今あえて「ラテックス」に注目した訳

今回、ロードバイクのカスタムとしてラテックスチューブを試してみた理由は、手軽に走りの軽さや乗り心地を向上させたいと思ったためです。
近年、ロードバイクやMTBをはじめとするスポーツバイクでは、転がりと乗り心地の良さに定評のあるチューブレスレディが注目を集めています。しかし、タイヤやホイールの対応品への交換コストの高さや、シーラントの定期的なメンテナンスの手間を敬遠する声も少なくありません。
また、軽量で高性能なTPUチューブも徐々に普及してきていますが、価格の高さに加え、パンク時の修理が難しいという課題もよく耳にします。
レースなどで走行性能や振動吸収性を極限まで高めるなら、チューブレスレディやTPUチューブが有力な選択肢になります。しかし、筆者は競技志向ではなく、ロードバイクでのんびりポタリングやたまにロングライドを楽しむホビーサイクリスト。
レース志向のハイエンドタイヤやホイールに多額の投資をするのではなく、今使っている機材をなるべく活かして、コストを抑えて乗り心地や走行性能を手軽にアップさせたいと思っていました。そこでラテックスチューブに注目したというわけです。ラテックスチューブは、ブチルチューブに比べて乗り心地が滑らかで、転がり抵抗も低いと言われています。
チューブ交換だけなら手間もそれほどかからず、ホイールやタイヤ交換よりも出費を抑えられます。とはいえ、ラテックスチューブはブチルチューブより高く、前後2本で2,000〜4,000円程度とそれなりの出費です。実際にブチルチューブから交換することで、体感でどれくらいの違いが生まれるのか。今回は実走テストを通じて、ラテックスチューブの良い面も悪い面も正直にレビューしていきたいと思います。
今回用意した機材とテスト環境
今回のテストでは、比較対象を明確にするため、ロードバイク本体・タイヤ・ホイールは変更せず、チューブのみをブチルからラテックスに交換して違いを検証します。

| 車体 | GUSTO/RANGER |
| フレーム | カーボン |
| ホイール | カンパニョーロ Zonda |
| タイヤ | ATTAQUE SPORT30(25c) |
テストに使用する自転車は、ほぼ標準仕様のカーボンロードバイクです。ホイールはアルミリムのそこそこのグレードが入っていましたが、タイヤやチューブはそれほどハイスペックな物ではありません。
この標準的な仕様で、ブチルチューブからラテックスチューブに交換することで、走りがどのように変わるのかテストしていきます。
Vittoria(ヴィットリア) COMPETITION LATEX 2個セット 700c 仏式48mm
| 重量 | 85g |
|---|
ラテックスチューブは、スポーツバイク専門ブランドのVittoria(ヴィットリア)を選びました。レースでのパフォーマンスを重視したチューブですが、サイクリングペースでも効果があるのか検証していきます。

筆者がロードバイクで普段から走っている、信号が少ない郊外の平坦路と峠道の上り下りを組み合わせたコースを使用し、ラテックスチューブに交換して変化をテストします。
路面状況がきれいなアスファルトから、舗装が荒れた凸凹路面まで含めることで、リアルなサイクリング・ロングライド条件での違いを見ていきます。
ラテックスチューブへの交換作業レビュー

具体的な走行インプレの前に、まずは筆者のロードバイクのチューブをブチルからラテックスに交換していきます。

ラテックスチューブに同梱されていた説明書によると、一般的なチューブと交換手順は変わらないようです。

ラテックスチューブを手に取ると、一般的なブチルチューブよりかなり柔らかい印象です。表面には、タイヤとの固着を防ぐためのパウダーが薄く塗布されていました。

柔らかいラテックスチューブはタイヤとリムの間に噛み込みやすく、パンクの原因になるという意見が多いため、チューブを入れる前に少しだけ空気を入れて形を整えました。

実際にタイヤをはめ込んでいくと確かにチューブが柔らかい分、すこし噛み込みが発生しやすい印象です。少しずつチェックしながらチューブをタイヤ内に押し込み、レバーは使わず慎重にはめ込みました。

重さを実測します。元々入っていたブチルチューブは1本あたり108g、ラテックスチューブは80gで、前後で56gの軽量化になりました。最近はブチルチューブも軽量な物があるので、特別軽いわけではなく重量差もわずかですが、回転部分の軽量化は効果が大きいという意見も多いため、違いが楽しみですね。

