世界遺産「飛鳥・藤原の宮都」を自転車で!11の史跡をのんびり巡ってきた

今年7月に世界遺産への登録を果たした、奈良県の「飛鳥・藤原の宮都」。

「大化の改新」の舞台や、あの「石舞台古墳」など、歴史の授業で一度は耳にしたキーワードが次々と飛び出してくるエリアです。

ただこの一帯、歩いて回るにはちょっと広すぎるし、車だと細い路地や駐車場探しに気を使う……。となれば、気持ちよく回れるのは断然「自転車」なんです!

というわけで今回は、全19ある構成資産の中から主要な11か所をピックアップして、丸1日かけてのんびり巡ってきました!

目次

記事内画像撮影:筆者

世界遺産「飛鳥・藤原の宮都」とは?

ルート紹介に入る前に、まずはエリアの全体像や、そしてなぜ自転車で巡るのが最適なのかなど、知っておきたい基本情報をサクッと整理しておきます。

舞台は明日香村・橿原市・桜井市

高台から見下ろした牽牛子塚古墳と明日香村の田園風景

「飛鳥・藤原の宮都」が広がるのは、奈良県の中南部に位置するエリアです。明日香村・橿原市・桜井市にまたがり、計19か所の古墳や宮殿、お寺の跡が点在しています。

内訳は橿原市に3か所、桜井市に1か所、市村境にまたがる大官大寺跡が1か所。残る14か所はすべて明日香村にあり、見どころの大半がひとつの村に集中しているのが特徴です。

日本国家はじまりの地と言われるエリア

白壁や瓦屋根の伝統家屋が並ぶ明日香村の街並み

聖徳太子をはじめ、大化の改新を繰り広げた中大兄皇子と蘇我入鹿、国家の礎を築いた天武・持統天皇——。教科書でおなじみの偉人たちが歴史を動かした舞台が、ここ「飛鳥・藤原」エリアです。

日本最古の本格的寺院や、碁盤の目状に造営された日本初の都が置かれたほか、「日本」という国号が誕生したのもこの地とされています。まさに“日本の原点”と呼ぶにふさわしい場所です。

巡るなら、断然「自転車」がおすすめ!

稲田の間の道に停めた自転車と山並みの景色

史跡がエリア一帯に点在している飛鳥・藤原。歩いて回るには少し距離があり、車だと細い路地や駐車場探しに気を遣います。

その点、自転車なら主要なスポットを1日で無理なく巡れる、ちょうどいい距離感です。

道路には自転車用の通行帯が整備され、駅前のレンタサイクルはもちろん、ほとんどのスポットに駐輪場やサイクルラックが用意されているなど、受け入れ環境もしっかり整っています。

今回のルート

「飛鳥・藤原の宮都」は、全部で19か所のスポットがあります。ただ、写真を撮ったりじっくり見学したりしたい筆者のペースだと、1日で全部回るのはちょっとハードです。

そこで今回は、走りやすい動線と外せない主要スポットを基準に、11か所をセレクト(途中で気になった場所にも寄り道しています)。

走行距離は約30kmですが、なんだかんだで約9時間かかりました(笑)。とはいえこれは、かなりマイペースに回った筆者の場合。見学にそこまで時間をかけずテキパキ回れる人なら、1日で19か所すべて制覇するのもいけると思います。

実際に巡った順番

飛鳥駅(スタート) → 牽牛子塚古墳★ → キトラ古墳★ → 高松塚古墳★ → 天武・持統天皇陵★ → 亀石 → 橘寺跡★ → 石舞台古墳★ → 飛鳥宮跡★ → 酒船石★ → 飛鳥寺★ → 蘇我入鹿の首塚 → 飛鳥資料館 → 飛鳥水落遺跡★ → 甘樫丘 → 藤原宮跡★ → 飛鳥駅(ゴール)
★=世界遺産の構成資産

実際に走ってみた!

それでは、実際に走っていきましょう!

飛鳥駅を出発!まずは古代の壁画と古墳群へ

近鉄飛鳥駅の駅舎正面と階段

朝8時半、飛鳥駅を出発。まずは駅の西側にある「牽牛子塚(けんごしづか)古墳」へ向かいます!

