モールトンってどんな自転車?魅力やラインナップを徹底解説します!

一度目にするとなかなか頭から離れない、唯一無二のデザインをもつイギリスのプレミアム小径車”モールトン”。実車を取り扱っているお店が少ないので、どんな自転車なのかイメージしづらいですよね。

ということで今回は、モールトンの特徴やラインナップを詳しく解説します。

また、記事の後半には、モールトンの国内代理店を務めるダイナベクター社の”富成次郎”さんにインタビューをした内容も載せているので、ぜひそちらもご覧ください!

目次

記事内画像提供:ダイナベクター

「モールトン」って、どんなブランド?

モールトン博士

MOULTON(モールトン)は、”アレックス・モールトン博士”が立ち上げたイギリスのプレミアム小径車ブランドです。

モールトン博士はもともと、車のサスペンション開発に従事していましたが、1956年の石油危機(スエズ動乱)をきっかけに自転車の有用性に注目。その後サスペンション付き小径車の研究をすすめ、1962年に最初のモールトン自転車が発表されました。

英国の長い歴史と伝統から生まれたその自転車は、今なお世界中のファンに愛されています。

唯一無二のデザインを小径車「モールトン」の魅力とは?

ダブルパイロン

モールトンは、一度目にするとなかなか頭から離れない、唯一無二のデザインをもつイギリスのプレミアム小径車(ミニベロ)です。

それでは、モールトンの特徴を詳しく見ていきましょう。モールトンの特徴は以下の通りです。

① モールトン・サスペンション

② 高鋼性なトラス構造フレーム

③ フレームを分割できる

④ 全車種がイギリス国内で製造

モールトン・サスペンション

モールトン サスペンション

小径車には「小回りが効く」「オシャレ」等のメリットがある反面、「道路の凹凸の影響を受けやすい」というデメリットがあります。

そのデメリットを解決するため、モールトン博士によって開発されたのが、独特な形状のモールトン・サスペンション。

このサスペンションがクッションの役目を担い、”シルキーライド”と称される絹のような乗り心地を実現しているんです。

軽くて高鋼性なトラス構造フレーム

モールトン・フレーム

モールトンのフレームは、三角形を一つの構成単位とする骨組み構造、”トラス構造”を採用しています。モールトン博士は、なぜこのトラス構造を採用したのでしょうか?理由は3つあります。

① トラス構造は鋼性が高いから

② 車体重量を軽くできるから

③ 乗り降りしやすいフレーム形状(ステップ・スルー)にするため

モールトンにはサスペンションが搭載されており、フレーム自体に”しなり”を持たせる必要がないため、この独特なフレーム形状を採用することができたんです。

フレームを分割できる

モールトン フレーム分割

モールトンの自転車は、もともとコンパクトな上、フレームを分割できるので、電車など公共交通機関で自転車を持ち運ぶ”輪行”や、車への積み込みが容易です。自転車で遠出をするのが好きな人には、嬉しい機能ですよね。

※ 一部、分割できないモデルもあります。この後の「ラインナップ紹介」で詳しく説明しますね!

全車種がイギリス国内で製造

The・Hall

日本のモールトンファンから「お城」と言われる、モールトン博士の自宅兼工房「The Hall」。モールトンの一部の自転車は、この工房で熟練工の手によって一台一台手造りされており、それらのモデルは通称「お城製」と呼ばれています。

さらに、お城製以外のエントリーモデルでさえ、シェークスピアの町ストラッドフォードの老舗自転車メーカー”パシュレイ社”によって製造されているというから、驚きですよね。パシュレイ社モデルは、お城製モデルよりもリーズナブルですよ。

モールトン博士の「イギリス国内生産」への並々ならぬこだわりが感じられます。

モールトンの選び方

モールトンには5つのシリーズがあり、モデル数はぜんぶで14種類もあります。そのため、モールトンの購入をはじめて検討する方にとっては、なにを基準に選べばいいのか分からないですよね。

そこで、分かりやすく選び方の基準を分けると、以下のとおりになります。

● 素材:クロモリ or ステンレス

● フレーム:分割 or 非分割

● ホイール径:17インチ or 20インチ

● 生産:お城製 or パシュレイ社製

例えば、「ステンレス」で「分割できる」「20インチ」の「お城製」が欲しい・・・となると、”DOUBLE PYLON “がぴったり。という選び方です。

サビに強いのは「ステンレス」

ステンレスフレーム

ステンレスは、クロモリの「錆びやすい」という弱点を解消するために作られた素材です。そのためクロモリに比べると錆びづらく、長持ちします。

その分、ステンレス製のモールトンは高価ですよ!

