最適なシュラフがあれば、自転車キャンプの世界が広がる!
自転車でキャンプライドをするとき、最適なシュラフを選んでおけば、その世界がまた一歩広がります。
寒い季節でも凍える夜を過ごさずに済みますし、軽量コンパクトなシュラフであれば、自転車へのパッキングにも困ることがありません。自然の中でゆったりと過ごすキャンプを、存分に楽しむことが出来るようになるでしょう。
シュラフは、睡眠の快適性だけでなく、走行の快適性にも大きく影響する、大切な装備なのです。
気温に合ったシュラフが必要
暑い時期のキャンプから始めようという方にとっては、シュラフは必要度が低いアイテムと思われるかも知れません。確かに夏場など、シュラフが無くとも快眠できる日もあるでしょう。
しかし、大きな落とし穴は『キャンプ未経験の方が「○○℃」と聞いて想像するより、睡眠時の体感気温は圧倒的に寒い』ということです。これは「睡眠時に体温が下がる」という人間のメカニズムも影響しており、身体の発熱量が減る分を保温力で補う必要があるためです。
春秋のキャンプを予定する方はもちろんのこと、夏場のキャンプであっても、体質によっては性能の高いシュラフが無いと眠ることさえ出来ないかも知れません。
貧弱な保温具では「寒さに震えて寝られなかった」「体調を崩してしまった」ということも起こり得るため、睡眠時の保温の肝となるシュラフは重要なのです。
シュラフはなるべく小さくしたい
シュラフは、キャンプ道具の中でも1,2を争う大きさで、自転車に積載するのが大変な装備でもあります。「暖かければよい」「安ければOK」と適当に選んでしまうと、自転車に積むことすらできないことも…。
そのため自転車キャンプに使用するなら、軽量・コンパクト性は外せません。
特にバイクパッキングで使用するなら、バッグの大きさから考えて、重量は500gくらいに抑えておくと積載しやすくおすすめです。
上の画像で、左下のサドルバッグが9L。
シュラフは大きい順に約900g(上、オレンジ)、500g(右下、緑)、450g(中央、青)です。比較して頂ければ、500gというラインがお分かりいただけると思います。
シュラフには収納サイズの記載がある製品もありますが、主要な素材が綿ですので、圧縮の仕方によって形状やサイズは大きく異なります。サイズの目安としても、まず重量をチェックしておくとよいでしょう。
シュラフの種類と選び方
では、シュラフの大まかな種類と、自転車キャンプに適した条件を見ていきましょう。
封筒型とマミー型【マミー型がおすすめ】
シュラフの形状には、大きく分けて2種類あります。
・封筒型:布団に近い開放的な寝心地。重量がかさみ、保温力が低い。
・マミー型:軽量でコンパクト。シュラフが密着する感覚がある。
封筒型が上、マミー型が下です。
マミー型の方が軽量でコンパクトに出来るため、自転車キャンプならマミー型がおすすめです。デメリットと言われるシュラフが密着する感覚も、実際には気にならない方が多いです。
化学繊維とダウン【ダウンがおすすめ】
中綿の素材は、大きく分けて2種類です。
・化学繊維:湿気に強く、安価。重く収納時に嵩張る。
・ダウン:軽量でコンパクト。湿気に弱く、高価。
携帯性の観点から、自転車キャンプで使うならダウンがおすすめです。
上の画像で、真ん中が化学繊維のシュラフ、右がダウンのシュラフです。これでも保温力はダウンのモデルがやや高いほどですので、差は歴然でしょう。
化学繊維と高品質のダウンとでは、同じ暖かさでも重量やサイズが2倍くらい違います。積載の限られる自転車キャンプなら、ダウンの優位性が強く発揮されます。
ただし、化学繊維のモデルは価格が高品質ダウンの半分ほどですし、湿気に対する扱いが簡単と、ビギナーには嬉しいポイントも。
上の画像の様に、キャリア+パニアバッグを使用する様な余裕のあるパッキングなら、化学繊維のモデルも視野に入ってくるでしょう。長期間使用する自転車旅でも、化学繊維の良さが発揮されるかも知れません。
ダウンでも高グレードを選ぼう
ダウンにもグレードがあり、シュラフの性能が大きく異なります。
グレードは数値で表され、単位はフィルパワー(FP)。ダウンのふくらみ度合を表す数値で、高いほど軽量で暖かいシュラフが作れます。自転車キャンプで使うなら、最低でも600FP、おすすめは750FP以上です。
FPが高いほど高価になる傾向がありますが、出来るだけ高いFPのシュラフを選んでおいた方が満足度が高いです。上の画像のシュラフは全て800FPですが、筆者はもっと軽く小さくしたいと思っているほどです。
初めの1つは「3シーズン用」が便利
自転車キャンプ用にシュラフを1つ持つなら、対応温度が5℃前後の「3シーズン用」がおススメです。
対応温度って?
