TIMEのペダルを使ってみた
TIMEのペダル、どんなイメージを持っていますか?
正直なところ、筆者はイメージをあまり持っていませんでした。
「どんなペダルなのかよくわからない」
「なんか高そう」
「みんなが使ってないから、別に使わなくてもいいや」
よく知らないので、なんとなく二の足を踏んでいました。自分の周りで使っている人が少ない、というのも大きな理由でした。
この記事ではTIMEのロードペダルについて、実際に筆者が使ってみた感想をもとに、どんなペダルなのか解説をしていきましょう!150㎞ライドしたり、標高2700mまで登ったり、いろんなシチュエーションで使ってきました。
TIMEってどんなメーカー?
ちょっとTIMEについて簡単に話しましょう。
TIMEは1987年にロラン・カタンが設立した、自転車および関連パーツのフランスブランドです。ペダリング時の脚の理想的な動きを追求し続けたTIMEペダル&クリートは、ユーザーからの強い人気があります。
2021年に自転車パーツメーカーであるSRAMにペダル部門を買収されましたが、TIMEブランドは継続されることとなりました。今までと変わらずポディウムが国内代理店となっています。進化を続ける機能性、革新的な機構を持つTIMEペダルをインプレッションとともに紹介していきましょう!
他メーカーとは一線を画したペダル
TIMEのペダルは「効率的なパワー伝達」「足のポジションの自由度」を両立してきたペダルです。
ケイデンス、姿勢、ダンシング/シッティングにより、ペダルへの力や位置は変化します。どんな力のかかり方でも、最も効果的なパワー伝達できるペダルが作られてきました。それだけではなく、フローティング機能と呼ばれる広い自由度を持ち合わせています。シューズ角度やクリート位置の自由度を確保することで、一点に固定されることなく浮いているように自由に動くことを実現してきました。
他メーカーのペダルにもいいものが多いのですが、ここまでユーザー視点の使いやすいペダルはなかなかないと思います。
身体を機材に合わせるのではない、機材を身体に合わせたのだ
と掲げるTIMEのペダルは、他メーカーとは一線を画しています。
どんなグレードがあるの?
35年ほどの歴史の中でラインナップも移り変わってきました。現在取り扱いがあるのはこの2種類です。
●XPRO(エクスプロ)
●XPRESSO(エクスプレッソ)
XPROシリーズが上位モデルとなります。また各シリーズの中にもグレードがあり、
XPRO:15,12,10
XPRESSO:7,5,2
と数字が大きい方が、上位モデルになります。
XPROとXPRESSOの違いは大きく2つです。
XPROは踏み面が広い
XPRESSOと比較すると、踏み面700→725mm2(平方ミリメートル)と約3.7%アップしています。
ダンシングなど不安定な踏み方でも広く受け止めてくれるようになりました。
XPROのエアロカバー
XPROには、ペダル裏面にエアロカバーがついています。
整流効果を生み、空気抵抗削減に貢献していると思われます。またカバーがつくことで、カーボン製の板バネの保護の役割も兼ねています。
他にもXPROのほうが重量が軽い、シャフトやベアリングの素材が違うなどの差もあります。それらは後ほど説明しますね。
実際に使ってみて、ここがイイ!