輪行や車への積み込みが多いなら「分割式」

分割式フレーム

輪行や、車に積み込んで遠出をすることが多い方は、コンパクトになる「分割式」がおすすめです!

パーツが手に入りやすいのは「20インチ」

20インチモデル

20インチのホイールは多くの小径車(ミニベロ)で採用されているので、タイヤやリム等、ホイール周りのパーツを手に入れやすいです。

一方、17インチはモールトンの独自規格なため、パーツが少ないのが現状。サイクリング中にパンク等のトラブルが起きてしまったら、修理できるショップは少ないでしょう。

とはいえ、初代モールトンのホイール径は17インチだったこともあり、「モールトンらしいモールトンは17インチ」とも言われているんです。悩ましいところですね・・・。

完成車で販売されているのは、「TSRシリーズ」のみ

モールトン フレームキット

モールトンの自転車は基本的には完成車ではなく、上の写真のようにフレーム・キットでの販売となります。完成車で販売されているのは、エントリーモデルの「TSRシリーズ」のみ。

この後、詳しく説明します!

どんなラインナップがある?

それでは、モールトンのラインナップを見ていきましょう。

すべてのモデルを紹介するとかなりのボリュームになるので、ここではそれぞれのシリーズと、その主要モデルを紹介しますね!

③ TSRシリーズ(パシュレイ社製)

② SSTシリーズ(パシュレイ社 / お城製)

③ Newシリーズ(お城製)

④ AMシリーズ(お城製)

⑤ DV-1(日本製)

① 初めてのモールトンなら!:TSRシリーズ(パシュレイ社製)

モールトン TSR

TSRはTouring, Sport & Recreation (旅、スポーツ、レクリエーション)を目的として開発されました。モールトンの中では一番リーズナブルな価格設定なので、「とにかくモールトンに乗ってみたい!」という方におすすめのモデルです。

TSRのサスペンションは重要部分にAMシリーズ(お城製)のパーツが使われており、トラス構造のフレームももちろん健在。そのクオリティは高級自転車モールトンにふさわしい仕上がりとなっています。

唯一、完成車で販売されているのが、このTSRシリーズです。

主要モデル

TSR-9 SP

価格(税込)¥418,000
※完成車
フレーム素材クロモリ
ホイール径20インチ
分割・非分割分割
生産パシュレイ社製
完成車重量11.9㎏
特徴量産型ベーシックモデル

<その他のラインナップ>

・TSR-9 FX:上記モデル(TSR-9 SP)の非分割モデル

・TSR-FX8 Alfine:内装ギアモデル。非分割

TSRシリーズの商品ページはこちら

② TSRシリーズの上位互換:SSTシリーズ

SSTシリーズTSRシリーズをより高級化、細部をグレードアップして、好みの部品で組み立てられるようにフレームキットで販売されているのが、SSTシリーズです。

ジオメトリはTSRと共通ですが、フォーク、チェーンステー、フロントディレイラー台座等が変更されており、軽量になっています。

主要モデル

SST-SP

価格(税込)¥396,000
※ホイール・フレームキット
フレーム素材クロモリ
ホイール径20インチ
分割・非分割分割
生産パシュレイ社製
特徴TSRシリーズのグレードアップ・軽量版

<その他のラインナップ>

・XTB:オフロード仕様モデル。お城製

SSTシリーズの商品ページはこちら

③ 最新のサスペンション・システム:NEWシリーズ(お城製)

ダブルパイロン

1997年にデビューしたニューシリーズには、最新のサスペンション・システムが搭載されており、それまで17インチだったホイール径は、様々なタイヤが選択できるよう20インチになりました。

最新のサスペンション・システムを持つニューシリーズは、モールトン博士が思いえがく理想の自転車の姿と言えるでしょう。

主要モデル

DOUBLE PYLON

価格(税込)¥2,200,000
※ホイール・フレームキット
フレーム素材ステンレス
ホイール径20インチ
分割・非分割分割
生産お城製
完成車重量9.5㎏
特徴シートチューブとトップチューブがパイロン(やぐら)構造になっている