シュラフには、メーカーが公表している対応温度があります。シュラフ選びの際に参考になる値です。
・快適温度:この気温以上であれば、快適に睡眠できるという目安
・使用可能温度:この気温までは、工夫次第では何とか睡眠できるという目安
キャンプをする季節や場所に応じて、対応しているシュラフを選びましょう。基本は「快適温度」の中で使用が出来るスペックのモデルを選びます。また、使用可能温度を下回る環境での使用は、危険ですので推奨できません。
ただし、寒さの感じ方は個人差が大きく、メーカーによって測定方法の基準が異なりますので、あくまで目安です。不安な方は、なるべく対応温度に余裕を持ったシュラフ選びをすると安心でしょう。
「3シーズン用」が使いやすい
シュラフを対応温度別で区分けすると、3種類のグループに分かれます。
・夏用:快適温度が10℃前後
・3シーズン用:快適温度が0~5℃
・冬用:快適温度が-5~-10℃くらい
この中で、最初のシュラフとしておすすめなのは3シーズン用。最も対応できる季節が長く、携帯性と保温力のバランスが良いです。
3シーズン用シュラフの使用期間は、おおよそ3~11月くらい。
真冬にキャンプをする場合を除き、3シーズン用シュラフがあれば基本的には対応できます。暑い時期はシュラフを軽くかける等の使い方もできますので、ほぼオールシーズン使用できると考えてよいです。
おすすめシュラフ(3シーズン)
では、おすすめの3シーズン用シュラフをご紹介しましょう。
モンベル/シームレスダウンハガー800 #3
非常に人気が高く、定番ともいえるシュラフ。優等生的な存在で、バランスよく高性能、価格も高コスパです。
高品質のダウンに加え、縫い目を無くした独特の構造により、軽量性と保温性を両立。「スーパースパイラルストレッチシステム」によりシュラフが伸びるため、寝心地も快適です。数年前のアップデートで、ファスナーが噛み込みにくいタイプに変更されたのもポイントです。
*women’s、レギュラー、ロングモデルの3サイズ展開あり。
・重量:531g
・収納サイズ:∅13×26cm
・使用綿:800FPダウン
・快適温度:4℃
・使用可能温度:-1℃
イスカ エアプラス280
価格・対応温度・重量のスペックでモンベルのダウンハガーに並ぶ、高性能でバランスの良い製品です。
「イスカ」はシュラフを手掛ける国内ブランド。軽量性と保温性を両立していることはもちろん、身体に沿った「3D構造」や、足元に多くダウンを封入した「フットボックス」が魅力です。
重量 | 550g |
---|---|
収納サイズ | φ14×24cm |
使用綿 | 800FPダウン |
対応温度 | 2℃(快適か使用可能か不明) |
ナンガ/ミニマリスム180
このミニマリスム180は、世界最軽量級のシュラフです。
日本のブランド「ナンガ」は、製品の永久保証を掲げていることで有名で、使用期間を問わず保証として修理を受けられます。値段は張りますが、永久保証のあるナンガでこそ、最高峰のダウンを使用したモデルを試す価値があるでしょう。
*ショート、レギュラー、ロングの3サイズ展開あり。
・重量:325g
・収納サイズ:φ13×25cm
・使用綿:930FPダウン
・対応温度:0℃(ナンガ基準で算定)
タケモ/スリーピングバッグ3
重量はかさみますが、その分価格を抑えることが出来るモデルです。
低価格ながらに高品質なシュラフを製造している「タケモ」の3シーズン用シュラフで、750FPのダウンを使用しながらも驚きの価格を実現しています。
・重量:730g
・収納サイズ:φ15×28㎝
・使用綿:750FPダウン
・対応温度:2℃(最低使用温度)
イスカ アルファライト 500X
化学繊維の綿を使用した3シーズン用シュラフです。
ダウンモデルと比較して重量増加になりますが、湿気に強く、価格も抑えることが出来ます。
重量 | 1,000g |
---|---|
収納サイズ | φ18×34cm |
使用綿 | 化学繊維 |
対応温度 | 0℃(快適か使用可能か不明) |
目的と工夫次第では「夏用シュラフ」もあり
一般的におすすめなのは3シーズン用ですが、使用目的がはっきりしている場合や工夫を凝らすのが好きな方は、軽量性を優先して夏用シュラフという選択肢もあります。
使用する期間が限定的な場合
使用する期間が6~9月といった暖かい季節のみの場合は、あえて3シーズン用を選ぶ必要はありません。
