ツール・ド・東北ってどんなイベント?
宮城県を舞台に毎年9月に開催される『ツール・ド・東北』は、東北の豊かな自然を感じながら走る、国内屈指の人気ファンライドイベントです。
順位を競うレースではなく、復興支援と震災の記憶を未来に残すことを目的にしています。
今年のコースは、宮城県石巻市をスタートしてリアス式の海岸を巡り、北上川沿いを遡上して、再度石巻市へゴールするコース。また、なによりも一番の目玉は、「三陸グルメ」を楽しめることです。
2022年、3年ぶりのリアルイベント開催
2020、2021年はコロナの影響で、オンラインのみでのイベントでしたが、2022年は、2019年以来、3年ぶりに本来のツールド東北の姿が帰ってきました。
9月18日(日)に開催され、敬老の日を含む三連休の中日だったので、前日や後日に移動や観光もしやすい日程となっています。
今年は参加人数の制限も行っていたため、例年の半数以下である1,351名の参加となりました。
2022年は、2つのコースを用意
2022年は2つのコースから、自分の走りたいコースが選べます。
100kmと65kmと初心者でも選びやすいコースが設定されています。2つのコースともに、スタートとゴール会場はセイホクパーク石巻(石巻市総合運動公園)です。
北上フォンド:100km
走行距離:約100km
受付時間:5:00〜8:00(時差入場)
スタート時間:6:30~順次
ゴールクローズ時間:17:30
モデル走行タイム:約6時間(平均19km/h)
女川・雄勝フォンド:65km
走行距離:約65km
受付時間:8:05〜9:05(時差入場)
スタート時間:9:20~順次
ゴールクローズ時間:17:30
モデル走行タイム:約4時間30分(平均16km/h)
コロナ禍前は、220kmコースを含む5コースから選べましたが、コース数を減らしての縮小開催になりました。少しずつ以前のような大きなイベントになることを楽しみにしています。
参加方法
2種類のエントリー方法、「応“縁”ライダー」「一般ライダー」があります。応“縁”(おうえん)ライダーには数多くの特典があります。
一般ライダーは、過去、先着順でのエントリー方式の年もありましたが、2022年は、抽選方式のエントリーとなっています。
応“縁”ライダー
特典①必ず当選
一般ライダー枠の場合、先着方式だと真っ先に埋まってしまったり、抽選方式だと当選確率が低いツール・ド・東北。とくに今年のように参加人数の制限がある場合には、さらに当選確率が低くなります。「応“縁”ライダー」なら必ず当選して、参加することができます。
特典②特製サイクルキャッププレゼント
非売品のツール・ド・東北特製サイクルキャップをプレゼント。
特典③オフィシャルサイクルジャージを特別価格で販売
2022年大会オフィシャルサイクルジャージを特別価格で購入できます。当日にはオフィシャルサイクルジャージを着て、走っている人を大勢見かけました。
特典④大会パンフレットに氏名を掲載
希望者のみが対象ですが、応“縁”ライダーとして、大会パンフレットに氏名を掲載されます。
参加費
北上フォンド:34,110円(税込み)
女川・雄勝フォンド:31,920円(税込み)
*インターネット決済代行手数料込み。
先行エントリー期間
2022年4月20日~5月11日
一般ライダー
2名1組の「ペアエントリ―」と、中学生のお子さまと保護者の方が2名1組でエントリーできる「親子エントリー」も準備されています。
参加費
北上フォンド:16,730円(税込み)
女川・雄勝フォンド:14,540円(税込み)
*インターネット決済代行手数料込み。
エントリー期間
北上フォンド:2022年5月10日~5月30日
女川・雄勝フォンド:2022年5月12日~5月31日
*コースによってエントリー期間が異なる。
会場アクセス
スタート・ゴール地点:セイホクパーク石巻(石巻市総合運動公園)
・所要時間は目安です。各経路の最新情報を事前にご確認ください。
どんな準備が必要?当日までの流れを確認
①まずは宿の手配
当日は、早朝スタートが多いツールド東北。遠方から参加する多くのライダーは宿泊が必須です。スタート地点の会場から近い人気の宿泊施設などは、当選結果後にすぐに埋まってしまう可能性もあるので、なるべく早い段階で宿を決めましょう。
②会場までの移動手段と自転車の輸送方法を決めよう
車で行くか電車や飛行機などの交通機関で行くか、そして、自転車を持っていくか、配送するのか検討しましょう。
車で自転車を積む場合や、交通機関を使って輪行しないのであれば、自転車を配送する必要があります。自転車の配送は、大会会場や宿泊先で受け取れる「カンガルー自転車イベント便」が便利なので、活用しても良いでしょう。
カンガルー自転車イベント便はこちらツール・ド・東北公式サイト
③自転車装備のチェックと持ち物
参加にあたりヘルメットやグローブなど、安全に走行する上での最低限の装備が必要です。忘れがちなのが『ライト』と『ベル』。昼間に走るツール・ド・東北ですが、コース内でトンネルを走る場面もあり、日中と言えども自発光式のライト(フロント、リア)は必須です。ベルも道路交通法で取り付け義務がありますので、必ず装備しましょう。
また、ツール・ド・東北は補給ができる多くのエイドステーションがありますが、水分を補給するボトルや補給食も準備しましょう。
④さあ、いよいよ当日
当日の朝、自転車が宿にあるライダーは、会場まで自転車で移動するのが一般的です。会場近くに駐車場は無く、車で会場まで移動は出来ないので注意しましょう。
最後、持ち物などをチェックしたら、完走目指していざスタートです!
