SRAMとは?
SRAMは1987年に設立された自転車パーツのアメリカンブランドです。MTBパーツから始まったメーカーですが、2007年にロードバイク向けの軽量な「Red」グループセットを発表し、現在ではMTBと並んでロードバイクやシクロクロスバイク用の幅広いコンポーネントを製造しています。
SRAMのロードグループセットは、グレード順にRed>Force>Rival>Apexの4つのラインナップがあります。
すべてのグループセットに油圧式ディスクブレーキも含まれており、最下位グレードのApex以外、12速対応のワイヤレス電動ディレイラーも展開されています。
最近では、大手自転車メーカーにもSRAMが採用されるようになりました。3T、SPECIALIZED、CANYON、TREKの完成車にも搭載されて、ロードコンポとしては後発ブランドでしたが勢力を広げています。
SRAMのテクノロジー
創業から短期間で、世界的メーカーへと駆け上がったSRAM。その成功は、革新的なアイデアをカタチにできる技術力があったからこそです。ここでは、そのSRAMのテクノロジーをご紹介します。
完全ワイヤレス電動変速
SHIMANO、Campagnolo、そしてSRAMの3つのメーカーの中でも、SRAMは初めてのワイヤレスグループセットSRAM Red eTapを2015年に発売。2019年には、Red eTap AXSとForce eTap AXSのツートップグレードを電動化させた上で、12速化まで進化させました。
その後、2021年には、RivalにもeTap AXSを導入するなど、業界をリードするように、電動変速ディレイラーを次々発売しています。
幅広いギア選択
SRAMは12速向けのクランクセットのチェーンリングを小型化しました。アウターインナーのギアを最大で50T/37T、最小で46T/33Tとしており、パワーを必要としない低いギアも用意されています。これはヒルクライムで低いギアをチョイスできるのは、有効な選択肢になります。
しかしスプロケットの最小ギアを10Tと展開を広げたため、アウタートップの組み合わせでは、従来通りの高いギア比でセッティングも可能です。SRAMはこの新しいセットアップを「モダンギアリング」と呼んでいます。
ダブルタップレバー
SRAMは、直感的な操作で、ギアチェンジを可能にする「ダブルタップレバー」を採用しています。
機械式変速の場合は、片側のレバーでシフトアップ/ダウンの操作を行います。レバーを浅く押すとシフトアップし、長く押すとシフトダウンになります。
一方、電動変速eTapの場合は、リアディレイラーの変速は右レバーを押すとシフトアップ、左レバーを押すとシフトダウンします。両レバーの同時押しでフロントディレイラーが、アウター/インナーの切り替えをします。
以下、SHIMANOと比較です。SHIMANOのシフターには、2本の操作レバーがついてます。
大きいレバーを倒せばシフトダウン、小さいレバーを倒せばシフトアップができます。
対して、SRAMのシフターには、操作レバーが1本だけです。
各グレード、SRAMとSHIMANOのスペック比較
各グレードで、価格や重量にはどれぐらいの差があるのでしょうか?それぞれグレード別で、グループセットを比較してみました。グループセットには、リアディレイラー/フロントディレイラー/シフトブレーキレバー/ブレーキキャリパー/クランクセット/カセット/チェーン/BB/バッテリー/ローター(ディスクブレーキの場合)を含めて、価格と重量を算出しました。SRAMただし価格も重量も参考値になります。あくまで参考として見てくださいね。
トップグレード比較
メーカー | モデル名 | 参考価格(税込) | 参考重量(g) | ブレーキシステム | 変速 | F/R変速段数 |
SRAM | Red eTap AXS HRD | ¥521,840 | 2,583 | 油圧ディスク | 電動 | 2/12 |
SHIMANO | DURA-ACE R9270 | ¥453,865 | 2,467 | 油圧ディスク | 電動 | 2/12 |
SRAM | Red eTap AXS | ¥448,690 | 2,101 | 機械式リム | 電動 | 2/12 |
