日本生まれの自転車ブランドFUJIが打ち出すグラベルロードバイクJARI 1.3 2021。
これまで様々なシチュエーションで乗り込んできました。林道ライド、キャンプツーリング、雪道…期待以上の走りで応えてくれる楽しいバイクです。
この記事では、「JARI1.3の特徴」と「実際に乗ってみた感想」の2部構成で、JARI1.3がどんなバイクなのか紐解いていきましょう。
ちなみにJARI1.3は完成車で販売されており、今回も完成車状態で組まれたパーツをベースにご紹介していきます。
JARI 1.3とは?
フレーム素材 | アルミ |
メインコンポ | SRAM APEX |
ブレーキ | 油圧ディスク |
変速 | 1×11速 |
タイヤ | 700×40C |
参考重量 | 10.3kg |
参考価格 | 242,000円 (税込) |
FUJIのJARIシリーズは、グレード順に、1.1>1.3>1.5>1.7と名前が付いています。2021モデルは、どのモデルも完成車での販売です。
JARI CARBON 1.1は最上位モデルです。カーボンフレーム、11×2速と幅広いギア比、油圧ディスク仕様と、完成度高いのが特徴ですね。
JARI1.3だけがSRAMコンポで1×11速が搭載されています。チャレンジングな走りでも支えてくれるので頼れる一台だと思います。
JARI1.5、1.7は廉価版として販売されていますが、オフロードを走るには十分でしょう。詳しくはFUJI公式サイトでチェックしてみてくださいね。
今回ご紹介する、JARI1.3はフレーム素材は剛性の高いA6-SLを採用しています。特徴的なのは左右非対称のチェーンステーです。負荷のかかりやすいドライブ側と負荷の少ないノンドライブ側の剛性バランスを取るための設計になっています。
それでは、JARI1.3の車体の特徴をみていきましょう。
映える“マット調のシルバーカラー”
カラーはMatte Gunmetal(マット ガンメタル)という光沢感のないシルバー色。
メカメカしい色合いは、自然の中では浮かび上がるような色で、写真でもとても映える色です。
自然色に溶け込まないカラーリングが素敵ですよね。
シートステイに差し色で水色が入っているのが気に入ってます。茶目っ気があってかわいいんです。
日の光が当たると、きらりと光るのも好きなポイントですね。マット調だけど完全マットじゃない色味で、美しく目に映ります。
堅牢なアルミ素材
フレームにはA6-SL Super-Butted アルミニウムが採用されています。
しなりが小さく、衝撃にも強く、堅牢性を感じます。フレームがアルミなので、飛び石のヒットや、不意の転倒の際にも強く、「フレームへの深刻なダメージが入りにくい」という安心感があるのもいいところです。
各チューブの繋ぎ目も美しいです。スラグもなくきれいに仕立てられています。
フォークはカーボン製のC10 monocoqueが搭載されています。
色味はマット調のブラックです。この写真では40Cのタイヤを履いていますが、十分なクリアランスがあります。50Cまでは履けるかもしれません。
コンポはSRAMのフロントシングル
SRAM APEX 1×11(スラム エイペックス ワンバイイレブン)が採用されています。
JARIシリーズの中でも、1.3のみがSRAMコンポとなります。オフロードでは操作のしやすいSRAMをチョイスするあたり面白い仕様となっています。
シフター
変速はリア11速のみのため、シフターは右手側のリアディレイラー用しかありません。
その操作は、いたってシンプルです。
浅く押すとシフトアップ。
深く押すとシフトダウン。
というようにシフトアップ/ダウンが1つのボタンで完結する操作になっています。これをダブルタップレバーと呼びます。ボタンの押しミスが起きないため、荒場の多いグラベルでは大いに助かります。
今回のSRAM APEXモデルだけではなく、SRAMはほかのモデルでも機械式シフターがこのダブルタップレバーなので、オフロード向けのコンポはSRAMが合うかもしれません。
ディレイラーとワイドギア
リアディレイラーは最大42Tまで11速変速。
すでに完成車状態でスプロケ11-42Tがついているので、リアディレイラーのポテンシャルを最大限使えます。「多少の調整ズレがあっても変速できる」と言われるSRAMの特徴もあってか、乗車中のギアの不調はほとんど起こりませんでした。
スプロケットカセットはSRAM PG-1130。
11枚の歯の構成:11-13-15-17-19-22-25-28-32-36-42T
フロントは40Tなので、ローギアを42Tまで落とせば、ギア比を1以下にできるセッティングになっています。ギア比が0.95~3.8と広く、パワーのない私にとってこれは大変ありがたい構成です。
またフロントディレイラーがないシングルギアなので、
・チェーンリングを小さくできる(石にヒットしにくい)
・チェーン落ちしにくい
・掃除がラク
というメリットがあります。掃除がラクなのが個人的にうれしいです。
ブレーキシステム
SRAM APEXの油圧ディスクブレーキシステムです。
シチュエーションに依らず制動力を発揮してくれるディスクブレーキはいい選択だと思います。
油圧のため、指一本でもブレーキをかけれらるのが地味に助かります。ロングダウンヒルでも手が痛くなりにくいのには助けられています。