実際に参加してみました!
今回、筆者が選んだのは100kmコースの北上フォンド。今回の最長コースで、リアス式海岸のアップダウンや、海の景色を楽しめるコースです。
スタートまで
ゼッケン番号別に、指定の受付時間が設けられています。筆者は一番早い、朝5:00~5:45のセクションでした。朝早いためか、時間差入場の効果か、意外とライダーの数は少ない印象でした。
会場にはたくさんのサイクルラックが準備されているので、自分の自転車を余裕をもってラックに掛けることができます。
スタート前に3点確認しておきましょう。1点目は、機材に問題ないかチェックです。オフィシャルメカニックと、サイクル用品販売のブースも朝から開いています。
走行前の機材トラブルがあった場合、まずはこちらのブースに立ち寄りましょう。オフィシャルメカニックに確認してもらえると一安心ですね。
2点目は、服装や装備を整えましょう。その日の気温や体調に合わせて、どんなアンダーウェアやジャケットを着るかを確認しておきましょう。手荷物預かり所や更衣テントも併設されているので、当日の朝の気温に合わせて着替えたり、余った着替えを預けることもできます。
3点目は、安全走行のための事前準備です。
スタートとゴール確認するためのビーコンの取付、ヘルメットに貼る「安全宣言シール」の貼付、安否確認メールの登録がされているか、スタート前に確認しておきましょう。
機材、ライダーの服装、安全走行の準備のチェックができたら、スタート前の出走前点検をしてもらいましょう。
スタートラインに着く前に、車両レギュレーションを確認されます。車両タイプやハンドル形状、ライトの点灯確認がされました。
レギュレーションについてはこちら
公式サイト
スタートラインに着くと、開会式が始まりました。
3年ぶりのリアルイベントとあって、開会のあいさつにも熱がこもります。
スタート前にみんなで風船を空へ飛ばして、盛り上がります。お祭り直前のようなそわそわした雰囲気です。
ゲストの宮澤崇史さん、別府史之さん、別府始さんを筆頭に、ライダーさんがスタートラインに並びます。
さあ、6:30。
3年ぶりのツール・ド・東北がスタート!
大勢の観客からの声援を受けて、第一グループが出発します。ライダーも見送る人も嬉しそうな表情です。本当に久しぶりのツール・ド・東北が開催されました。3分間隔で20人ほどの時間差でスタートしていきます。
スタート~雄勝エイド(0~40km)
天気は薄曇りで暑すぎることなく、気持ちがいい。9月の宮城は暑すぎることもなく、こういったイベントにピッタリかもしれません。
最初は20人グループで走るため、お互いに声をかけてブレーキや進行方法を後方に伝えていきます。初めて走る人とでも、こうしてコミュニケーションを取って、一緒に走れるのがイベントの醍醐味ですね。
コース上には、スタッフさんが案内をだしていたので、道を間違う心配がありませんでした。
大きなアップダウンもなく、田園風景の中を進むと、着いたのは16km地点の女川エイドステーション。
広い会場でゆったり休めます。
水分補給用のカップとペットボトルが配布されていました。
ペットボトルごともらえるので、自分のボトルにつぎ足すこともできてありがたいです。
さんまのすり身が入った女川汁が振る舞われます。出汁が効いていてとてもおいしかったです。
トイレ、救護センター、メカニックサポートブースがあり、万全の準備がされています。
女川から北上し、海岸線を走るコースになります。
そして40km地点の雄勝エイドステーション。
ここではホタテの網焼きがいただけます。今朝獲ってきたばかりの地元産ホタテを、網焼きで豪快に焼いてくれるのはツール・ド・東北ならではの光景です。
食べやすいサイズにカットしたホタテが、紙コップに入っています。少しでも食べやすいように工夫されていて、疲れているライダーには嬉しい限りです。新鮮で肉厚なホタテから出てくる旨味が、疲れた体を癒してくれました。
ここから先は2つのコース(北上フォンドと女川・雄勝フォンド)に別れて、北上エイドを目指して北上します。
雄勝エイド~北上エイド(40~72km)
コースを走っていると、応援してくれる人たちが多いことに気づきます。家の前に立って声をかけてくれる地元の人、看板を用意して声援を挙げてくれる方々など、たくさんの人に声を掛けられます。
