変速もブレーキも操作できる「STIレバー」
ロードバイクに当たり前のように装備される、STIレバーですが、名称の定義を知らない方も多いパーツかも知れません。
正しくは「デュアルコントロールレバー」
STIというアルファベットは、「Shimano Total Integration」の略。
ロードバイクの変速レバーがダブルレバー(ダウンチューブ付近に取り付けられた変速専用レバー)だった時代に、ハンドルから手を放さずにブレーキと変速操作が出来るシステムをシマノが開発しました。STIというのは、そのシマノのブレーキ・変速システムを指します。
STIを可能にしたのが、ブレーキ機能と変速機能を兼ね備えた「デュアルコントロールレバー」。現在では、このデュアルコントロールレバーを「STIレバー」と呼ぶことが増えています。
この記事でも、分かりやすいよう「STIレバー」という呼び方で統一します。
ちなみに、同様のレバーはスラムやカンパニョーロ等のブランドも発売しており、稀に「STIレバー」と呼ばれることがありますが、本来は「STIレバー」は、シマノのデュアルコントロールレバーを指す言葉です。
基本的な操作方法
STIレバーの基本操作は、以下の3つです。
①ブレーキをかける
②シフトアップ(ギアを重く)する
③シフトダウン(ギアを軽く)する
では、それぞれ写真をもとに解説していきましょう。
①ブレーキをかける
レバー全体を手前に引きます。
STIレバーによっては空引き量(ブレーキが効くまでの距離)を調節できる場合もあります。
②シフトアップ(ギアを重く)する
・リア変速(右レバー)
・フロント変速(左レバー)
リアは手前側のレバーを、フロントはレバー全体を内側に押し込みます。
フロントとリアで押し込むレバーが異なりますので、注意しましょう
③シフトダウン(ギアを軽く)する
・リア変速(右レバー)
・フロント変速(左レバー)
シフトダウンは、シフトアップと逆の動作です。
リアはレバー全体を、フロントは手前のレバーを内側に押し込みます。レバーを大きく押し込むことで、ギアを一気に2段軽くすることも出来ます。
大きく分けて4種類
STIレバーには、現在大きく分けて4つの種類があります。種類が分かれるのは、ブレーキシステムと変速システムの違いです。
ブレーキが「ワイヤー」か「油圧」か
ブレーキを動作させる方法が、「ワイヤー」を引くタイプと「油圧」を利用するタイプの2種類あります。
ワイヤーの場合はリムブレーキ(キャリパーブレーキ)とメカニカルディスクブレーキに、油圧の場合は油圧ディスクブレーキに用いられます。
STIレバー内部の構造が異なりますので、ブレーキ規格を統一しないと使用できません。例えば、「ワイヤー用STIレバー+油圧ディスクブレーキ」や「油圧用STIレバー+リムブレーキ」はNGです。
変速が「電動式」か「機械式」か
ギアを変速する方法にも、「電動式」と「機械式」の2種類があります。
電動式の場合、変速の信号がディレーラー(変速機)に送られ、ディレーラーも電動で動きます。STIレバーの操作も、レバーを大きく動かすのではなく、同じ位置のスイッチを押す形です。
機械式の場合はSTIレバーとディレーラーがワイヤーで繋がれ、STIレバーの操作をディレーラーに伝えています。
変速の種類も互換性はありませんので、STIレバーとディレーラーはセットで使用する必要があります。
まとめると、ブレーキの種類と変速の種類で、以下の4つの組み合わせとなります。
・ワイヤー/電動式
・ワイヤー/機械式
・油圧/電動式
・油圧/機械式
STIレバーは、各種グレードがあります。
STIレバーは、先ほどの4つの種類のほか、グレードによっても特徴が異なります。グレードにより異なるのは、ギアの変速段数と各部の扱いやすさです。
変速段数は何段?
グレードが高いほどリアの変速段数が多くなり、現在のトップグレード「Dura-Ace」は12速。逆に、最も安価な「Tourney」は7速です。
また、フロント変速の段数は2段が基本ですが、低グレードでは3段のものもあります。
STIレバーは使用できる変速段数やグレードが決まっていますので、変速機やブレーキ等のパーツ全体(コンポーネント)と互換性のある組み合わせで用いましょう。
変速段数が多い方が、より細かなギア選択が可能になるため、状況に合ったギアで快適に走行できます。
扱いやすさも異なる
グレードによって異なるのは、変速段数だけではありません。
STIレバーの重量や剛性から、形状、調節幅、動作の軽さに至るまで、グレードごとに差があります。下位グレードでも十分な性能を発揮しますが、上位グレードほどより高性能で、より快適に使用できるものが多いです。
特に手の小さい方や握力に自信のない方は、上位グレードの方が握りやすく軽い力で操作できますので、高グレードを選択するのも良いでしょう。
グレード別のラインナップ
シマノのロードバイク用コンポーネント(変速機やブレーキ等の集合体)は、現在大きく分けて7つのグレードがあります。
グレード別のSTIレバーのラインナップをまとめました。
Dura-Ace(デュラエース)
シマノのロードバイク用最高グレード。
型番では、現在はR9200系が最新です。変速段数は2×12速。
・ST-R9250:ワイヤー/電動式
・ST-R9270:油圧/電動式
Ultegra(アルテグラ)
Dura-Aceに次ぐセカンドグレード。最新版はR8100系で、変速段数は2×12速です。
・ST-R8150:ワイヤー/電動式
・ST-R8170:油圧/電動式
105(イチマルゴ)
ミドルグレードの代表格で、低価格ながらレースにも対応する性能です。最新版はR7000系で、2×11速です。
・St-R7000:ワイヤー/機械式
・ST-R7020:油圧/機械式
・ST-R7025:油圧/機械式(スモールハンド)
Tiagra(ティアグラ)
エントリーグレードの中でも高性能なコンポーネント。型番は4700系で、変速段数は2×10速です。
・ST-4700:ワイヤー/機械式
・ST-4720:油圧/機械式
・ST-4725:油圧/機械式(スモールハンド)
Sora(ソラ)
スポーツ/フィットネス・サイクリスト向けのグレード。R3000系で、変速は2×9速(稀に3×9速)です。
・ST-R3000:ワイヤー/機械式
Claris(クラリス)
エントリーライダー向けのグレード。R2000系で、変速が2×8速(稀に3×8速)です。
・ST-R2000:ワイヤー/機械式
Tourney(ターニー)
街乗り用のグレード。変速段数は2×7速、または3×7速です。
・ST-A070:ワイヤー/機械式
整備や交換は専門店に相談を
STIレバーに関連する整備や交換には、専門的な技術や知識が求められます。特に初心者の方には、複雑と感じることも多いでしょう。
間違ったパーツ構成や組付けで使用してしまうと、事故につながる危険もあります。整備や交換をしたい場合は、スポーツバイクの専門店に一度相談してみましょう。