SHIMANO | DURA-ACE R9250 | ¥423,582 | 2,146 | 機械式リム | 電動 | 2/12 |
スペック上は同じ油圧ディスクブレーキの電動12速です。同一スペックで比べた場合、価格はSRAMが25,108~67,975円高くなっています。これまでSHIMANO強みの1つである「低価格」は、新型DURA-ACEでも現れています。
重量について、油圧ディスクの場合、SRAMの方が116g重くなっています。SRAMはカセットのトップが10s、コンパクトクランク(46-33T)による軽量化もありますが、シマノはブレーキシステム(レバー/ブレーキ/キャリパー)とディレイラーの軽量化を図った結果、SHIMANOのほうが軽くなっています。
また機械式リムの場合、SRAMが45g軽くなっていますが、ほとんど差異がないとみていいでしょう。
新型であるR9200系DURA-ACEの高価格にも伴い、トップグレード同士のスペック比較においては「SHIMANOの方が低価格で軽量」という傾向があるようです。
セカンドグレード比較
メーカー | モデル名 | 参考価格(税込) | 参考重量(g) | ブレーキシステム | 変速 | F/R変速段数 |
SRAM | Force eTap AXS HRD | ¥380,468 | 2,860 | 油圧ディスク | 電動 | 2/12 |
SHIMANO | ULTEGRA R8170 | ¥278,055 | 2,711 | 油圧ディスク | 電動 | 2/12 |
SRAM | Force eTap AXS | ¥329,208 | 2,393 | 機械式リム | 電動 | 2/12 |
SHIMANO | ULTEGRA R8150 | ¥233,143 | 2,419 | 機械式リム | 電動 | 2/12 |
価格面ではSRAMの方が96,065~102,413円高くなっており、トップグレードより価格差が大きくなっています。重量面について、 油圧ディスクではSRAMが149g重く、機械式リムでは26g軽くなっています。
SHIMANOと比較すると価格差が大きくなる一方で、SRAMの方がやや重量が大きいのが、SRAMのセカンドグレードの特長のようです。
モデル名で、仕様がわかる
ここから各グレードの紹介をしていきますが、その前にモデル名を紐解いていきましょう。複雑なモデル名ですが、意味が分かると仕様まで理解できるネーミングになっています。
●eTap(イータップ)→ワイヤレス電動変速
●HRD(Hydraulic Road Disc.)→油圧ディスクブレーキ(表記のない場合は機械式リムブレーキ)
●AXS(アクセス)→バイクデータ(シフト/ギア/パワーゾーンなど)をスマホに連携させる機能
●x(バイ)→フロントのギア数を表しており、1x、2xと表記されます。
「SRAM RED eTap HRD AXS」の場合、「TOPグレードのRED+ワイヤレス電動変速+油圧ブレーキ+データ連携機能」のコンポーネントという意味になりますね。
それでは、次から各グレードの特徴を抑えて行きましょう。前述したように、SRAMにはRed>Force>Rival>Apex順で、4つのグレードに分かれています。
Red(レッド)
プロレースにも投入されるSRAM最高峰のグレード
Force(フォース)
Redとほぼ同スペックを兼ね備えたセカンドグレード
Rival(ライバル)
コスパ重視だが、最新の電動12速化を果たしたモデル
Apex(エイペックス)
10速コンポの最安価グレード
まずは、トップグレードの「Red」から。
フラグシップコンポのRed
Redグループは、SRAM最高峰グループセットで、Shimano Dura-AceおよびCampagnolo SuperRecordのライバルとして発売され、ツールドフランスで何度も勝利を収めてきました。
完全ワイヤレスシステムに加えて、カーボンファイバー、チタン、セラミックベアリングなど超軽量の素材が使われていて、他メーカーと比較しても、トップクラスに軽量な仕上がりとなっています。
SRAM Red eTapは、2015年に無線電動11速グループセットとして発売されました。2017年には油圧ディスクブレーキ対応のRed eTap HRD、2019年には、SRAM初の12速グループセットであるRED eTapAXSが登場しました。