今回使用したヴィットリアのラテックスチューブは、バルブを固定するねじ山がないため、空気が入っていない状態でポンプヘッドを固定するのが少し大変でした。
特に、筆者が使っているような押し込むタイプのポンプヘッドの場合、バルブを手で押さえながら装着する必要があります。

空気圧は普段ブチルチューブで走っているときと同じ、約7BARにそろえます。
【走行インプレ】ラテックスチューブ、ブチルと乗り比べて分かった違い
ここからは、実際にラテックスチューブでいつもの機材・コースを走って感じた、違いを詳しくお伝えします。
すぐに乗り心地の良さを実感

走り始めてすぐに、路面の細かい凹凸による振動がマイルドになっていると感じました。
上の写真のように、アスファルトが劣化しているところのガタガタという振動が、いつもよりマイルドになっている印象です。

排水口の微妙な段差のように、避けるまでではない路面の凹凸も、ブチルチューブよりスムーズに乗り越えられます。
振動や突き上げが全くなくなるわけではないのですが、全体的にマイルドで滑らかな乗り心地になったイメージです。
峠の上りでもスムーズな印象

峠道の上りでは、ブチルチューブより若干ペダリングの軽さを感じました。重量差は前後で56gとわずかですが、スピードとタイヤの回転が落ちる上り坂では軽量化のメリットを感じやすいのかもしれません。
また、峠道は舗装が悪い部分が多いため、ラテックスチューブの滑らかな走り心地も、ペダリングの軽さにつながっている可能性があります。レースのようにスピードを出したわけではなく、タイムなども計測していませんが、峠の上りでもラテックスチューブのメリットを感じられました。
峠の下りやアスファルトの凹凸

ラテックスチューブの振動吸収性と滑らかな走り心地は、峠の下りでも感じられました。
荒れた路面でもタイヤが跳ねにくく、ブチルチューブよりしっかりグリップしてくれるので安心して走れる印象です。

ただし、アスファルトの補修跡やつなぎ目など、大きな段差を乗り越えるときはやはり強めの衝撃が来ます。
特に下りでスピードが出ている状態では、ブチルチューブとラテックスチューブの差はそれほど感じませんでした。
空気圧を下げてみての検証

テストの途中で、空気圧を下げて乗り心地の変化を確認してみました。
スタート時の7BARから、タイヤの空気圧の下限である6BARまで落としてみます。

空気圧を下げた状態だと、若干乗り心地やグリップ感が向上したような印象がありました。ただし、ブチルチューブからラテックスチューブに交換したときの変化に比べると、空気圧による違いはわずかです。
空気圧についてはホイールやタイヤ、ライダーの体重などさまざまな条件で変わってくるので、指定範囲で好みの乗り心地を見つけるのが良いでしょう。
ラテックスチューブのデメリット検証
ロードバイクを始めとする多くのスポーツバイクで標準採用されていることが多いブチルチューブと比べて、ラテックスチューブにはデメリットもあると言われています。
特に気になるデメリットについて、実際に使ってみてどうだったのか正直な感想をお伝えします。
1晩以上経つとかなり空気は抜ける

ラテックスチューブは、ブチルチューブに比べて空気が抜けやすい点がデメリットだと言われています。ゴムの分子構造が緻密でないため、時間の経過とともにチューブの壁を通して微量の空気が抜けていってしまうためです。そのため、ラテックスチューブを使う場合は、走行前に毎回空気圧をチェックし、補充することが推奨されています。
実際にどれくらいのペースで空気が抜けるのか、7BAR強からスタートして時間ごとに計測してみました。
| 経過時間 | 空気圧 |
|---|---|
| スタート | 7.03BAR |
| 3時間後 | 6.77BAR |
| 6時間後 | 6.32BAR |
| 12時間後 | 5.97BAR |
近距離サイクリングを想定した3時間後、空気圧の低下は0.26BARでした。このぐらいの空気抜けなら、走行中に大きな影響を感じるほどではありません。
ロングライドを想定した6時間後も、6BAR台をキープできており、実用上は問題ないレベルと言えそうです。ただし、若干乗り心地が変わる可能性はあるため、同じ走りをキープするなら携帯ポンプで空気を追加する必要があります。