牽牛子塚古墳へ続く芝生の土手の階段

走り出して5分ほど、あっという間に到着。

自転車を駐輪場に停めて、てくてく階段を登っていきます。

石段状に復元された牽牛子塚古墳の八角形墳丘

階段を登りきると、目の前に現れたのがこちら。

なんじゃこの古墳!? まるでピラミッドか現代アートのような白亜の姿です。

なんでもここ、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)の母・斉明天皇のお墓と見られている古墳とのこと。天皇クラスにしか許されない八角形の墳丘が忠実に復元されています。

木々に囲まれた芝生の丸い古墳と前に立つ石碑(キトラ古墳)

牽牛子塚古墳を後にして、自転車で南へ走ること数分。お次は「キトラ古墳」です。

先ほどのピラミッドとは打って変わって、いかにも「THE・古墳」な緑の山。

にもかかわらず世界遺産の一つとして選ばれているのは、石室の中から国宝に指定されている四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)の壁画や、世界最古級の天文図が見つかったためです。

キトラ古墳壁画体験館内、天井に星座を描いた天文図の展示

そして、古墳のすぐ近くには、資料館「四神の館」が併設されています。ありがたいことに入場は無料。展示室に入ると、天井いっぱいに広がる天文図や大画面モニターなど、無料とは思えない充実っぷりです。

……が、てっきり見られるものだと思っていた壁画は、まさかの展示準備中でお目にかかれず(笑)。

あとで知ったのですが、実物は常設ではなく年4回の期間限定公開(しかも基本は事前予約制)とのこと。そのため本物をおがみたい方は、事前に公式サイトでスケジュールをチェックしておくのが吉ですね。

赤い自転車専用レーンが続く田園地帯の道路

キトラ古墳を出て、次は「高松塚古墳」へ。明日香村らしい、のどかな田んぼと日本家屋が並ぶ景色の中を抜けていきます。

案内板の前で見学する観光客と芝生の円墳(高松塚古墳)

10分ほど走って高松塚古墳に到着しました!

こちらもキトラと同じく、綺麗な芝生に覆われた円墳です。

教科書でおなじみ「飛鳥美人(西壁女子群像)」が見つかった、言わずと知れた超有名スポット。

ガラスケースに展示された極彩色壁画の精密な模写

古墳のすぐ隣にある「高松塚壁画館」にも入ってみました(入館料は大人300円)。館内には発見当時の姿を再現した精密な模写が並んでいます。

それにしても、「1300年も前の日本人がこんな絵を書いてたんだな〜」と思うとめちゃくちゃロマンを感じますね。

石段と鳥居を構えた天武・持統天皇陵の入り口

続いてやってきたのは「天武・持統天皇陵」。これまでの芝生の山とは雰囲気が変わり、立派な石段と鳥居が構える宮内庁管理の厳かな佇まいです。

和歌が刻まれた木製の案内板

看板にある通り、ここは天武天皇とその妻・持統天皇が一緒に眠るお墓。

天武天皇は「日本」という国号や律令国家の土台を築き、持統天皇はその遺志を継いで藤原京を完成させた女帝です。いわば、日本の骨格を作った夫婦が合葬されている場所。

歴史の教科書でおなじみのビッグネームが2人並んでここに眠っていると思うと、さすがに立ち寄らずにはいられませんでした。

明日香村の中心部へ!巨石と古代寺院をめぐる

ん? 走っていると何やら特徴的な巨石を発見。

亀石のそばに停めたオレンジ色のツーリング自転車

これはどうやら、飛鳥の有名スポットのひとつ「亀石」みたいです。

顔のような模様が彫られた亀石のクローズアップ

誰が何の目的で作ったのかは、現代でも分かっていない謎の石造物。

のんびりした顔をしていますが、「昔は北、いまは南西を向いているこの亀が、西を向いたときは大和盆地が泥の海に沈む」という、見た目に反して物騒な言い伝えが残っています。

ちなみに、この日のライド中に道端で遭遇した本物の亀はこちら。

砂利道にいた本物の亀

う〜ん、似てるような似てないような!?笑

赤い看板と自転車が置かれた食事処の店先
チキン南蛮定食の盛り付け

ちょうどお昼時なので、亀石から目と鼻の先にある「おもろ屋 たちばな」さんで昼食をとります。

たまたま入ったお店だったんですが、これが大当たりでした。お世辞抜きで、今まで食べたチキン南蛮定食のなかで一番美味しかったです。

緑の田んぼの向こうに見える橘寺の本堂

昼食を終えて、すぐ近くにある「橘寺」へ。 のどかな田んぼの向こうに大きな瓦屋根が見えてきました。

ここは「聖徳太子が生まれた場所」として知られるお寺です。

黒駒の像が立つ橘寺本堂前

本堂の前にポツンと立つ馬の像。これは聖徳太子の愛馬「黒駒(くろこま)」で、太子を乗せて空を飛び、富士山まで行ったというぶっ飛んだ伝説が残っています。

巨石が積み重なった石舞台古墳の外観

ついにやってきました、明日香村のシンボルともいえる「石舞台古墳」!