RED eTap AXSのリアディレイラーは、10T〜36Tのスプロケットにも対応可能です。またAXSでなくとも、32Tまで対応できるWiFliもラインナップされています。それ以外だと28T対応のリアディレイラーになります。また最新のeTap AXSグループセットにはパワーメーターQuarq内蔵のクランクセットを追加するオプションもあります。これはRedに限らず、下位モデルでも同様のオプションです。
ラインナップ:
Red eTap AXS HRD
Red eTap AXS HRD 1X
Red eTap AXS
Red eTap AXS 1X
Red eTap AXS 1X Aero
Red eTap 11
Red 22 HRD
性能と価格のバランスが取れたForce
Force は、Redに次ぐ、セカンドグレードで、パワーメーターオプションを提供する12速電動ワイヤレスグループセットです。2013年にRival初となる11速ギアを発売し、2019年にはForce eTap AXSをラインナップに加えて、セカンドグレードにも関わらずRed同様の12速電動ワイヤレスを実現しています。
Red eTap AXSと機能面では似た構成になっていますが、ハイパフォーマンスに対してコストを抑えたパッケージになっています。重量はRedより少し重いですが、Shimano Ultegraとほぼ同等です。
またForceグループには、Force eTap AXSだけでなく、Force 22(11速)、SRAM Force 1(フロントシングル)も展開されており、すべてのモデルに機械式リムブレーキまたは油圧ディスクブレーキに対応してます。
ラインナップ:
Force eTap AXS HRD
Force eTap AXS HRD 1X
Force eTap AXS
Force eTap AXS 1X
12速電動に進化したRival
上位3番目のグレードがRivalです。2014年にRival 22が発売後、初の後続モデルとなる2021年にRival eTap AXSは、驚くことに12速電動ワイヤレスグループセットとして生まれ変わりました。
サードモデルにも関わらず電動12速化は、先進的な製品展開と言えるでしょう。低価格で電動コンポーネントを導入できるようになりました。
上位モデルとほとんど同じ技術を使用していますが、違いがあるとすれば、クランク/シフトレバー/リアディレイラーの一部素材がカーボン繊維からアルミニウムに代替されていることです。また、油圧レバーに関しては、SRAM Red eTap HRDに比べると大型のフードになっています。
ラインナップ:
Rival eTap AXS HRD
Rival AXS HRD 1X
Rival 22
最安価モデルApex
Apex 10s、Apex 1xの2種類があります。SRAM Apexと他のラインナップの最も顕著な違いは、10スピードのグループセットであることです。
Apex 10sは、リアカセット用に11〜32Tの広いギア範囲の10速対応ギアです。これにより、フロントトリプルの余分な重量や複雑さを伴わずに、幅広いギアを選択できます。Apex 1xは、1×11のギア(フロントに1つ、リアに11のギア)で、リアディレイラーは、42Tと大きなスプロケットに対応できます。
SRAMも選んでみては?
SRAMの特長は、先進的に電動12速化を推し進めてきたことでしょう。そのうえ、モダンギアリングによるワイドギア化やAXSによるスマホとの連携により、よりユーザーフレンドリーな機能を搭載しています。
Redモデルはプロレースにも導入されコンポーネントとしての信頼度も上がり、SRAMはロードバイク業界においても今やSHIMANOのライバル会社になっています。
最大の魅力である電動12速コンポを導入するハードルを下げているのがRivalモデルです。電動コンポーネントとは思えない低価格と、上位モデルから引き継いだパフォーマンスは、走りを快適に楽しいものにしてくれるでしょう。
完成車を購入する際や、バラ完で自転車を組む際には、SRAMコンポーネントを視野に入れてみてもいいでしょう。