TPUチューブの特徴
TPUチューブとは、「熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane)」という樹脂素材を使ったロードバイクなどスポーツ自転車向けのチューブのこと。
従来主流だった「ブチルゴム製」のチューブに比べて、軽量でコンパクト、かつパンクに強いといった特徴から、近年注目が高まっています。
まずは、そんなTPUチューブの主な特徴を紹介していきます。
軽い

TPUチューブ最大の特徴は、なんといってもその軽さです。
たとえばパナレーサーのブチルチューブ「R’AIR」(700×23〜28C)は78g。一方、同メーカーのTPUチューブ「PURPLE LITE」(700×23〜32C)はわずか36gと、その差は40g以上あり、前後で交換すれば100g近い軽量化を図れます。
とくにホイールまわりの重量は、ロードバイクの加速や登坂性能に影響するポイント。ヒルクライムやレースなど、走りのキレを求める場面では、その軽さを体感しやすいかもしれません。
コンパクト

TPUチューブは、収納時のコンパクトさも大きな特長です。
実物を手に取ってみると、「え、ちっさ」とびっくりしました。これならサドルバッグやツールケースでも嵩張らず、ロングライドやツーリングの“保険(予備チューブ)”として重宝しそうです。
耐パンク性能

Uチューブは、尖った異物に対する耐パンク性能がブチルチューブより高い傾向があります。軽量でコンパクトなだけでなく、素材の特性により異物の突き刺しに強い構造となっており、「すぐパンクするんじゃないの?」という声をいい意味で裏切ってくれる存在です。
とはいえ、耐久性や走行中のパンクリスクは使用状況や個体差にも左右されるため、実際に長距離を走ってみないと判断しづらい部分もあります。今後、走行レビューもあわせてお届けできればと思っています。
ブチルチューブとの違いまとめました
TPUはとにかく軽くて薄く、コンパクトであることが特徴。一方で、ブチルはTPUに比べると重いですが、長く使える安心感があります。
どちらが優れているかというよりも、「何を求めるか」で選ぶチューブ。以下にざっくり比較をまとめてみました。
項目 | TPUチューブ | ブチルチューブ |
重量 | 非常に軽い(例:36g) | やや重め(例:78g) |
収納性 | 小さくたためる。予備で持ち歩きやすい | 折りたたんでもかさばる |
耐パンク性 | 刺しパンクに強い(異物耐性◎) | 刺し・リム打ちともに平均的 |
乗り味 | やや硬めになりやすい | TPUよりはマイルド |
耐熱性 | 弱い(リムブレーキ注意) | 強い(過熱による劣化リスクは低い) |
再使用性 | 1度膨らませると戻らない | 空気を抜けばある程度元に戻り、再使用も可能 |
価格 | やや高価(1,500〜6,000円) | 安価(1,000円前後のものが多い) |
寿命・耐久性 | 劣化が早く、数か月〜1年程度で交換推奨 | 長寿命。保管状態がよければ数年使えることも |
こんな人やこんなシーンにおすすめ
ここでは、TPUチューブがどんな人・どんな使い方に向いているのかをまとめてみました。
軽量化を重視するサイクリスト

ロードバイクのバイクの軽量化、とりわけホイールまわりの軽量化にこだわる人には、TPUチューブがおすすめです。
ブチルからTPUへ変えることで、前後あわせて約100gの軽量化が見込め、ヒルクライムやレースでの加速・登坂性能向上が期待できるでしょう。
競技志向や重量志向のライダーにとっては、導入するだけの価値があるといえそうです。
荷物を軽量&コンパクトにしたい人

ロングライドやブルベ、輪行などで、携行品を少しでも軽量かつコンパクトにまとめたい人にもTPUチューブは有効です。畳むと非常に小さく、重量もわずか。サドルバッグやジャージのポケットに入れても、そこまで邪魔になりません。
スペアチューブを複数本持って行きたいような場面でも、総重量・体積を大きく圧縮できるでしょう。
耐パンク性能を高めたいけどチューブレスタイヤまでは…という人

ロードバイクのパンクリスクを減らしたいけれど、チューブレス化のためにホイールやタイヤを換えたり、シーラントの管理をしたりするのはちょっと…という方にも、TPUチューブはおすすめです。
前述のとおり、TPUチューブは異物に対する耐パンク性能が高い傾向にあり、従来のブチルチューブと比べてパンクの頻度を抑えられる可能性があります。
とはいえ、空気圧が低すぎるとリム打ちパンクのリスクはあるため、その点はブチル使用時と同様に注意が必要です。
実物を確認してみた(パナレーサー PURPLE LITE)
ということで、今回はTPUチューブの中でも注目度の高いモデル「パナレーサー PURPLE LITE」を実際に手に取ってチェックしてみました。
写真多めで、外観やサイズ感を中心にレポートしていきます。

まず持ってみて感じるのが、その軽さ。とにかく軽い。そして小さい。
外箱に入った状態でも、思わず「かっる」と声が出てしまうほどの軽さです。

中身を出してみると、さらにコンパクトさに驚きます。めちゃくちゃ小さい!!