ゴールデンウイークや紅葉の季節でも使用したいなら3シーズン用がおすすめですが、肌寒い季節には使用予定がないなら軽量な夏用シュラフが良いでしょう。
また、使用する場所によっても気温はかなり変わります。北海道や東北、標高の高い山中で使用せず、都市圏に近い平野部なら夏用シュラフの活躍する期間は長くなります。
少し寒い時期は、保温アイテムを追加
詳しくはこの記事の最後にご紹介していますが、夏以外の時期でも、他の保温アイテムと組み合わせることにより、夏用シュラフで過ごす方法もあります。
例えば、足の保温をする象足、シュラフを覆う保温カバー、カイロなどです。
しかし、重量増化や煩わしさといったデメリットもありますし、気温ごとの自分に合った装備を見つけるまでの経験がものを言いますので、初心者の方には基本的にはおすすめしません。季節に囚われずキャンプを楽しみたい方は、初めから3シーズン用を持っておいた方が便利です。
逆に、工夫を凝らすことや、オリジナリティのある装備が好きな方は、夏用シュラフの選択肢も楽しめるでしょう。
おすすめシュラフ(夏用)
では、夏用のおすすめシュラフをご紹介します。
モンベル/シームレスダウンハガー800#7
先ほどご紹介したシームレスダウンハガー800の夏用モデルで、性能のバランスが良く、夏用シュラフの優等生的なポジションです。
#3より二回りほど小さくなりますので、パッキングがし易くロードバイク等で軽快に走るキャンプとの相性が良いでしょう。真夏の北海道キャンプツーリング等でも活躍するスペックです。
・重量:391g
・収納サイズ:φ12×24cm
・使用ダウン:800FPダウン
・快適温度:11℃
・使用可能温度:7℃
イスカ エアドライト140
軽量・コンパクト性を追求した夏用シュラフです。
フードやサイドジッパーを取り除いた簡易的な構造ですので、シュラフとしての機能性は落ちますが、その分軽量に仕上がっています。軽量・コンパクト性を追求したい方におすすめな他、3シーズン用シュラフと組み合わせて真冬に対応させるといった活用方法もあります。
重量 | 300g |
---|---|
収納サイズ | φ10×18cm |
使用ダウン | 750FPダウン |
対応温度 | 8℃(快適か使用可能か不明) |
OMM マウンテンレイド 100
化学繊維ながらに、圧倒的な軽さを実現しているシュラフです。
湿気に強い化学繊維の特徴を生かし、天候の悪い日の使用や、ツェルトやシングルウォールテントといった結露し易い環境での使用に向いています。
重量 | 380g |
---|---|
収納サイズ | φ22 x 15 cm |
使用綿 | 化学繊維 |
快適温度 | 14℃ |
使用可能温度 | 3℃ |
コンプレッションバッグがあると便利
シュラフを収納する際、付属のスタッフバッグよりも小さくしたい場合もあるでしょう。そんなときは、コンプレッションバッグを使用すれば、より小さくまとめることが出来ます。
重量増加にはなりますが、コンプレッションバッグで締めあげながら収納すれば撤収の時間短縮にもなるため、収納サイズに悩んでらっしゃる方にはおすすめです。
イスカ ウルトラライト コンプレッションバッグ
生地 | ナイロン100% |
---|---|
サイズ | 直径15×40cm |
重量 | 120g |
シュラフ以外の保温方法にも注目!
ここまでシュラフのみでの保温を前提にお話ししてきましたが、睡眠時の保温はシュラフ以外でも可能です。少し小技的な内容ですが、幅広い季節に快適な睡眠をするため、欠かせないポイントでもあります。
気温がシュラフの対応温度よりも低い場合は、シュラフ以外の装備で保温力を上げてみましょう。
・ダウンジャケット&パンツ
・シュラフカバー、エマージェンシーシート
・テント、マットの保温力
・カイロや湯たんぽ
保温性の高い大きなシュラフを1つ持つより、小ぶりなシュラフ+ダウンジャケット等に装備を分散させた方が、暖かい時期にも最適な装備に出来ますし、装備1つのサイズが小さくなるためパッキングし易いメリットがあります。
ただし、装備の数を増やしすぎると煩わしさに繋がりますし、総費用がかさみ、総重量も暖かいシュラフ1つより基本的には重くなります。
自分にあったシュラフを見つけて、快適な自転車キャンプを
以上、自転車キャンプにおすすめな、シュラフの選び方と製品をご紹介しました。
自転車キャンプに行く季節やパッキングのスタイルなどを考えたうえで、ご自身に合ったシュラフを選んでみてください。