フロントシングルとは
フロントシングルとは、フロントギアが1枚だけの変速ギアのこと。クランクには1枚のチェーンリングのみで、フロント用の変速機はついていません。「1×〇速」と表記されている場合は、フロントシングルの自転車です。
ママチャリやシティサイクル、ピストバイクなども、フロントシングルが多く、故障が少なくメンテナンスがしやすいこと、またチェーンが外れにくいのが特徴です。
最近では、そのシンプルな構造や操作性の面で、ロードバイクやグラベルロードなどでも、取り入れられるようになってきました。
フロントが2枚歯ならフロントダブル。3枚歯ならフロントトリプルと呼びます。
フロントシングルのメリット
「フロントで変速ができないのは不便なのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、フロントシングルのメリットを確認していきましょう。
①「チェーンが外れる」などの、トラブルが少なくなる
フロントディレイラーそのものがないので、フロント変速のトラブルがおきませんし、フロントギアからチェーンが外れる「チェーン落ち」のリスクも減ります。
また、チェーンリングからスプロケットまでの「チェーンライン」が、たすき掛けにならず綺麗なラインになり、チェーンの横方向にかかる力が減るので、ギアチェンジがしにくい事も減るでしょう。
②変速がリアのみで、シフト操作がシンプルに
フロントディレイラーがないので、シフト操作はとてもシンプル。
リアだけで変速を行うので、ギア操作がより直感的になります。変速時にフロントにしようか?リアにしようか?などの、迷いからも解放されます。
③メンテナンスもラクになります
クランク周りがすっきりするので、非常に洗車しやすくなります。
2枚あるフロントギアの歯が、邪魔で掃除しずらかった箇所も、隅々まできれいにできるでしょう。クランク周りの不具合も発見しやすくなるので、故障の早期発見にもつながります。
フロントシングルは、こんな人におすすめ
チェーントラブル回避&シンプルな操作性が快適なフロントシングル。とくに、こんな方におすすめです。
●変速によるトラブルやストレスを無くしたい人
●頻繁に変速をしない人
●見た目をスッキリさせたい人
●車体重量をできるだけ軽くしたい人
ギアをフルに使う機会がなく、いつも走る場所が同じ方は、思い切ってフロントシングルにしてみてはどうでしょう!
ただし軽量化ができるかはギア比次第です。フロントは軽くなりますが、ギア比を合わせるためにスプロケットが大きくなるので、大幅な軽量化にならないこともあります。
激坂やスプリントには不向き?
平地ライドもヒルクライムなど、オールラウンドにロードバイクを楽しむ人などは、フロントシングルでは対応できないシーンがでてくるでしょう。
フロントシングルの場合、ギアの組み合わせは11~12種類と選べる幅が狭いです。そのため、フロントダブルなら可能だった「超軽いギアから超重いギアまで」の組み合わせが難しくなります。「激坂を上りたいのに軽いギアがない」「スピードを出したいのに重いギアがない」という状態に…。
「それなら、極端に軽いギアと重いギアの歯を入れておけばいいのでは?」と思います。しかしそうすると、ギアの歯1枚づつの段差が大きくなってしまい、シフトを切り替えるたびにガクッと変速が大幅に変わり、乗りにくいバイクになってしまいます。
軽いギアから重いギアまで幅広く使って走る人は、フロントシングルより、ダブルの方が向いているかもしれません。
自分に合った歯数を選ぼう
フロントシングルにするなら、どの歯数のギアを組み合わせるかが、とても重要です。
ギアをフルに使って走る機会がないからシングル化したい。そういう人は、いつもどの組み合わせをメインに使っているのか、確認してみましょう。
例えば、フロントダブルのロードバイク(コンポ105仕様)前50/34T、後ろ11-34Tの組み合わせで、タイヤは25Cを装着、ケイデンス90で走っている人のギア比は、こちら。
リア34T | 30T | 27T | 25T | 23T | 21T | 19T | 17T | 15T | 13T | 11T | |
フロント50T | 1.47 16.7km/h | 1.67 19km/h | 1.85 21km/h | 2 22.7km/h | 2.17 24.7km/h | 2.38 27.1km/h | 2.63 29.9km/h | 2.94 33.4km/h | 3.33 37.9km/h | 3.85 43.8km/h | 4.55 51.7km/h |
34T | 1 11.4km/h | 1.13 12.8km/h | 1.26 14.3km/h | 1.36 15.5km/h | 1.48 16.8km/h | 1.62 18.4km/h | 1.79 20.3km/h | 2 22.7km/h | 2.27 25.8km/h | 2.62 29.8km/h | 3.09 35.1km/h |
これを、リアはそのままで、フロントを36Tに変更した場合と、40Tに変更した場合を見てみましょう。
リア34T | 30T | 27T | 25T | 23T | 21T | 19T | 17T | 15T | 13T | 11T | |
フロント36T | 1.06 12km/h | 1.2 13.6km/h | 1.33 15.1km/h | 1.44 16.4km/ | 1.57 17.8km/h | 1.71 19.4km/h | 1.89 21.5km/h | 2.12 24.1km/h | 2.4 27.3km/h | 2.77 31.5km/h | 3.27 37.2km/h |
40T | 1.18 13.4km/ | 1.33 15.1km/h | 1.48 16.8km/h | 1.6 18.2km/h | 1.74 19.8km/h | 1.9 21.6km/h | 2.11 24km/h | 2.35 26.7km/h | 2.67 30.3km/h | 3.08 35km/h | 3.64 41.4km/h |
フロント36Tでは、1番軽いギアで1.06、重いギア3.27という結果に。これなら、50/34T×11-34Tの組み合わせでいう、34Tの方をメインで使っている人が、使い勝手のいい組み合わせと言えるでしょう。
フロント40Tだと、50Tで組み合わせた時ほど重くはできませんが、34Tのみを使っている時より、重い組み合わせで走ることが可能です。しかし、このギアでヒルクライムに挑戦するなら、脚力がないと大変かもしれません。
今回ご紹介したのは、ほんの一例ですが、ギアの歯数を選ぶ際は、脚力、走るスタイルにあわせて、どの組み合わせだとバランスがいいか、考えながら選んでみましょう。自分にぴったりな組み合わせを見つけてみてくださいね。
フロントシングルにするには?
フロントシングル化にするには、クランクごとすべて取り換える方法と、チェーンリングだけを交換する方法があります。どちらの場合も、自分のバイクに合う規格、サイズのものを選びましょう。
クランクごとすべて交換する場合
クラングこと変える場合は、クランクとチェーンリングがセットになっている、「クランクセット」を購入します。最近では、フロントシングル専用のものもあるので、チェックしてみてください。
チェーンリングのみを交換する場合
フロントシングルのチェーンリングなら、チェーンの歯が外れにくい構造になっている「ナローワイドチェーンリング」を購入するのがおすすめです。これなら、チェーン落ちのトラブルなく、快適に走れるようになりますよ。
いずれにしても、カスタム方法や、どのパーツを選べば良いかわからない時などは、自転車ショップで相談してみましょう。
「シンプル・イズ・ベスト」な、フロントシングル
フロントシングルは、見た目も操作もすっきりシンプル。使っていないギアを外すことで、チェーントラブルや変速によるストレスのない、快適な走りを手に入れることができます。
今よりさらに使い勝手のいいバイクにしたいなら、フロントシングル化してみるのもいいかもしれませんね。ぜひチャレンジしてみてください!