時の権力者・蘇我馬子(そがのうまこ)の墓と見られている場所です。もともと覆っていた土が剥がれ落ちて、巨大な石室だけがむき出しになっています。

石舞台古墳内部、巨大な石でできた石室

ちなみにこの石舞台古墳、中にも入れます。重機もない時代に、どうやってこんなデカい石を運んで積み上げたんですかねえ。不思議だ。

伝統的な家屋が並ぶ明日香村の路地

石舞台古墳を後にして、昔ながらの家屋が並ぶ趣ある路地を抜けていきます。

芝生の中に復元された飛鳥宮跡の石敷き遺構

その先に広がるのが「飛鳥宮跡」。

7世紀、歴代の天皇が宮殿を置いた、古代日本の政治の中心地です。大化の改新のきっかけとなった「乙巳の変」で、中大兄皇子らが蘇我入鹿(そがのいるか)を討ったのもこの場所。

写真の石敷きは、発掘された遺構をもとに天武・持統天皇の時代の宮殿(飛鳥浄御原宮)の姿を復元したものです。

竹林の中にある酒船石、幾何学模様の溝が彫られた巨石

そこから少し移動して、竹林の小道を登った先にある「酒船石」へ。

平らな巨石の表面に、幾何学的な溝とくぼみが彫られた不思議な石造物です。ちょっとしたオーパーツっぽさを感じます。お酒を造ったとも薬を作ったとも言われていますが、結局何のために作られたのかは今も分かっていません。

飛鳥寺の山門

日本最古の本格的な仏教寺院とされる「飛鳥寺」。

建立したのは蘇我馬子です。現在の境内は落ち着いた佇まいですが、当時は巨大な伽藍が立ち並ぶ大寺院だったのだそう。

飛鳥大仏を安置した堂内

本堂に鎮座するのは、同じく日本最古の仏像といわれる「飛鳥大仏」。これ、1400年以上ほぼ同じ位置に座り続けているらしいですよ? すごくないですか?

田んぼの中に立つ入鹿の首塚の石塔

そして寺のすぐ裏手、のどかな田んぼの中にぽつんと立つ五輪塔。これは「蘇我入鹿の首塚」です。

先ほどの飛鳥宮跡で討たれた入鹿の首が、ここまで飛んできたというなかなかにホラーな伝説が残っています。

  • ※ちょっと整理:ややこしい蘇我氏の2人
  • ・蘇我馬子(おじいちゃん): 仏教を広めて飛鳥寺を建てた権力者。石舞台古墳に眠るとされる人。
  • ・蘇我入鹿(孫):権力を集中させすぎて反感を買い、大化の改新(乙巳の変)で暗殺された人。

飛鳥を一望、そして広大な藤原京を経てゴールへ!

飛鳥資料館の建物と敷地内の石造物

今回の自転車旅もいよいよ終盤。ここで、飛鳥の歴史をざっくり学べる「飛鳥資料館」(入館料350円)に立ち寄ります。

展示パネルが並ぶ飛鳥資料館の館内

これまでの復習とこれからの予習を兼ねて、頭の中を一旦整理。当時の時代背景が頭に入っているだけで史跡を見る解像度が上がるので、時間に余裕があれば立ち寄っておきたいスポットですね!

自転車を停めた飛鳥資料館の屋外展示エリア

道沿いに丸太の杭が規則正しく並んだ、何やら不思議な広場が現れました。「飛鳥水落遺跡(あすかみずおちいせき)」と呼ばれる場所です。

規則正しく並んだ木の杭(飛鳥水落遺跡)

何かの儀式跡のようにも見えますが、実は中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)が造らせたとされる日本初の水時計の跡。水が落ちる量で時間を計り、鐘や太鼓で時刻を知らせていたのだそう。

甘樫丘のふもとにある休憩施設の建物

続いてやってきたのは「甘樫丘(あまかしのおか)」。 ここに飛鳥を一望できる展望台があるということで、自転車を停めて少し歩いて登っていきます。

甘樫丘展望台から見下ろす明日香村の田園風景

登った先にある展望台からの景色がこちら。さっきまで走っていた集落や田んぼを一望できて、めちゃくちゃ気持ちがいいです!

歩いて登るのはちょっとしんどいけど、この景色は一見の価値アリでしょう。

赤い柱が並ぶ藤原宮跡に停めた自転車

そしてついに、最後のスポット「藤原宮跡」に到着〜。「何もない」とは聞いていたものの、まさかここまでとは思いませんでした(笑)。だだっ広い原っぱに、赤い柱がポツポツと立っているだけです。

曇り空の下、赤い柱が並ぶ藤原宮跡の広大な原っぱ
赤い柱は、発掘で見つかった跡をもとに、当時の宮殿の柱の位置を示したもの

でも実はここ、日本初の本格的な都「藤原京」の中枢があった場所。完成させたのは、記事の前半で立ち寄った天皇陵に眠る持統天皇です。

そんな古代の都も、今ではすっかり地元の方の憩いの場に。散歩をしたり、ベンチでのんびりくつろいだりする人の姿がたくさん見られました。

ゴール地点の駅前に停めた自転車

夕暮れの道をのんびり走って、スタート地点の飛鳥駅まで戻ってきました!