一方で、一晩(12時間後)経過すると1BAR以上の空気が抜けて、6BARを下回る結果となりました。ブチルチューブであればほぼ変化を感じないレベルの時間ですが、ラテックスチューブの場合は一晩でかなり空気が抜けてしまいます。
空気の抜け具合は個体差もありますが、12〜24時間では、1BAR程度抜ける可能性が高いと言えます。
ラテックスチューブの場合は、走行前に必ず空気圧をチェックし、補充する一手間が必要になると実感しました。通常のサイクリングやロングライドではそこまでデメリットになりませんが、空気圧チェックの手間は少し多くなります。ただし、ロードバイクやMTBなどのスポーツバイクでは、乗る前の空気圧チェックは常にやるべきメンテナンスであり、慣れている方ならそこまで苦にはならないでしょう。
アルミリムならブレーキの熱による大きなトラブルは見られず

ラテックスチューブは熱に弱く、リムブレーキで発生する摩擦熱によってパンクのリスクが高まるという意見もよく見られます。特に、カーボンリムはブレーキング時の熱がリム内部にこもりやすく、ラテックスチューブとの組み合わせは避けるべきとされています。
今回のテスト環境はアルミホイールでしたが、実際に急勾配の峠道をブレーキを強めにかけながら下ってみました。結果として、今回のテストでは特にトラブルは発生しませんでした。通常のサイクリングペースであれば、アルミリムであれば問題なく使えそうです。
ただし、これはあくまで今回の1回のテスト走行での結果です。真夏の炎天下や、より長い下り坂が連続するような環境では条件が変わる可能性もあります。ラテックスチューブに限った話ではありませんが、リムブレーキのロードバイクではブレーキの発熱を抑える走り方も覚えておきましょう。
結論:ラテックスチューブはこんな人におすすめ!

ここまでの実走テストを踏まえて、ラテックスチューブがどんなサイクリストに向いているのか、筆者の感想としてまとめます。
結論から言うと、ラテックスチューブによる乗り心地の変化は確かに実感できました。手始めのカスタムとしておすすめできますし、価格に対する効果を考えるとコストパフォーマンスも良いと感じています。デメリットとして挙げられるのも、基本的には空気圧管理の手間くらいで、致命的な弱点は見当たりませんでした。
ただし、正直に言うと、タイヤやホイールを丸ごと変えたときのような劇的な変化はありません。価格帯が全く違うので当然ではありますが、そこは過度に期待しない方が良いでしょう。あくまで、チューブ交換という手軽さとコストに対して、それに見合う変化が感じられる、というのが今回の実走テストを通じての筆者の実感です。
ラテックスチューブがおすすめな人
- 予算を抑え、今の機材を活かして乗り心地を良くしたい人
- ロングライドの疲労を減らし、快適に走りたい人
- 毎回の走行前に空気を入れる作業が苦にならない人
元々クリンチャー仕様のタイヤやホイールを使っていて、なるべく予算をかけずに乗り心地を変化させたい方は、ラテックスチューブを試してみる価値がありそうです。TPUチューブやチューブレスレディまではお金を出せないけど、乗り心地を改善させたいというときに、ラテックスチューブは良い選択肢になると思います。
ラテックスチューブがおすすめできない人
- レースやイベントに向けて走行性能をなるべくアップさせたい人
- 通勤・通学などで、数日間空気圧をメンテナンスせずに乗りたい人
一方、ブチルチューブからラテックスチューブに変えたときの変化は、タイヤやホイール交換に比べると小さいと感じたのも正直なところです。スピードやタイムが求められるレースなどのシーンで大きな変化や改善を求めるなら、費用をかけてもチューブレスレディに変えたほうが効果を実感できるかもしれません。
また、通勤・通学などで毎日自転車を使う方で、毎日空気圧を管理するのが手間だと感じる方も、ブチルチューブの方がおすすめです。
コスパの良い乗り心地改善なら、ラテックスチューブを検討

今回、ブチルチューブからラテックスチューブに交換して実走テストを行った結果、路面からの振動がマイルドになり、峠の上りでもペダリングの軽さを感じられました。
タイヤやホイールを丸ごと交換するほどの劇的な変化はありませんが、既存のクリンチャー環境を活かしたまま、比較的少ない投資で乗り心地を底上げできる点は、ラテックスチューブならではの魅力だと感じました。
特に、筆者のように少し古いロードバイクに乗っていて、幅が狭い25cタイヤやクリンチャータイヤを使っている方は、ラテックスチューブを試してみる価値はあると思います。まずはラテックスチューブに交換してみて、より良い乗り心地や走行性能を求めるなら、TPUチューブやチューブレスレディにステップアップするのもおすすめです。
もし手軽に愛車の乗り心地を改善したいと思ったら、ぜひラテックスチューブを試してみてください。
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