【千葉】ローカル線沿いの”異世界”な自転車旅|素掘りトンネルを巡る房総ライド

【千葉】ローカル線沿いの”異世界”な自転車旅|素掘りトンネルを巡る房総ライド

都内から車で約2時間。のどかな丘陵地帯が広がる千葉・房総エリアはサイクリストにとっても絶好の遊び場です。房総といえば海沿いを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、実はここ、知る人ぞ知る「素掘りトンネル」のメッカ。

今回は小湊鐵道の上総中野駅をスタートし、個性豊かな素掘りトンネルやワイルドな林道を駆け抜け飯給駅へ。そこには都会の喧噪を忘れさせる、大自然と歴史の息吹を感じる冒険ルートが伸びていました。

目次

【今回のルート】上総中野駅〜飯給駅の素掘りトンネルを巡る

「気軽に週末、自転車に乗りたい。せっかくなら遠くへ来た感覚を味わえる不思議なフィールドはないだろうか」そんなときに思い浮かんだのが、千葉県・房総半島。房総といえば海のイメージが強いかもしれませんが、実は内陸部の里山も趣深いんです。

今回のルートは房総内陸を縫うように走る約20㎞のコース。

ローカル線としても人気の小湊鐵道といすみ鉄道が接続する上総中野駅を起点に北上し、小湊鐵道・飯給(いたぶ)駅を目指しつつ、周辺の素掘りトンネルを巡ります。

距離 20km
獲得標高 430m
目安時間 3h
レベル
★★☆☆☆

総距離およそ20km間に素掘りのトンネルがおよそ5つほど点在。

20㎞ならサイクリストにとって朝飯前の距離感ではありますが、房総半島の内陸部はほぼアップダウンのみ。加えてトンネルへ向かうには旧道や林道を多く通過するため、舗装路であってもワイルドなコンディションなのが想定されます。

素掘りトンネルって何?

そもそも素掘りのトンネルとは一体なんなのでしょうか。

まず「素掘り」という言葉は、地面を掘る際に周囲の土の崩落を防ぐ工事を行わないで、そのまま掘り進めることを指します。

房総半島には、昔ながらの素掘り工法で作られたトンネルが今日も多く残されているのです。

撮影:筆者

房総半島に点在している理由は諸説あるものの、ひとつには房総の地層は比較的柔らかく、掘っても崩れにくい性質のため、多くのトンネルが掘られたという説があります。

高い山はなくとも広範囲に低山が広がる房総は、物資や人々の行き来に一苦労でした。そこで作られたのがこの素掘りトンネルではないかと考察されています。

5月の晴れた日に小径車で実走

撮影:筆者

上総中野駅をスタートした筆者。今回は車を駅に停めて走るスタイルにしましたが、公共交通機関でもアクセスは可能です。

ただローカル線ということから本数はかなり限られていますので、輪行で訪れる際には綿密な下調べが欠かせません。

川廻し技術で生まれた「遠見の滝」

駅から走り出すこと数分、とあるスポットに到着します。

それは「山の駅 養老渓谷 喜楽里」敷地内にある「遠見の滝」。これは人工に作られた滝で、かつて新田開発のために川の流れを変えるため掘られたトンネルといわれています。

撮影:筆者

滝自体は小規模ですが、重機を使わずにこのトンネルを掘ったのかと想像すると、かつての人々の切実な思いが伝わってくるようです。

ここから先はコンビニ・商店・自販機はほぼありませんので、遠見の滝を眺めた後は「山の駅 養老渓谷 喜楽里」で必要な食料や水を買い足しておくことをおすすめします。

吸い込まれるような異世界感「清水代隧道」

さてここからが実際に走れる素掘りトンネルが点在するエリア。

最初に通過するのは房総素掘りトンネル群の中でも有名な「向山・共栄トンネル」です。ここは二階建ての独創的な大型トンネルですが、かなり観光客も多くなおかつ車の往来もあるため、今回はサッと通過するだけに。空いている日であれば、上から自然光が降り注ぐ幻想的な風景に足を止めてみてください。

向山・共栄トンネル
出典:PIXTA(取材日は往来が多く撮影が困難…)

向山・共栄トンネルを抜けて、しばしの上りに奮闘していると、道はいつしか幅狭の林道へ。突如右手に現れるのが、異様な存在感の「清水代隧道」です。

撮影:筆者

驚くほど幅は狭く、なおかつライト等もなし。まさに掘っただけのトンネルです。

ツルハシなどの道具で掘ったあとも残っており、思わず足を止めてしまいます。地図を見る限り、トンネルを抜けた後はしばらく林道が続くようですが、いずれ行き止まりになるためここでUターンします。