朝8時半に出発して、時計を見ればちょうど17時半。寄り道や見学を挟みながら、たっぷり9時間かけて飛鳥の史跡を巡ったことになります。いや〜、見どころ満載の楽しい1日でした。

実際に走ってわかったポイント

実際に自転車で走ってみて気づいたことや、事前に知っておくと安心なポイントをいくつかまとめました!

距離の割に、思った以上に時間がかかる

今回の走行距離自体は30km程度と、自転車乗りからするとかなり短めです。ただ、史跡や資料館をじっくり見学していると、あっという間に時間が溶けていきます。

もちろん回るスポット数にもよりますが、今回のようにそれなりにスポットを詰め込むなら、丸一日(朝から夕方まで)たっぷり余裕を見ておくのがおすすめです。

自転車を降りて「歩く」場面がかなり多い

丘の斜面に続く階段と自転車置き場

古墳の敷地やお寺の境内、資料館の中など、自転車を降りて歩く場面が想像以上にたくさんあります。

ロード用のビンディングシューズだと歩くのに苦労しそうなので、歩きやすいSPDシューズか、フラットペダルにスニーカーなどの組み合わせのほうがストレスなく回れそうです。

コンビニは少なめ。ランチや補給の場所は事前にチェックを

のどかな田園地帯ということもあり、コンビニは数えるほどしかありません。

カフェや飲食店は点在しているものの、個人店が中心で席数が少なかったり、曜日や時間帯によってはお休みだったりすることも。お昼時になってから探し始めると、どこにも入れずランチ難民になってしまうかもしれません。

補給のタイミングやランチの場所は、事前にいくつか目星をつけておくと安心です。

施設ごとに開館・閉館時間がバラバラ

木々に囲まれた飲食店の建物

資料館や壁画館、有料エリアのある史跡は、それぞれ開館時間や休館日が異なります。たとえばキトラ古墳の「四神の館」は9:30開館、「飛鳥資料館」は月曜休館(祝日の場合は翌平日)で入館は16時まで。朝イチや夕方に訪れると、閉まっていて入れないこともあります。

一方、屋外の古墳や遺跡の多くは時間を気にせず見学できます。早朝や夕方は屋外スポットに充てるなど、事前に開館時間をチェックして回る順番を組み立てておくのがおすすめです。

アクセス・駐車場・レンタサイクル情報

最後に、実際に訪れるときに役立つ情報をまとめておきます!

電車でのアクセス

輪行でアクセスする場合、スタート地点は近鉄吉野線の飛鳥駅です。

大阪阿部野橋駅からは吉野方面行きの急行で乗り換えなしの約45分、京都方面からは近鉄京都駅から特急で橿原神宮前駅まで向かい、乗り換えて約1時間10分でアクセスできます。

車で行く場合の駐車場

明日香村には、いわゆるタイムズのようなコインパーキングがありません。車で来て自転車で回る場合は、村内の有料駐車場(普通車1回500円)を利用しましょう。

なお、世界遺産登録を受けて、一部の駐車場では予約制の導入や一時閉鎖も始まっています。駐車場の一覧と最新情報は、明日香村観光サイト「あすか時間」で事前にチェックしてください。

レンタサイクル

明日香レンタサイクルの店舗と駐輪スペース

飛鳥駅前には3つのレンタサイクル店があります。

なかでも明日香レンタサイクルは、飛鳥駅前のほか橿原神宮前駅や石舞台などにも営業所があり、借りた場所と別の営業所に返却する「乗り捨て」が可能(1台200円)。帰りは橿原神宮前駅から電車に乗りたい、という人などにぴったりです。

まとめ

田園地帯の道を走る2人のサイクリスト

というわけで、今回は世界遺産に登録されたばかりの「飛鳥・藤原の宮都」を自転車で巡るルートをご紹介しました。

いや〜、それにしても明日香村周辺のこのエリア、歴史的なスポットが凝縮しすぎです。日本中探しても、こんなところそうそうないでしょう。それに加えて、道中も美しい田園風景が広がっているので、走っていて本当に気持ちがいい。

週末のゆるポタ先を探しているなら、間違いなくおすすめのエリアですよ!

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