<その他のラインナップ>

・SINGLE PYLON:非分割フレームで軽量。乗り味はクイックでスポーティー

・NEW SERIES:分割フレーム。分割すると、全モールトンなかで最もコンパクト

NEWシリーズの商品ページはこちら

④ 最もモールトンらしいモールトン:AMシリーズ(お城製)

AM-20 Mk.2

1983年にモールトンの象徴ともいえる、”トラス構造フレーム”を携えた自転車が初めて発表されました。それが、いまに続く「AMシリーズ」です。

登場以来幾度も改良が施されてきましたが、独創的なトラス構造フレームにサスペンション、モールトン博士こだわりの17インチホイールなど、最もモールトンらしいモールトンは、いまも変わらずAMシリーズと言えるでしょう。

主要モデル

AM-20 Mk.2

価格(税込)¥847,000
※ホール・フレームキット
フレーム素材クロモリ
ホイール径17インチ
分割・非分割分割
生産お城製
完成車重量10.1㎏
特徴AMシリーズの伝統的スタイルを守り続けるスタンダードモデル

<その他のラインナップ>

・AM-GT Mk.3:17インチのステンレス製モデル。分割式

・AM-SPEED:17インチのクロモリ製最軽量フレーム。非分割

・SUPER SPEED:モールトンの中で最軽量。ステンレス、20インチ、非分割

・AM-SPORTIF:SUPER SPEEDの分割モデル。素材はクロモリ

AMシリーズの商品ページはこちら

⑤ 和製モールトン:Dynavector DV-1

DV-1

モールトンの日本代理店を務めるダイナベクター社が、モールトン博士のアドバイスをもとに、約10年の歳月をかけて作り上げた自転車が、Dynavector DV-1です。

ラバーコーン・サスペンションのみ本家モールトン製を採用していますが、それ以外はすべて日本製。メイド・イン・ジャパンにこだわった1台になっています。

DV-1最大の特徴は、スポークテンション・フレーム。複数のスポークをフレームの補強として使った、世界にも類を見ない構造で、竹のような「硬すぎず・柔らかすぎず」という独特のしなやかさを実現しています。

モデル名

Dynavector DV-1

価格(税込)¥605,000
※フレームキット
フレーム素材クロモリ
ホイール径17インチ
分割・非分割非分割
生産日本
特徴スポークテンション・フレーム

Dynavector DV-1の商品ページはこちら

純正のアクセサリーも豊富です!

モールトンは、一般的な小径車とは形状や仕様がまったく異なるため、純正のアクセサリーが豊富です。

例えば、モールトンの刻印が入ったボトルゲージや・・・・

ボトルゲージ モールトン

撮影:編集部

モールトン専用のキャリア・バッグなど。

バッグ モールトン

撮影:編集部

バッグ モールトン

撮影:編集部

自転車で遠出をするのが好きな方は、キャリアを取り付けて「旅仕様」にするのも良さそうですね!

純正アクセサリーのラインナップが気になる方は、公式サイトをチェックしてください。

モールトン純正のアクセサリーはこちら

モールトンはどこで買える?

モールトンには直営店がありません。モールトンの取り扱いがある自転車ショップで購入することができます。その数、全国に50〜60店舗ほど。

さらに、モールトンの販売店には2種類あります。

① 有力販売店

② 販売店

① 有力販売店

モールトンの販売に特に力を入れており、AMシリーズの在庫を始め、実車が展示されているのが「有力販売店」です。

有力販売店一覧はこちら

② 販売店

モールトンを取り扱っている自転車ショップです。

販売店一覧はこちら

モールトンのちょっと気になるところ

「絹のような乗り味」「独創的なデザイン」「圧倒的な所有感」などなど、モールトンの魅力はいくら語っても語り尽くせないのですが、もちろん良いところだけではありません。

ここでは、モールトンのちょっと気になるところを紹介します。

① 価格の変動が激しい

② 納期が読めない

① 価格の変動が激しい

コストアップ

モールトンの自転車はイギリスから輸入しているため、世界情勢の影響を受けやすく、価格の変動が激しいです。

とくに記事執筆時点の2023年はロシア・ウクライナ情勢や円安、新型コロナウイルス等、さまざまな要因により、国内代理店のダイナベクターですら値上げ幅を予測できないほど。

