トルクレンチとは
ロードバイクなどのスポーツバイクのメンテナンスでは、六角レンチなどを使ってボルトを締めつける作業が多くありますよね。締め付け作業の時、最後どれくらい締め付けて良いかわからない事も多いと思います。
適切な締め付け強度がわからないと、締めすぎてしまいパーツやボルトが壊れてしまうことも。トルクレンチは、ボルトをどれくらいの強度で締めているかの強度(トルク)を数値で確認することができる工具です。
締め付ける力の数値「トルク」
ちなみに「トルクレンチ」の、“トルク”とはボルトやナットを締める時に工具にかかる力の数値です。単位はN・m(ニュートンメートル)が一般的に使われています。
トルクレンチで適正トルクの締め付けを
一般的な六角レンチで作業する場合、締め付ける強さは手の感覚になってしまいます。その時、丈夫な金属なパーツであれば、「しっかり締めておけば大丈夫!」と言った、感覚頼りの作業でした。
ですが、近年の自転車パーツはカーボン・チタンなどの繊細な素材や、ディスクブレーキなど緻密な調整が必要なものが増え、トルクを確認することが大切になってきています。
トルクを適正にしないとカーボンパーツが…
カーボンは軽く高強度・高剛性で、自転車パーツの素材としては最も適している素材です。ですが、その反面、不均等な力には弱いのでボルトの締めすぎで、変形やヒビ入る場合があります。強く締めすぎてパーツを破損させてしまったり、破損を警戒して締めつけが足りないとパーツがずれるなどのトラブルが起こる可能性があります。
基本は六角レンチと併用
締め付け強度がわかるトルクレンチですが、トルクレンチはあくまで、「締め付ける力を一定にする」「締め付けたボルトのトルクを測定する」工具です。
基本的な締め付け作業、緩める作業は、一般的な六角レンチやアーレンキーで行い、最後にトルクレンチを使うか、締まっているボルトに使って数値を確認しましょう。
自転車のどの部分で使うか
では、自転車ではどの部分でトルクレンチを使うのでしょうか?
ステム・コラム
カーボンやチタンを使うことが多いステム・コラムは、4点のボルト締めつけの偏りを防ぐためにもトルク管理が大切です。
シートポスト
カーボンシートポストも締め過ぎると、変形したり破損する可能性があります。
ボトムブラケット・クランク
クランク・ボトムブラケットにもメーカー指定トルクがあります。
ブレーキマウント・ディスク
緻密なセッティングが必要なディスクブレーキも、トルク管理をしてセッティングの精度を高めることができます。
他にこんなパーツも
バンド式のフロントディレーラーも、シートチューブを変形させる恐れがあるので、トルク管理が必要です。また、ボトルケージのようにカーボンフレームに直接、ボルトをねじ込むときも締めすぎるとネジ穴が破損するので、トルク管理をするといいでしょう。
トルクレンチの種類
トルクレンチにも種類があり、使用方法はそれぞれ違います。使用方法に合わせて選びましょう。
プリセット型
BIKEHAND YC-617-2S
バイクハンド YC-617-2S プリセット型トルクレンチ
プリセット形トルクレンチは、主にグリップ部分が回転するように作られていて、そのグリップを回すことで最初に締め付けトルクを設定します。プリセット形トルクレンチでボルトを締めると、設定したトルク以上の力がかかるとカチッと音がして、設定した強度で締め付けたことを知らせてくれます。
設定可能トルク | 2〜24Nm |
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付属ビット | ショートタイプ3・4・5・6・8・10mm、ロングタイプ5mm、トルクスT20・T25・T30 |
プレート型
GIZA PRODUCTS YC-637
プレート型トルクレンチは本体に目盛りが付いていて、力をかけた時に本体の計測部分がたわみ、そのたわみ幅でトルクを計測するレンチです。直読式と呼ばれる方式のひとつになります。
トルク測定範囲 | 1 ~10Nm |
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付属ビット | 六角2・2.5・3・4・5・6・8mm トルクスT10・T25 プラスドライバー |
サイズ | 60x30x33mm(トルクレンチ本体) |
重量 | 118g |
デジタル型
KTC 9.5sq. デジラチェ トルク ラチェット
デジタル型も直読式の1種で、本体のセンサーでトルクを検知し、数値をデジタル表示するタイプです。精度の高いトルク管理が可能ですが、価格は高いモデルが多いです。
設定可能トルク | 12〜60Nm |
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サイズ | 217mm |
重量 | 400g |
トルクレンチの使い方
それでは、自転車用工具として多く販売されているプリセット型トルクレンチの使い方を説明しましょう。
1.締め付けるボルトのトルクを確認する。
ステムなどには最大トルクが印字されている場合が多いですが、取扱い説明書に記載されているものもあるので、必ず確認しましょう。わからない場合は検索すると参考値を調べることがもできます。
2.締めるボルトとサイズの合ったビットを確認する
締め付けるボルトと、使用するビットのサイズを確認しましょう。
3.ビットソケットをトルクレンチにセットする。
ビットソケットをトルクレンチにセットしましょう。ガタつきがあると精度が悪くなったり、トラブルの原因にもなるので確認しましょう。
4.トルクレンチのロックが外れているかを確認する。
ほぼ全てのトルクレンチには、設定値がずれないようにロック機構があります。ロックをしたまま設定値を操作すると破損の原因となりますので、確実にロックを解除しましょう。
5.締め付けたいトルク値をセットする。
シグナル式トルクレンチには、主目盛と副目盛があり、上の縦に印字されているのが主目盛で、下の横に印字されているのが副目盛になります。今回は5Nmに合わせたいので、主目盛を4、副目盛を1に合わせます。
6.トルクレンチでボルトを締める。
確実にボルトにセットし、ヘッド部がずれないように支えながら力をかけましょう。カチッと音がしたら設定したトルクでボルトが締まっています。何度もカチカチして締めてしまうとオーバートルクになりますので、一度だけカチッと音がしたら締め付けはやめましょう。
トルクレンチで注意すること
精密な機械でもあるトルクレンチは、通常の工具よりも注意点が多くあります。
トルクレンチ選び
トルクレンチ自体も精密機器なので、精度の高い管理を行うなら高価なトルクレンチが必要です。そこまで精密な管理をするわけではなく、目安として使用するなら、比較的安価なタイプの製品でも十分、数値を確認することができます。
対応するソケットにも注意!
トルクレンチ本体の、レンチをセットする部分はスクエアソケットと呼ばれています。スクエアソケットにもサイズがあるので、ビットやソケットを別で購入する場合は対応するサイズや、変換スペーサーがあるかどうかを確認しましょう。
トルクレンチの保管と精度を保つために定期点検を
プリセット型トルクレンチは数値を設定するために内部にスプリングがあります。スプリングに負荷がかかった状態で保管すると精度が狂ってしまうので、使用していないときは設定値を一番低くしておきましょう。
また、精度を保つためにメーカーで定期点検を行っている製品もあるので活用しましょう。
トルクレンチを活用しよう!
自転車パーツをトルクレンチを使ってメンテナンスすることで、パーツのセッティングなどがより正確に行えるので、パーツを長持ちさせ安全な走行をすることに繋がります。セルフメンテナンスでも勘に頼っていた部分が数字として見ることができれば、より安心感が持てますね。