家にあった他のブチルチューブと並べて比較してみます。TPUが23~32C用、ブチルが33〜50C用と、サイズ条件はフェアではないのですが、それでもこの差。

なんと、パンク修理キットのケースにすっぽり収まりました。
ブチルチューブだと別で収納スペースを確保する必要がありますが、TPUならパンク修理キットと一緒に持ち運べそうです。(ケースのサイズにもよりますが)


TPUチューブには“継ぎ目”のようなラインが入っているのも特徴的です。
これは「一体成型ではなく、TPUフィルムを溶着して作っている」ためで、素材の特性上どうしてもこの継ぎ目が生まれます。

バルブ部分は根元が樹脂、先端が金属製。
一般的なTPUチューブでは、バルブ全体が樹脂製のものも多く、熱を発する電動ポンプを使うと破損のリスクがあります。
しかしPURPLE LITEは、先端が金属製になっているため、電動ポンプの使用も問題なし。

実際にTPUチューブを触ってみて感じたのは、やはり“軽さ”と“コンパクトさ”のインパクト。正直、想像以上でした。
それから、ブチルチューブがゴム素材で伸縮性があるのに対し、PURPLE LITEにはほとんど伸縮性がなく、パリッとしたビニールような質感。そしてかなり薄いのに、素材自体の“頑丈さ”のようなものはたしかに感じられました。
乗り味や耐久性については、もう少し走り込んでからあらためてレビューしたいと思います。
おすすめのTPUチューブ5選
ここまででTPUチューブの特徴やメリットがなんとなく見えてきたところで、「じゃあ実際どれを選べばいいの?」と思った人も多いはず。
そこで、おすすめのTPUチューブを5つピックアップしました。それぞれに個性があるので、自分の使い方や目的に合った一本を見つけてみてください。
Panaracer(パナレーサー) PURPLE LITE(パープルライト)
参考価格(税込) | 1,980円 |
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対応サイズ | 700×23~32C |
重量 | 36g |
バルブ長 | 65mm / 85mm |
先ほどレビューをしたモデル。国内メーカーのPanaracer製で信頼性が高いです。バルブに樹脂と金属のハイブリッド構造を採用し、電動ポンプにも対応。価格も1,980円と良心的で、「TPUチューブを試してみたい」という方は、とりあえずこのPURPLE LITEを選んでおけば間違いないと思います。
32~47Cに対応するグラベル用モデルも販売されています。
おすすめポイント
- 国内メーカーのPanaracer製
- 電動ポンプにも対応している
- 価格が1,980円と良心的
Pirelli(ピレリ) P ZERO SMARTUBE
参考価格(税込) | 4,750円(42mm、60mm) / 5,400円(80mm) |
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対応サイズ | 700×23~32C |
重量 | 35g |
バルブ長 | 42mm / 60mm / 80mm |
鮮やかなイエローが印象的な、イタリアのタイヤメーカー・ピレリのTPUチューブです。もともとはプロチーム向けに開発されたモデルを市販化したもので、重量は35g。耐熱性が高く、TPUチューブながらリムブレーキにも対応している点が、このモデルの大きな特徴です。
(※TPU素材は熱に弱いため、ブレーキ時に熱がチューブに伝わりやすいリムブレーキとは相性が悪いとされています)
おすすめポイント
- 耐熱性が高く、リムブレーキにも対応している
- グラベル用もラインナップしている
- 35gと軽量
TUBOLITO(チューボリート) S TUBO ROAD
参考価格(税込) | 5,280円 |
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対応サイズ | 700×18~32C |
重量 | 23g / 24g / 25g |
バルブ長 | 42mm / 60mm / 80mm |
TPUチューブの草分け的存在。驚異の23gという圧倒的な軽さと、極小サイズが最大の魅力です。転がり抵抗も非常に低く、チューブレスと遜色ない走行感を狙った製品。ただし薄肉ゆえ耐久性は割り切っており、パンク修理は基本不可・使い捨て覚悟のレース・非常用としての位置づけです。
おすすめポイント
- 23gという圧倒的な軽さ
- 収納時サイズも非常にコンパクト
- 転がり抵抗が低く、走行がスムーズ
SCHWALBE(シュワルベ) Aerothan(エアロザン)
参考価格(税込) | 5,500円 |
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対応サイズ | 700×23~28C |
重量 | 41g / 43g / 45g |
バルブ長 | 40mm / 60mm / 80mm |
大手タイヤブランドSchwalbeと化学メーカーBASFの共同開発品。耐熱性に優れ、78km/hからの急制動テストでも連続7回のブレーキに耐えた実績があり、リムブレーキ使用でも安心とのこと。転がり抵抗も小さく乗り心地にも配慮された設計で、TPU特有の硬さを感じにくい調整がなされています。
おすすめポイント
- 耐熱性が高く、リムブレーキにも対応している
- 転がり抵抗が低く、走行がスムーズ
- グラベル、マウンテンバイク用など、ラインナップが豊富
Magene(マージーン) EXAR TPUチューブ
参考価格(税込) | 1,650円 |
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対応サイズ | 700×23~28C |
重量 | 36g |
バルブ長 | 45mm / 60mm / 75mm |
中国メーカー・Magene(マージーン)が手がけるTPUチューブ。重量は36gと軽量で、転がり抵抗の少なさに加え、耐熱性にも優れておりリムブレーキでも使用可能です。そして特筆すべきは、1,650円という破格の安さ。先述の「PURPLE LITE」と並び、はじめてTPUチューブを試す人にとって有力な選択肢となりそうです。
おすすめポイント
- 1,650円という破格の安さ
- 耐熱性が高く、リムブレーキにも対応している
- 安価ながらも36gと軽量
TPUチューブの使用時の注意点
軽くてコンパクト、そして高い耐パンク性能が魅力のTPUチューブですが、扱いにはいくつか注意が必要なポイントもあります。
とくに素材特有の性質や、装着時の空気圧・熱への配慮などは、ブチルチューブとは勝手が異なる部分です。
ここでは、使用前に知っておきたいTPUチューブの注意点をまとめて紹介します。
熱に弱い