ここからは実際に使ってみた感想をもとに、TIMEペダルの長所を紹介していきましょう!各グレードごとの感想は後述するので、まずは全体的に「TIMEペダルってどんなイイトコロがあるの?」って話をしますね。
踏みやすいフローティング機構
足首の角度を決めるフローティング角度が、±5°と大きく設定されています。(わかりやすいように、写真では±10°で動いてます)
しかし、その回転の軸となる場所が、ひと工夫されています。
つま先ではなく、ペダル中央を軸に回転するということです。足の角度が変化しても、常に母指球で踏める、というイメージです。
もしつま先が動いてしまうのなら、母指球で踏むペダル位置がズレ続けてしまうことになります。「角度が変わっても、スイートスポットの位置はに変わらない」とい安心感は何にも代えがたいと感じました。
最高のメリット、センタリング機能
「可動域が広く、母指球を中心に回転する」この旨味をさらに押し上げる機能が、備わっていました。
それがセンタリング機能です。TIME独自の機構であり、最大の特長です。
足の角度が変わっても、バネにより元の位置に戻そうとする力が働きます。
ダンシングで足の角度が変わっても、理想位置までスムーズに戻してくれます。角度をウネウネと変えながら、クイっと戻してくれる感覚です。
ただしセンタリング機能という名の通り、「センター」に戻ってきてしまうため、理想位置は1点だけになってしまいます。走行中に足の角度を変えて、理想位置に足の位置を合わせられないので、事前にシビアな位置合わせが必要です。
つま先側が上に向くので、キャッチしやすい
クリートキャッチと呼ばれる動作が楽です。
停車から走り出す際に、クリートでペダルをキャッチする動作です。TIMEペダルは自然につま先側が上に向くため、「シューズのつま先で、キャッチ面を起こす」動作が不要になります。
またクリート先が開いているので、クリートを引っかけやすいという機構も優れています。走り出しモタつくことがなくなるので、ストレス軽減にもなります。
力要らずのクリップイン/クリップアウト
言い過ぎかもしれませんが、クリートを「はめる」「外す」動作に力が要りません。
「ペダルに足を添える」だけでクリップイン*が決まります。
*クリップイン:ペダルにクリートをはめる動作。対義語のクリップアウトは、外す動作のこと。
ポンと足を置くだけで、カチッとハマります。この動きを実現するのが、TIMEオリジナルのICLIC(アイクリック)です。
動画で見た方が分かりやすいですが、板バネを抑えるつっかい棒が働き、軽い力での着脱が可能となっています。クリートをはめる/外す動作は膝にも負担になるので、ユーザーに優しい設計になっているのはなんともありがたいことです。
ただしその反面で、カチッと奥まで入れらず、「半ハマり」することもまれにあります。半ハマりでも走れるので、なんか違和感があるという程度ですが。
逆にステップアウトも容易です。ちょっとかかとを外側に向けるだけで、パチッと心地いい音で軽やかに外れます。
スタックハイトが低く、フィーリングが気持ちいい
シューズ底面からペダルシャフト軸までの距離を、スタックハイトと呼びます。
このスタックハイトが13.5mmと格段に短い設定になっているので、ペダルへのフィーリングを気持ちよく感じます。
「自分の手足のように、自転車を扱える」感覚が増します。足裏からペダルまでのロスが少なく、踏んだ際のダイレクトなフィーリングは思った以上に気持ちいいものでした。
それでいて嫌味が振動が足に伝わってこないのが、とても不思議でした。路面のギャップが伝わりにくく、滑るように走れるフィーリングです。一体どんな技術が隠されているんでしょうか…。
ちょっと気になる一面も
ここまでイイトコロばかり挙げてきましたが、使ってきて気になる一面も、やはりありました。
位置合わせがシビア
踏み心地がいいスイートスポットは1点のみです。
少しでも足に角度をつけてしまうと、センタリング機能で元の角度に戻ってくるためです。自分が踏みやすいと思う足の位置がどこなのかを知ったうえで、ペダルとの位置関係を確認しながら調整していくしかありません。筆者は15回ほど調整してようやくピッタリ合わせられるほど手間がかかる作業でした。
またQファクターが2通り設定できるのもTIMEの特長です。
ここでいうQファクターとは、上記の画像のようにクランク取り付け部分からペダルのセンターまでの距離です。
標準的な骨格の筆者はとくに問題に感じませんでした。
エアロカバーって必要?
これはエアロカバーがあるXPROシリーズの話ですが、エアロカバーの効果を感じ取れませんでした。
キャッチ面にうまく足を乗せられず、裏面に足を乗せてしまうと滑ってしまいます。滑り止めもないので、足を滑らせてしまうリスクがあります。
XPRESSOなら裏面が肉抜きされており、凹凸がしっかり出ているので、なんとか足が乗せられる、といった状態です。それでもペダリングがしにくいですが。
ただ「このカバーがカッコいいのでヨシ!」と個人的には思ってしまいます。
値段と性能って釣り合っている?