現状の価格が気になる人は、公式サイトをチェックしましょう。

モールトンの価格表はこちら

② 納期が読めない

納期

在庫が販売店にあればいいのですが、無い場合はイギリスに発注することになります。モールトンの自転車は1日に生産できる台数が決まっているので、「発注したらすぐに届く」という訳にはいきません。

モデルによって納期はまちまちですが、執筆時は遅いモデルだと1年半くらいかかるそうです。さらに、新型コロナウイルスの流行で自転車需要が高まったことにより、バックオーダーはどんどん増えているとのこと。

欲しいモデルが決まっているのであれば、早めにゲットした方がいいかもしれませんね。

ダイナベクター社の富成さんにアレコレ聞いてみた

ダイナベクター 富成さん

撮影:編集部

この記事を書くにあたって、モールトンの国内代理店を務めるダイナベクター社の”富成次郎”さんに話を伺いました。その中で、特に印象に残っているお話をここではご紹介します!

 

ー ラインナップの中で、一番人気のモデルはどれですか?

富成さん:一番人気なのは、TSRシリーズですね。

ー やっぱり、TSRシリーズが人気なんですね。では、富成さんおすすめのモデルを教えてください。

富成さん:どれもおすすめですけど(笑)、敢えて言うなら、これもまたTSRシリーズですね。リーズナブルですし、完成車で販売しているので一番とっつきやすい。まずはTSRに乗ってモールトンの素晴らしさを知って欲しいですね。

工房

撮影:編集部

 

ー モールトンユーザーには、若い方もいらっしゃるんですか?

富成さん:そうですね。実は、新型コロナウイルスの流行でモールトンの販売台数って増えたんです。その時に、若い方からの注文が増えた印象ですね。

ー 幅広い方々が、モールトンを楽しんでいるんですね。

富成さん:はい、その通りです。

モールトン

撮影:編集部

 

ー 改めて、”モールトンの魅力”を教えてください。

富成さん「一生モノ」で長く使えるところですね。モールトン自体が”丈夫”ということもあるのですが、部品もずっと供給されているのでいつでも修理できます。私のモールトンは29年乗り続けていますが、まだまだ現役です。

ー 同じモールトンに29年も乗り続けているんですか!?それはすごいですね・・・

富成さん:そうなんです。当社の仕事の多くは、長く愛用されている古いモデルの修理に関するものです。20年も30年も前のモデルなのに、修理ができる自転車は珍しいと思いますよ。

富成さんのモールトン

撮影:編集部

 

ー 最後に、モールトンはどんな人におすすめですか?

富成さん:もちろん誰にでもおすすめなのですが、「自分の世界を持っている人」「人生を真面目に考えている人」「流行に流されない人」、そんな人に特におすすめしたいです。

ー なるほど、それはなぜでしょうか?

富成さん:いまの世の中は、「味が薄いもの」や「トレンドを追っているだけのもの」ばかり。でも、モールトンの魅力・価値はずっと変わっていませんし、これからも変わることは無いでしょう。だからこそ、流行り物に興味を持てない人には、“ずっと変わらないモールトンの魅力”を感じていただきたいなと思います。

モールトン ロゴ

撮影:編集部

モールトンオーナーの素敵な写真をご紹介!

ここからは、Instagramで見つけた、モールトンオーナーの素敵な1枚を紹介します。

https://www.instagram.com/p/B6QWIjglcBH/

出典:Instagram/motokix986
https://www.instagram.com/p/Cku1eFgJkYk/
出典:Instagram/ichi_cruising
https://www.instagram.com/p/CbkF_zXP9gM/
出典:Instagram/kouji_kondou_
https://www.instagram.com/p/CdKSEDOp49n/
出典:Instagram/mild_fivestar

唯一無二の自転車、モールトンで旅に出よう

「絹のような乗り心地」をもつモールトンは、街乗りはもちろん、専用のバッグを取り付けることで、ロングライドもバッチリこなしてくれるでしょう。

ぜひ、モールトンと共に、あなただけの自転車ライフを楽しんでみませんか?

モールトンの公式サイトはこちら