん」で有名な彦根城や、安土城址などの観光地も沿線にあり、魅力的。また、琵琶湖一周を走行するときのエスケープルートにも使えますよ。
<JRきのくに線/和歌山県>
平日の9時〜終電まで、土日祝日の終日、持込料は無料
●普通列車…御坊〜新宮駅の各駅
●特急くろしおサイクル(「特急くろしお」の6両目のみサイクリスト専用車両)…白浜・串本・紀伊勝浦・新宮駅の4駅のみ乗降OK※普通列車ご乗車の方は、ゴムバンドなどの固定具をご持参ください。
※「特急くろしお」ご乗車の方向けに、専用カバーを貸し出ししております。かならず取付してご乗車ください。
1WAYサイクリングや、紀伊半島一周のエスケープなどにフル活用できますよ。特急くろしおサイクルのみ、予約が必要となりますが、サイクリスト専用車両に乗れるのはとても贅沢ですよね。
中国・四国
<一畑電車/島根県>
終日、全区間にて実施。持ち込み料320円。
※10名以上の団体でご利用になる場合、前日までにご乗車駅、または直近の有人駅へご連絡ください。
※12月31日のミッドナイト電車、1月1日~1月3日、松江水郷祭・出雲神話まつり、その他指定するイベント開催日にはご利用できません
出雲大社前駅・電鉄出雲市駅を起点として走行する、一畑電車。
終点の松江しんじ湖温泉駅まではずっと車窓からの景色がうつくしく、海のように広い宍道湖からの夕焼けは「日本の夕日百選」に選ばれるほどすばらしいもの!
- 冬の時期限定でしか見られないので、その時間に合わせて乗車してみても良いかも?
<伊予鉄道/愛媛県>
郊外線のみ。イベント開催日を除く土・日・祝日に終日実施。持込料は300円。
予約はできず、1列車につき先着10台までとなっています。
※安全上の理由から、大手町駅・石手川公園駅・鷹ノ子駅からの乗降はできません。
※松山市駅ではエスカレーターでの上り降りはしないでください。
しまなみ海道を含む「瀬戸内7海道」といわれるサイクリングルートのひとつ『はまかぜ海道(松山〜今治)』のルートに含まれる、愛媛県・松山市内。
そんな松山市内にもサイクルトレインが走っているのですが…それがなんと、道路を走る路面電車!通称「いよてつ」と言われ、松山市民の足として親しまれております。
駅の間、数百m単位で停車してくれるので、道後温泉や、松山城などへ向かう、街ナカサイクリングの足としてとっても便利!
九州
<西鉄・天神大牟田線/福岡県>
土日祝のみ、持込料300円
●西鉄福岡(天神)発 6時30分〜16時00分
●大牟田発 10時25分〜21時25分※乗降は特急列車停車駅のみ…西鉄福岡(天神)・薬院・大橋・西鉄二日市・西鉄久留米・花畑・大善寺・西鉄柳川・新栄町・大牟田
※予約・決済はLINE公式アカウントにて行います。アプリのインストールをお願いします
九州一の大都市・博多のど真ん中・天神から、炭鉱の歴史で有名な大牟田まで約70kmを約2時間で結ぶ、大牟田線。
同時に海から海を結ぶ路線としても知られていて、博多湾〜有明海の景色の変化も楽しめます。
久留米ラーメンで有名な久留米駅も経由するので、食べるためにちょっと途中下車してサイクリングという楽しみもありますよ。
<熊本電鉄/熊本県>
月曜~土曜は9:00~15:30、日祝は終日実施。持込料は無料
※年末年始・団体利用時・悪天候などの場合は曜日に関係なくお断りする場合があります。
熊本駅からわずか2kmの距離にある「上熊本駅」から”くまモンラッピング”がキュートな熊本電鉄が走っていますよ。熊本城や熊本ラーメン屋さん巡りなど、街ナカ観光に取り入れてみてはいかがでしょうか?
サイクルトレインに乗って、沿線の魅力を知ろう!
サイクルトレインは、上手に使うと時間の有効活用になりますし、体力の温存にもなります。天候と相談しながら乗ったり降りたり、現地で決めるのも楽しいです。
サイクルトレインによって、自転車に乗っているだけだと知らなかった、あなただけのお気に入りスポットが見つかるかもしれませんね。日本全国で増えてきていますので、生活の足として、または旅のスパイスとしても、チェックしてみてはいかがでしょうか。