またディスクローターは160mm径が標準でついています。
しかしこのシムのおかげで、140mm径にも変換可能です。こういうユーザー視点の細かな気配りがありがたいところです。
シフト/ブレーキのワイヤーは内装されています。
フロントブレーキはフォーク内へ。
リアケーブル類はBB付近から出ています。
内装されていることで見た目がきれいなことと、掃除がラクなことがメリットですね。
BBは互換性あるFSA BB386 EVO sealed-BSA threadです。パーツの入手性、メンテナンス性などの面倒はなさそうです。正直なところ、「独自規格じゃなくてよかった」と安心しました。
堅実なホイールとタイヤ
ホイール:WTB ST i23, 32/32h(チューブレスレディ)
タイヤ:WTB RADDLER 700*40C
JARI1.3は700C、650Cの両方が履けます。最大対応タイヤ幅は700で45C、650で50Cです。グラベルロードバイクとしてはここまで太いタイヤが履ければ十分ではないでしょうか。
タイヤのWTB RADDLER 700*40Cも走りに十分貢献してくれます。短いノブに40Cという「外さない」チョイスになっています。ただし、このタイヤを取り外すのには大変苦労しました。タイヤのとリムの間が固着しており、片輪外すのに2時間かかりました。もしかしたら個体差によるものかもしれませんが、外す際には十分お気をつけてください。
オリジナルの“ハの字”ハンドル
正面から見ると「ハの字」型に開いています。
JARIシリーズのために特別に作られたOVAL製のハンドルです。
ブラケットポジションでC-C420mm、25度アウトスウィープ、125mmドロップ、4度バックスウィープ。
「上ハンが邪魔せず、下ハンを握れる」ポジションだと感じました。加速、登り、直線ダウンヒルの際には下ハンが活躍してくれます。リーチ367mm(52サイズの場合)と短く、下ハンを遠くに感じないのもこのバイクの特徴です。
未舗装路でのバイクコントロール性を考えて、フレームからハンドルまでオリジナル設計されているのだと感じます。
使い方は無限大!パッキング拡張性
JARI1.3はダボ穴がいろんな箇所に準備されています。
トップチューブ。ボトルを差してもいいし、ダボ穴固定タイプのトップチューブバッグも付けられますね。
ダウンチューブ下。ここはツールボトルをつけるのがいいですね。
フォーク横。ここに積載することで、バイクの前方に荷重を掛けられます。ハンドルの振動を小さくしてくれるので、意外と重宝する場所です。
シートステイにもあるので、リアエンドのダボ穴と組み合わせてキャリアも取り付けられるでしょう。パッキングの可能性にあふれています。
パッキングせずに走るのもヨシ、たっぷり積載するのもヨシ、と幅広い選択肢があるのがうれしいですね。
キャンプ道具を積み込んだ姿も絵になります。やはりオフロードのバイクは、積載してなんぼです。
独創的なショルダーパッド
トップチューブの下面にショルダーパッドがついています。走行不可能なエリアでバイクを担いで歩くとき向けに開発されたようです。
ただ、正直クッション性は、あまりありませんでしたね。
キャンプ道具を積んだ状態の15kg以上あるバイクを肩にかけて、起伏の激しいルートを歩きました。肩にめり込んでくるので、担いでいる間はずっと痛かったです。このパッドはクッションより滑り止めとして活用するほうがいいと気づきました。肩にパッドを当てて、自転車左側を背中に乗っけてやると、いくぶんか痛みがマシになりました。
また、意外なところで、自転車を家の中に入れる際に、パッドを重宝しています。パッド部分を握ると自転車のバランスがとれて安定して運べるためです。実はなかなか便利だと気付きました。
またトップチューブとシートチューブの繋ぎ目が、三角形に盛られています。
これも担ぎの負担を減らしてくれる部分で重宝しています。担ぎやすいフォームを作るための一助になりありがたいです。
ここまで、JARI1.3の特徴を紹介してきましたが、ここからは「約1年間乗ってきた感想」を紹介しましょう。
その①パッキングすることで真価を発揮
あえて感覚的に言うと、「バッグをつけて完成するバイク」です。
荒れた道では顕著ですが、空荷状態ではバイクが暴れやすい印象があります。路面のギャップを拾い、上滑りしたような走りだと感じました。妙な”チグハグさ”があるようです。しかしサドルバッグやフォーク横のバッグをつけることで、車体がグッと安定します。
重心がブレにくく、カチッとした走りになってくれます。車重アップによる低重心化もあるでしょう。
またパワーをかけた際には、フレーム剛性を感じます。おそらくフォークエンドやステイエンドの剛性をほんの僅かに高くなるよう仕上げられてるのでしょう。バッグをつけることで全体の剛性バランスが取れているように感じます。
その②“グラベルロードバイク”らしい走り
未舗装路の走りがかなり快適です。
これはJARI1.3というバイクのコンセプトの結果だと思います。長距離の未舗装路をどれだけ快適に走るのか?に重きを置かれているようです。
舗装されているか否かで巡航性能が変わると思われる理由を解説していきましょう。すこしマニアックなので、読み飛ばしてもらってOKです。