TPUは熱可塑性素材のため高温に晒されると軟化・変形しやすく、特にリムブレーキ使用時のリム過熱には注意が必要です。
リムブレーキで長い下り坂を走る際は必要以上にブレーキを引きずらないよう心掛け、定期的に休ませましょう。メーカーによってはディスクブレーキ専用としている製品もあります。
保管時も高温に注意が必要で、直射日光下の車内などには放置しないよう心がけてください。一度高熱で変形・膨張したチューブは元に戻らないため、異常な膨らみやシワが見られた場合は再使用せず新品への交換が推奨されます。
一度膨らませるともとに戻らない
TPUチューブは一度空気を入れて膨らませると縮まないという性質があります。
ゴム製のブチルチューブなら抜気すれば元のサイズに概ね戻りますが、TPUは伸びきったままとなり、例えば最初に28Cタイヤで使ったTPUチューブを25Cタイヤに付け替えることはできません。
このため「TPUチューブは一度タイヤから取り出したら使い回せない」くらいに考えておいた方が無難です。パンク修理についても専用補修キットが用意されている場合がありますが、あくまでも応急処置。
基本は「パンク=新品交換」と割り切った方が安心といえそうです。
タイヤ装着時は慎重に取り扱う
TPUチューブは非常に薄いため、タイヤ装着時にリムとタイヤビードの間に挟み込み(噛み込み)パンクしやすい点に注意が必要です。作業時はブチルチューブ以上に慎重さが求められます。
噛み込みを防ぐために、装着前にチューブへ少し空気を入れて筒状に形を整える作業は、ブチルチューブでも一般的です。
TPUチューブでもこの方法は有効ですが、空気を入れすぎると、風船のように局所的に膨らんで破裂してしまうおそれがあります。たとえばパナレーサーの「PURPLE LITE」では、装着時の空気圧を0.35気圧未満に抑えるよう注意書きされています。
とはいえ、適切な手順で取り扱えば、そこまで神経質になる必要はありません。最後にタイヤの全周を手で押しながら、チューブの噛み込みがないか確認すればOKです。
製品によっては電動ポンプが使えない
多くのTPUチューブは軽量化を図るため、バルブ部分に樹脂素材を使用しています。この場合、電動ポンプのモーターが発する熱でバルブが変形・破損するおそれがあり、使用が推奨されていないことも。
電動ポンプでTPUチューブに空気を入れたい場合は、購入前にバルブ素材やメーカーの注意書きをチェックするようにしましょう。
TPUチューブは“扱い方を知れば”強い味方になる

TPUチューブは、ブチルチューブと比べて明確なメリットを持ちながらも、使用にあたっては注意点が多いアイテムです。
軽さやコンパクトさを重視するロードバイクユーザーには適していますが、「とにかく安心して使いたい」という人にはブチルのほうが向いているかもしれません。
目的や使い方に応じて、チューブ選びの参考にしてみてください!
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