通行止めに注意!「月崎トンネル」は断念

向山・共栄トンネルを抜けた先まで戻り、県道に沿って北上します。

目と鼻の先に養老渓谷エリアがあるため、しばしノスタルジックな温泉街の雰囲気を楽しむことも。その後は小湊鐵道と併走するようにアップダウンを繰り返し、月崎駅へ。

撮影:筆者

本来ならば月崎トンネル群へ訪れる予定でしたが、林道月崎1号線は道路幅員が狭いことから関係者車両以外の通行が禁止に。現在、徒歩での通行のみ許可されているとのことでした。(※2026年5月現在)

時間に余裕のある人は、「いちはらクオードの森駐車場」に駐輪、もしくは押し歩きをしてトンネルまでアクセスすると良いでしょう。

このように、状況によって道路状況がリアルタイムで変わるのも林道の特徴です。訪問の際には事前の情報収集も欠かさずに。

撮影:筆者

将棋の駒のような「永昌寺トンネル」

月崎駅を通過してすぐ、県道沿い左手に素掘りトンネルが現れます。

これが次の目的地「永昌寺トンネル」です。将棋の駒のような五角形をしているのが特徴で、これは日本古来の観音掘りという堀り方なのだとか。

撮影:筆者

トンネル内には外灯もあり、比較的明るい印象です。ただ道は舗装路かダートなのか見分けがつかないほどの状態なので、走行する際にはお気を付けて。

ワープしそう!? 「柿木台第二トンネル」に吸い込まれる

永昌寺トンネルを通過し、道なりに進むと「柿木台第二トンネル」が姿を現します。

ひと言でいうなら「これはワームホール!?」

撮影:筆者

先ほどの永昌寺トンネルが明るくこぢんまりとした印象だっただけに、柿木台第二トンネルの大きさ、そして美しい曲線を描く独自の形状に圧巻でした。

入口から出口にかけて緩やかに下っているものの、鬱蒼とした林道であり外灯もないため斜度を認識できず、自然と加速していく車輪にドキッとしてしまったほど。まるで吸い込まれるような感覚を味わえる、筆者いちおしのトンネルとなりました。

「柿木台第一トンネル」で今日のトンネル納め

柿木台第二トンネルを通過後、少し走るとすぐに「柿木台第一トンネル」が現れます。これは永昌寺トンネルと同様、五角形のトンネルでトンネル内には外灯もあり、距離はあるものの比較的走りやすいトンネルでした。

撮影:筆者

ここからはゴールも目前。林道独特の薄暗い雰囲気から、拓けた田園風景に風景も一変し、のどかなサイクリングを楽しめます。

冒険から日常に帰ってきたような気分になり、ここでほっとひと息つけました。

撮影:筆者

ゴールの飯給駅は、とても素朴な無人駅ですが、現代アート作品でもある「世界一大きなトイレ」があり、ちょっとした見どころも。

今回は飯給駅を終点としましたが、もっと走りたい人は市原市の日天様隧道を目指してもよいでしょう。ぜひ自身のスタイルに合わせて、ルートをカスタマイズしてみてくださいね!

実際に走ってわかった注意点

比較的短距離で東京からも至近、それゆえイージーだと思いがちの本ルートですが、実際に走ると見えてきた注意点が3つありました。

舗装されているが、林道は荒れ模様

撮影:筆者

道は舗装されているものの、落ち葉や枯れ枝、苔でスリップしやすくなっている区間が多々あります。なおかつトンネル内は湿気が多く、視界も悪いため注意して走行するようにしましょう。

なおかつ平坦ではなく、上っているか下っているかのどちらかですので、20㎞以上の満足感があります。

コンビニ、自販機、飲食店は少ない

撮影:筆者(途中立ち寄った『窯焼きパンと焼き菓子の店 • 酪』。タルトが絶品。支払いは現金のみ)

冒頭でも記載したとおり、コンビニや商店、飲食店、自販機等も非常に少ないエリアとなります。

水分や補給食は十分に持って行きましょう。また、運良く開店中のお店と巡り合えても決済は現金オンリーということもありますので、現金をいつもより多めに持つと安心です。

ローカル線の運行本数は少ない

撮影:筆者

まるで昭和にタイムスリップしたかのような小湊鐵道は、本数の少なさも特徴です。フルで輪行旅をするならば綿密に時刻表を確認し、タイムキープしながらサイクリングを楽しむのがおすすめです。

1本逃すと数時間後…というパターンもありますので、輪行する際はぜひ時間に余裕を持たせて駅に向かいましょう。

房総には“寄り道したくなる”道が伸びている

撮影:筆者

房総半島も一歩内陸に入れば、手つかずの自然や素朴な里山、林道、そして素掘りトンネルなど、歴史の匂いが残る景色が多く残されています。何度も立ち止まり振り返りたくなる、そんな1日となりました。

都内から日帰りで行ける「未開拓エリア」こと千葉・房総半島。懐かしくも神秘的な風景を探しにいきませんか?