JARI1.3の長所はこの3つです。
直進安定性
・ホイールベース1,018mmと長い
・ヘッド角70.5°と寝ている
・チェーンステイ430mmと長い
ハンドリング性
・リーチ36mmと短い
・フォークオフセット48mmとやや長い
快適性
・前三角が大きいので、振動吸収性がいい
・BBドロップ72mmとやや浅い
*寸法は52サイズの場合
この3つの長所があるからこそ、未舗装路を気持ちよく走れます。不安定な足場、路面の激しいギャップでも、難なく走れてしまいます。得意/不得意はないけど、高得点をまんべんなくとる優等生のタイプのようです。またリアの三角形が小さく剛性を上げているため、ダンシングでの振りが軽いです。シビアなバイクコントロールを必要としないことも、長時間走行には大きなメリットになります。
逆に短所はこの1点です。
加速がイマイチ
この短所はどうしたって出てきます。長所で挙げた直進安定性の二律背反の関係にあたるからです。ただ加速性能については個人的な感覚に依るところが大きいです。普段乗っているカーボンロードバイクや、他のグラベルロードバイクに乗った経験からすると、JARI1.3はやや加速性能がもう少し欲しいと感じてしまいます。
踏み込んだパワーがロスしているようなフィーリングがあります。「加速感をあまり感じない」と思う場面がありますが、グラベルロードバイクに求める性能ではないかもしれません。もちろんフレーム性能だけではなく、ホイールやタイヤの性能も絡んでいるので、この短所は一概にフレームに起因しないものかもしれません。
JARI1.3の売りである非対称のチェーンステイ。
剛性バランスを取るために、このような設計になっているようです。
この設計があることで、踏み込んだパワーをより無駄なく推進力に変換してくれていると思います。こういうFUJI独特のギミックがあるのも面白いですね。
その③意外!雪道との相性がとてもいい
雪道でも発揮する走破性を持っています。タイヤはスパイクタイヤに交換しています。
新雪、圧雪、凸凹な氷道、アイスバーンが複合的に絡んだ雪道。完全に凍った道はコンクリートのように固く、凸凹になっています。
そういった走りにくい道でも、直進安定性/コントロール性/快適性に特化している設計が活きました。
JARI1.3の長いホイールベースと低いヘッド角で安定走行を実現させてくれます。バイクは暴れるのですが、制御できる暴れ方に収まってくれます。パッキングすると車重も増し、さらに走りやすくなります。
またアイスバーンでスリップしたときも、バイクがリカバリーしてくれます。後輪を滑らせてしまい、ドリフトがかかったような体勢になっても、きちんと車体が立った状態で保持してくれてます。そのままブレーキをかけて難なく止まることができました。
ライダーのテクニック不足を補ってくれるいいバイクです。
きっと偶然の産物でしょうが、JARI1.3と雪道の相性がとてもいいように思います。雪道を快適に安心して走れるバイクゆえに、林道も気持ちよく走ってくれるバイクなんだと確信しています。
以上が乗ってみた感想です。ご参考になれば。
他のJARIシリーズは何があるの?
JARI 2021モデルはグレード順に1.1>1.3>1.5>1.7と4種類があります。すべて完成車で販売されています。
1.1 | 1.3 | 1.5 | 1.7 | |
フレーム素材 | カーボン | アルミ | アルミ | アルミ |
メインコンポ | SHIMANO Ultegra | SRAM APEX | SHIMANO Tiagra | SHIMANO Sora |
ブレーキ | 油圧ディスク | 油圧ディスク | 油圧ディスク | 機械式ディスク |
変速 | 2×11速 | 1×11速 | 2×10速 | 2×9速 |
タイヤ | 700×43C | 700×40C | 700×40C | 700×38C |
参考重量 | 9.2kg | 10.3kg | 10.4kg | 11.9kg |
参考価格 | 429,000円(税込) | 242,000円 (税込) | 187,000円(税込) | 129,800円 (税込) |
「JARIの最高スペックが欲しい!」「カーボングラベルロードバイクに乗ってみたい」という方にはJARI1.1がいいでしょう。
「林道でロングライドをしたい!」「連泊ツーリングでたくさん走りたい!」という方にはJARI1.3がおすすめです。トータルで長い距離を走るなら、高い性能を持つJARI1.3で安心してライドを楽しめます。またコンポはSRAMなので、SHIMANOコンポが使いたい方は1.3以外が良いですね。
価格を抑えつつも、高いスペックのグラベルロードバイクに乗りたい方は、JARI1.5がベストチョイスです。自分好みのパーツに入れ替えたり、セッティングを変えてみるというグレードアップを楽しめます。
価格重視の方には、JARI1.7がいいでしょう。JARI1.5と同等のフレームで、十分にグラベル区間を走れるバイクです。
未舗装路を長い距離走ってみたい方に、ぴったりのJARIシリーズ。自分好みのカスタマイズができ、大きな荷物も快適に運べるので、自転車旅での汎用性はすごく高いと思います。FUJIグラベルロードバイクのJARIで自転車旅を楽しみましょう!