「高いのに性能イマイチだ…」という意味ではありません。「廉価版でも高性能すぎないか?」と感じてしまいます。
高価なXPRO12の性能が高いことはもちろんですが、廉価版のXPRESSO2の性能も低くないと感じました。
素材の違いにより、軽量化を図っているのがXPROシリーズの良いところです。
代表製品の重量と価格をピックアップしました。
グレード | 重量(g) | 価格(税込) |
XPRO12 | 94 | 40,700 |
XPRESSO7 | 99 | 17,600 |
XPRESSO2 | 115 | 8,800 |
*重量は片側ペダルの表示です。
21g差で価格が31,900円も差が出ています。極論ですが、1gの軽量化に約1,500円もかかります。
軽量化にそれほどの効果があればいいのですが…しかし使ってみるとこの軽量化の良さが実感できませんでした。そもそも足元の21gの軽さは、実感できませんでした。試しに靴下を量ってみても25gでしたから、靴下一枚より軽い軽量化になります。なかなか感じ取ることができませんでした。
軽さだけがコストアップの理由ではないのでしょうが、ほかに大きな差もないのでこの価格差を不思議に思ってしまいます。
「ほんとうに値段と性能って釣り合い取れていますか…?」と疑問に思ってしまいます。
XPROセカンドグレードのXPRO12
ここからは各モデルの詳細を見ていきましょう。まずは外観から。
黒ベースの箱に、TIMEロゴの形状にスリットが入っています。
パッケージの中身
・ペダル
・クリートセット(非固定クリート)
・説明書(日本語)
クリートセットの中身は、
・クリート2個
・M5ネジ6本
・長方形ワッシャー2枚
・カーブ補正用シム2枚*
*カーブ補正用シム:シューズ底面のカーブにクリートが追従できるように噛ませるシム
XPEO12ペダル本体。
ボディ:カーボン
シャフト:チタン
ベアリング:スチール
クリート:ICLIC
踏み面:725mm2
クリート:ICLIC
スタックハイト:13.5mm
フリート角度:±5°(フリーフットクリート)、0°(固定フットフリート)
ディスタンスペダルスピンドル/クランクアーム:53mm
横方向の自由:フリーフットクリートで2.5mm、固定フットクリートで0
リリース角度:フリーフットクリートで2.5mm、固定フットクリートで0
テンション:3段階調整可
重量:94g(実測95g)
全方位の外観はこちらです。
上面
底面
内側面
外側面
つま先側
かかと側
マットブラックを基調に差し色の赤が施されたデザインです。本体は樹脂メインで部分的に金属が使われています。見た目のゴツさの割りに、手で持つと軽く感じます。
公称94gのところ、実測95gでした。+1gなら誤差範囲でしょう。
エアロカバーがついているのも関わらず100gを切っているのには驚きです。ただし、チタンシャフトを使用しているため体重が90㎏以下のライダーに制限されています。
走ってみたフィーリングとしては、「ダンシング(立ち漕ぎ)が気持ちいい」が一番に挙げられます。
やはり一番効いているのが「センタリング機能」です。
ダンシングではバイクを左右に振りながら走るので、足の角度も常に変化し続けます。動いた足をスムーズに戻してくれるセンタリング機能が働き、意識せずともスイートスポットが踏めます。
またフローティング角度が±5°と広いので、足や膝に負担がかかりにくいこと、踏み面が725mm2と広く踏みやすいこと、スタックハイトが13.5mmでダイレクト感が増していること、など様々な要因が気持ちいい走りを実現してくれます。
個人的には、赤黒のデザインもカッコよくて好きです。筆者のバイクカラーにもよく似合います。
しかし、惜しいと思うのは、「価格」「傷が入りやすいこと」です。
先にも書きましたが、ペダル1セットで40,000円越えはなかなか手が出しにくいです。性能がいいので価格が高くなるのでしょうが、なかなかホビーライダーには買える値段ではないなと思います。
また樹脂製なので傷が入りやすいことも気になってしまいます。
こればかりは軽量化との二律背反で樹脂になっているで、どうしようもないことですが。
高性能なペダルが欲しい方にはきっと満足できるペダルではないでしょうか。
TIME XPRO12 ロードペダル
材質 | カーボンボディ/チタンシャフト ベアリング |
---|---|
ベアリング | スチールベアリング |
参考重量 | 94g(片側) |
XPRESSOトップグレードのXPRESSO7
ボディ:カーボン
ベアリング:スチール
シャフト:スチール
踏み面:700mm2