その中でも、大漁旗がずらっと並んだ光景には驚きました。大量の大漁旗に見送られながら、走る経験ができるのはこのイベントだけではないでしょうか?こうしたお祭り雰囲気を味わえるのは、リアルイベントならではのいいところです。
グループで走ったり、ソロで走ったり、それぞれのスタイルでイベントを楽しんでいます。
62km地点の神割崎エイドステーション。ここが100kmコースの折り返し地点です。
ちょうどお昼時、いただくのは南三陸シーフードカレー。三陸の名物である「ほや」がライスにトッピングされる珍しいカレーです。カレールーの中にはサーモンフライが隠れていて、どこから食べても三陸の海の幸が味わえる美味しいカレーでした。
さあ、折り返しです。リアス式海岸にはいくつもの湾があり、海を見ながら走れることも魅力です。
アップダウンが大変な中でも、楽しそうに走っていくライダーさんばかりでした。
山も海も楽しめるいいコース設定ですね。
そろそろ疲労が溜まってくる72km地点。ここで北上エイドステーションに立ち寄ります。
疲れた体に嬉しい「うにめかぶ」。こちらも三陸の名産品です。いい加減の塩味で、つるつるっと食べれちゃいます。
スポーツカステラもいただきます。疲れた体には糖分も必須です。
筆者だけではなく、みなさん疲弊してくる時間帯。休憩所で休んでいると、「ここからは逆風になるのでは?」と話している人がちらほら。ここから先は川沿いで平坦なのはいいですが、逆風が吹かれるとしんどい区間。あと一踏ん張り頑張りましょう。
北上エイド~ゴール(72~100km)
震災の跡地である大川小学校を訪問しました。河口近くの立地にあったために、川からの津波によって多くの被害が出た小学校です。「復興支援と震災の記憶を未来に残すためのイベント」をコンセプトにしているツール・ド・東北。自転車で走ってグルメを楽しむのももちろんいいのですが、震災の記録を知るためにも、立ち寄る価値のある場所だと感じました。
大川小学校からゴールまでは、長い河川敷の道です。噂通り逆風が強い区間でした。
北上川を遡上するルート取りで、風を遮るものもなく、逆風を浴び続けます。台風14号の影響で宮城も風が強く、風速が約7m/sと、自転車で走るのには厳しい風量です。近くを走っている人と協力して、車列を組んで先頭交代しながら体力の消耗を抑えます。
ラストは市街地へ戻ってきて、力を出し切ってゴール。
この達成感は、格別です。
参加してみた感想
「初めてのイベント参加の人も楽しめるイベント」だと感じました。参加前は、走力を求められる場面も多いイベントかもしれないと思っていました。しかし、参加者のハードルをグッと下げて準備してくれている印象です。
というのも、各スタッフさんのサポートが万全でした。
救護スタッフの方も自転車で走っているので、なにかあった際にもすぐに駆け付けてくれます。実際にコースわきに止まっているライダーさんに駆け寄っていくスタッフさんも見かけました。
サポートライダーだけではなく、サポートカー、メカニックカー、エイドには救急車など数多くのサポート車両も用意されていました。トラブルにすぐに対応できる体制が敷かれていました。
道案内をしてくれるスタッフさんや案内板の数の多さにも驚きました。コースを覚えていなくても、道に迷わないように各ポイントで的確な案内を出してくれていました。
さらに、道幅が狭い下り坂では、「一時的な自動車片側通行」を実施していました。ライダーさんを一時的にストップさせて、車の交互通行をして、交通の安全を図っていました。
エイドではスタッフさんの声掛けの多さや、消毒の徹底を感じていました。どこに自転車を置いていいのか、どこで補給水やご飯をもらえるのか、よくわかる案内を出してもらっていました。
そのうえ、エイドで出されるグルメの量も多すぎず少なすぎず、ピッタリ計算されている印象です。補給食を一切食べることなく、走り切ることができたのも、各エイドでの補給量が完璧だったからでしょう。
細かな点まで配慮されていて、ライダーも気持ちよく走れるイベントでした。初めてイベントに参加する人に配慮されているイベントだと強く感じられました。
3年ぶりとは言え、こんな大規模なイベントが復活できて本当によかったな、と思いました。参加するだけで元気をもらえる素晴らしいイベントでした!