重量:99g(実測102g)
*XPRO12と異なる点を青字で表記しています。
同封されいるモノはXPRO12と同様で、クリートセットと説明書です。
フランス国旗のトリコロールがデザインされています。さすがメイド・イン・フランス。おしゃれですね。
XPROと比べると、肉抜きが多くスタイリッシュな印象を受けます。
横から見ると、TIMEの文字が目立ちます。
XPROと違う点は、踏み面が700mm2と少し小さいこと、エアロカバーがないこと、シャフトがスチールなので体重制限がないことでしょうか。
フィーリングとしてはほとんどXPRO12と同じでした。挙げるとすれば、クリップインの音ぐらいでしょうか。バチンと大きく鳴るXPRO12に対して、XPRESSO7はパチッと上品な音のような気がします。超長距離で走ってみれば違いが分かるかもしれませんが。
それに残念ですが、筆者は5g分の重量差を感じられませんでした。
スタイリッシュなデザインのペダルが欲しい人には、XPRESSO7はオススメできます。
TIME XPRESSO7 ロードペダル
材質 | カーボンボディ/スチールシャフト |
---|---|
ベアリング | スチールベアリング |
参考重量 | 99g(片側) |
最安価のXPRESSO2
ボディ:コンポジット
ベアリング:スチール
シャフト:スチール
踏み面:700mm2
重量:115g(実測113g)
*XPRO12と異なる点を青字で表記しています。
個人的に一番驚いたペダルでした。「廉価版にも惜しげなく技術をつぎ込んでいる!」と強く感じました。XPRO12との違いを探るために、様々なシチュエーションで乗りましたが、フィーリング面では大きな遜色がありませんでした。
カラーリングが真っ黒です。
唯一カラーが入っているのが、板バネ部分です。
撮影:筆者
またTIMEという文字は刻まれておらず、裏面にロゴだけ記されています。
極端なまでのシンプルさです。どんなバイクにも似合うペダルとも言えますね。
個体差かもしれませんが、摩擦による微妙な違和感がありました。
クリートとペダルの間の摩擦が大きく、センタリング機能がやや効きにくい場面がありました。ペダル上面に金属が入ってなく樹脂が剝き出しが故に、起きる現象なのでしょうか。
またクリップインの音はほとんど無音でした。個人的には、XPRESSO7の音が好きだなと感じました。
TIME XPRESSO2 ロードペダル
材質 | コンポジットボディ/スチールシャフト |
---|---|
ベアリング | スチールベアリング |
参考重量 | 115g(片側) |
パワーロスしにくい固定クリート
XPRESSO – ICLIC FIXED CLEATS
通常のICLICクリートは足の角度が±5°で動きますが、それとは別に角度0°の「固定クリート」があります。
足を動かす遊びがないので、パワーをかけて走ることに向いています。無駄がないのでしっかり踏める印象でした。パワーが必要なヒルクライムなどにはいいかもしれませんが、ロングライドでは膝へ大きな負荷をかけてしまうかもしれません。
またTIMEの強みであるセンタリング機能も働くなってしまうので要注意です。
(左)固定クリート、(右)通常クリート
遊びをなくすため、部分的に盛られている箇所があります。それでも重量は、通常クリートの+1gなのでほとんど差がないでしょう。
革新的ペダル、TIME
機能に優れたTIMEのロードペダル。
様々な特長がある中、やはり一番うれしい機能がセンタリング機能です。TIMEが目指す「機材を身体に合わせる」という思いをカタチにした機能です。
ライダーが理想とするペダリングから逆算して、開発が進められてきたことを感じました。
「一点に固定されることなく浮いているように自由に動くこと」
購入する場合には、まず廉価版のXPRESSO2を購入するのがいいと思います。機能的に上位モデルと大きな遜色もなく、使いやすいペダルです。税込8,800円の中に3,080円の非固定クリートも入っているので、かなりお得です。
「ほんの僅かでも軽量化したい」「せっかくのTIMEブランドだから、いいモノを使いたい」という方には、XPRO12やXPRESSO7が向いているかなといったイメージです。やはり価格が高いグレードは、作り込みがしっかりされています。ハードなライドでがつがつ使いたいのなら、上位モデルを購入するのもいいでしょう。
気になる方は、国内代理店ポディウムのサイトをチェックしてみてくださいね!
TIMEブランドの取り扱いがある店は、以下のリンクから検索ができます。こちらもぜひチェックしてみてください。